ダイハツデザイン02 【1965,1966,1967,1968,1969,1970】

イタリアンテイストのオープンモデルと新世代軽の登場



イタリアンムード漂う4シーターオープン

 実用性に富む商用車生産でクルマ造りの技術を蓄積したダイハツ工業は、1960年代に入ると小型乗用車の開発を本格化させる。ただし、乗用車メーカーとしては後発組。インパクトのある小型乗用車を生み出すために、首脳陣はイタリアのビニアーレ社と1961年12月にデザイン導入の契約を交わした。ビニアーレ・デザインのダイハツ車は、まず1963年5月に小型商用車の「コンパーノ・バン」、6月には乗用車の「コンパーノ・ワゴン」として結実する。そして1964年2月、本命となるセダンモデルの「コンパーノ・ベルリーナ800」をリリースした。

 均整のとれたイタリアンスタイルを基調とし、緩やかな弧を描くボディラインや広いグラスエリア、精悍なフロントマスク、機能美を追求したリアビューなどで構成したコンパーノ・シリーズ。その存在感をさらに高めようと、開発陣は1台のスポーツモデルを企画した。1965年3月に発表したオープンカーの「コンパーノ・スパイダー」だ。“ファーストカーとして乗るスポーツカー”をキャッチフレーズに据えたスパイダーは、ベルリーナの屋根を取り払ったフルオープンボディを基本に、サイドシルの板厚アップやクロスメンバーの追加といった補強を実施。また、十分な密閉性を確保した手動開閉式の幌を装備する。完成したスタイリングは、伸びやかでスポーティなイメージから“シューティングライン”という愛称がつき、一部のマニアから絶大な支持を集めた。

“プリズムカット”デザインを取り入れた軽乗用車

 小型乗用車のラインアップを拡大させる一方、ダイハツの開発陣はエントリーモデルとなる軽乗用車の製作にも邁進する。車両レイアウトはメカニズムの信頼性やドライビング時の操作性などを考慮して、縦置きエンジン(ZM型356cc直列2気筒水冷式2サイクル)のFR方式を採用。ボディは独立したトランクルームをもつ3BOXを基本に、宝石のカットをイメージした“プリズムカット”と称するシャープでボクシーな造形で仕立てた。細部のアレンジにも工夫を凝らし、角型のヘッドライトにメッキタイプのグリル、伸びやかなサイドのプレスライン、シンプルかつ上品なリアビューなどで個性を主張した。

 ダイハツ初の軽四輪乗用車は、1966年10月に市場デビューを果たす。車名は英語で仲間を意味する「フェロー」。イタリア語で仲間を示す「コンパーノ」と同義語のネーミングを冠した。スペース効率を重視した他車のような2BOXではなく、小型乗用車のコンパクト化にチャレンジした3BOXを纏うフェローは、その上質なスタイルや四輪独立懸架の足回りがもたらす快適な乗り心地などで好評を博す。メーカー側も「<軽>はものたりないとおっしゃる方に」といった刺激的なキャッチコピーを広告に掲げた。

 1968年5月にはスポーツ仕様の「フェローSS」を追加。ツインキャブエンジン(ZM2型)が生み出す鮮烈な加速やサイドストライプ等の専用アイテムによるスポーティな演出などで注目を集めた。一方ダイハツは1967年11月にトヨタと業務提携を締結。その具体策として小型乗用車を共同開発した。1969年4月にはベルリーナに替わる「コンソルテ」が登場。ボディはトヨタ・パブリカと基本的に共通だが、フロントグリルやリアエンドなどにダイハツ独自のアレンジを施した。

米国のサンドバギー・デザインを軽ベースで実現

 ダイハツのデザインは、ユニークな方向にも発展する。フェローのピックアップをベースにした特別仕様車の企画を推し進めたのだ。参考にしたのは、当時のアメリカ西海岸で流行していた“サンドバギー”。メイヤーズマンクス等のビルダーがVWビートルのシャシーを使ってオープンタイプのバギーを製作し、それがサーファーなどの若者層のあいだで高い人気を博していた。これに注目したダイハツの開発陣が、自社の軽自動車をベースにした日本版のバギーを作ったのである。

 フェロー・ピックアップのシャシーと駆動メカニズムを流用し、バスタブ型のFRP製オープンボディを被せたダイハツ製バギーは、1968年開催の東京モーターショーにおいて初披露。“スピード”“ビーチ”“カントリー”の3仕様が用意され、このうち最も反響が大きかった“ビーチ”が、1970年4月に「フェロー・バギー」の車名でリリースされた。

 2シーターのオープンスタイルでドアも未装備という前例のないクルマに対し、当初陸運局は型式認定を渋った。これに対してダイハツは、乗用車に比べて改造範囲の広い軽商用車(乗車定員2名+最大積載量150kg)で、しかも少量の100台限定で販売することを提案し、市販にこぎつける。市場に放たれたフェロー・バギーは、色分けしたグラマラスなボディ周りやガードバーおよびロールバーなどで形作るユーモラスなルックス、可倒式のフロントウィンドウにビニール製の幌、インパネのセンター部に移設したメーター類など、個性あふれるアレンジで脚光を浴びた。また、その斬新な車両キャラクターは映画にも活用され、『女番長 野良猫ロック』や『やくざ刑事』のアクションシーンで鮮烈な走りを演じたのである。