デルタ・ワイドワゴン 【1982〜1996】

第2世代に移行したトヨタ・タウンエースのBROS車

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ワンボックス車需要の高まりと上級志向に対応

 ダイハツ工業は1967年11月にトヨタ自動車工業およびトヨタ自動車販売と業務提携を結んだ。それ以後2代目トヨタ・パブリカのシャシーを使ったコンソルテの開発やパブリカ/ライトエースの受託生産などを行ってきた。そして、1976年10月にはトヨタ・タウンエースのBROS車となるダイハツ・デルタを発売。市場で盛り上がるキャブオーバー型ワンボック車の需要に応えた。

 1970年代終盤から1980年代初頭に入ると、それまでビジネスユースが主流だったワンボックス車は、次第に乗用車としてのキャラクターも求められるようになる。多人数が楽しく快適に過ごせる室内空間。商用車とは一線を画す外装の演出、優れた走行性能の実現などが望まれたのだ。この状況に対して日本の自動車メーカーは、従来のバン製作の技術に乗用車造りのノウハウを加えながら、新しいキャブオーバー型のレクリエーショナルビークル(RV)を企画していく。なかでも積極姿勢を示したのが、タウンエースという人気の小型ワンボックス車をリリースしていたトヨタ自工だった。同社の開発陣は鋭意、アウトドアレジャーの足にふさわしい新型ワンボックス車のプランを検討する。同時に、BROS車として供給を受けるダイハツ側では次世代デルタの上級化やラインアップ拡充を模索した。

上質で快適な2代目ワンボックスワゴンの登場

 1980年代に向けたトヨタ渾身の新型ワンボックス車は、第2世代のタウンエース・シリーズとなって1982年11月に市場デビューを果たす。同時に、ダイハツでも2代目デルタ・ワイドワゴン/バンを発売した。

 第2世代のデルタ・ワイドワゴンは、乗用ワンボックス車としてのキャラクターを徹底追求して生まれた1台だった。スタイリングに関しては、異型2灯式ヘッドランプや大型PP(ポリプロビレン)バンパーなどを採用して華やかさを創出。ルーフ形状ではハイルーフ/ハイルーフ・サンルーフ付/ミドルルーフ/ミドルルーフ・サンルーフ付を用意する。デルタではエンブレムやガーニッシュ類などでタウンエースとの差異化を図った。室内スペースについては、フロントオーバーハングの延長やフロントウィンドウ傾斜角の見直し、シート形状の改良などによって居住性をアップ。さらに、豊富なバリエーションを持たせた3列式シートやフルファブリックのトリム、エアコン吹出口を一体化した成形天井、フロアパネル埋込式のビルトインリアヒーター、エンジン回転数感応型パワーステアリング、近代的なエレクトログラフィックメーターなどを採用して利便性とエンターテインメント性の引き上げを図った。

 搭載エンジンはワンボックス用にチューニングしたレーザー2Y-U型1812cc直4OHV(95ps/15.5kg・m)を搭載。組み合わせるミッションはオールシンクロ5速MTのほかに、同クラス初のオーバードライブ付4速ATを設定した。足回りも要注目で、フロントサスには専用設定のダブルウィッシュボーン式トーションバースプリングを、リアサスにはクラス初のラテラルロッド付4リンク式コイルスプリングをセットする。同時に、やはりクラス初の装備として前後スタビライザーバーも組み込んだ。

改良を加えながら約14年に渡って販売

 上級感が増した外観に快適で利便性の高いインテリア、そして優れた走行性能を有する2代目デルタ・シリーズは、豊富な車種バリエーションも好評を博し、順調に販売台数を伸ばしていく。この勢いを維持しようと、ダイハツおよびトヨタは積極的にマイナーチェンジや車種追加を実施した。

 1983年4月には2C型1974cc直4OHCディーゼルエンジン(72ps/12.8kg・m)を積むディーゼル2000モデルを、翌5月には燃料級装置にEFIを組み合わせる3Y-EU型1998cc直4OHVエンジン(115ps/18.3kg・m)を積んだ上級モデルを発売。1985年8月には大がかりなマイナーチェンジを行い、大きな開口部を持ったスカイライトルーフの設定をはじめとする内外装の刷新やステアリング形式のラック&ピニオン化、ディーゼルターボ(2C-T型1974cc直4OHCディーゼルターボ、88ps/17.0kg・m)の追加などを実施する。1988年8月には再びマイナーチェンジを敢行し、内外装のさらなる上級化と利便性のアップを図った。

 1992年1月になると、タウンエースはライトエースを統合しつつ、内外装のマイナーチェンジを行う。この時点でトヨタ側BROS車のマスターエース・サーフはカタログから外れるが、デルタ・ワイドワゴンは販売が継続される。そして1996年11月に次期型のデルタ・ワゴン(ワイドのネーミングが外れる)が登場するまで、さらなる改良と車種強化を行いながら、ダイハツの貴重な小型RVモデルとしてリリースされ続けたのである。