クラウン 【1991,1992,1993,1994,1995】

3ナンバーに移行した伝統と革新の9代目

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9代目は伝統のフレーム構造を持つファイナルモデル

 1991年10月に登場した9代目クラウンは、伝統と革新を併せ持ったモデルだった。この9代目から4ドアハードトップ、4ドアセダン、ワゴン(ライトバン)の3種のボディタイプで構成していたバリエーションを、4ドアハードトップをメインに一新。「ロイヤル」というシリーズ名を追加する。さらに4ドアハードトップの上級モデルは「マジェスタ」という新シリーズに分化した。一般的に9代目クラウンは、4ドアハードトップのロイヤル・シリーズを指す。

 9代目の伝統を尊重する姿勢は、ボディ構造に現れていた。クラウンは1955年の初代モデルから一貫してボディとシャシーを分離したペリメーターフレーム構造を採用していた。ペリメーターフレーム構造は、一般的なモノコック構造ボディと比較して、路面からの騒音侵入を押さえやすいのがメリットである。しかし9代目クラウンがデビューした1991年当時、技術の進歩によって車両重量が重くなるペリメーターフレーム構造をあえて採用しなくても高い静粛性を実現することができた。それが証拠に上級版のマジェスタ・シリーズはモノコック構造ボディを採用していた。

 それでもなおロイヤル・シリーズがペリメーターフレーム構造を採用したのは、保守的なクラウン・ユーザーに安心感を与えるためだった。クラウンはトヨタの実質的なフラッグシップモデルである。それだけに歴代モデルを乗り継いできたユーザーが多い。クラウン・ユーザーはトヨタにとって上得意のお客様だった。トヨタは伝統のペリメーターフレーム構造を一挙に捨て去ることは、伝統の否定に繋がり、お客様重視の姿勢にそぐわないと判断したようだ。そのため、クラウンのメインモデルであるロイヤル・シリーズにはペリメーターフレーム構造を採用。その派生版となる上級のマジェスタだけをモノコック構造としたのである。ちなみにロイヤル・シリーズも10代目にはモノコック構造へと移行する。

3ナンバーボディで新しさを表現

 革新は、そのボディサイズが示していた。それまでクラウンは一部を除き一貫して5ナンバーサイズを守ってきた。しかし9代目はサイズを拡大。3ナンバーサイズに成長する。全長4800×全幅1750×全高1415mmのサイズを持ち、豊かな曲面で構成したスタイリングもあって9代目は実に堂々としていた。

 エンジンラインアップも上級移行し、排気量2997ccの2JZ―GE型・直列6気筒DOHC24V(230ps)を筆頭に、2491ccの1JZ-GE型・直列6気筒DOHC24V(180ps)、そして2446ccの2L-THE型・直列4気筒OHCディーゼルターボ(100ps)の3種に絞り込んでいた。9代目は、長らくクラウンの主力だった2ℓエンジンをラインアップから落としたのである。トランスミッションは電子制御4速ATをメインに、一部グレードには電子制御5速ATを設定。足回りは前がダブルウィッシュボーン、リアがセミトレーリングアーム式の4輪独立タイプを組み込む。

当初の不調をマイナーチェンジで克服

 9代目クラウンは、圧倒的な静粛性と滑らかな走りが味わえ、3ナンバーボディの採用で欧州高級車にも負けない風格を感じさせた。しかしユーザーの評判はいまひとつだった。不満の中心は、モダンな内外装に集中した。

 1992年10月にはフロントグリルのメッキを一段と明るい色調に替え、ドアハンドルをメッキ仕上げに変更。全車にインテリア木目パネルを採用した。さらに翌1993年8月のマイナーチェンジでは、Cピラーに王冠のクラウンエンブレムが復活。リアのナンバープレート位置をバンパー下側から、クラウン伝統のリアランプ中央部に変更する。これらの変更で9代目クラウンの販売は持ち直す。1993年12月に排気量1988ccの1G-FE型・直列6気筒DOHC24V(105ps)ユニットが設定されると、販売台数は一段と伸びた。
 伝統と革新の9代目は、モデルライフ中、伝統の要素を強めることでユーザーの支持を高めていったのである。