ユーノス500 【1992,1993,1994,1995,1996,1997,1998,1999】

「時を超えて輝く価値」を追求したスタイリッシュサルーン

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ユーノス店に向けたセダンモデルの開発

 マツダが1989年4月に設立した新販売チャンネルの「ユーノス」系列ディーラーは新鮮な存在だった。上質かつ斬新なキャラクターのクルマを販売することを方針に定めたからだ。1990年代初頭の販売ラインアップは、ライトウエイトスポーツのロードスターを筆頭に輸入車のシトロエン、リトラクタブルライト仕様の100、4ドアハードトップの300、スポーティクーペのプレッソなど、多様な個性派モデルを揃える。だが、量販が期待できる車種、すなわち“4ドアセダン”のユーノス・ブランド車は、用意されていなかった。

 真打のセダンモデルはどのような形で登場するのか−−市場の期待を裏切らないよう、開発陣は懸命にユーノス版セダンの企画を推し進めた。

“10年色あせない価値”を謳って登場

 ユーノスの4ドアセダンでは、「いつまでも色あせない価値」の創造を開発テーマに掲げる。基本骨格については、マツダのミドルクラス車であるクロノス(1991年10月デビュー)のユニットを流用。一方、スタイリングに関しては3次曲面を多用した流麗なプロポーションを構築したうえで、ボディの段差や隙間を極少かつ均一に整えた精緻な造り込みを実施する。いつまでも美しい艶めきを保ち続ける高機能ハイレフコート塗装を全ボディカラーで採用した点も話題だった。

 外観と同様、インテリアについても高品質かつ高機能な空間を追求していた。インパネはラウンディッシュで広がり感のある造形にアレンジ。空調パネルをセンター上部に設置するなど機能面の配慮も入念だった。装備は充実しており、フルオートエアコンや新イルミネーテッドエントリーシステム、電波式キーレスエントリー、スイングピロー機構付きシート、後席格納式センターアームレストを設定。最上級グレードには本革地のシート/ステアリング/シフトノブ/パーキングブレーキレバーや電動ガラスサンルーフを採用した。

 高品質の追求は走りにも貫かれる。搭載エンジンは可変共鳴過給システムのVRISを組み込んだ高性能V6DOHCの2機種で、KF-ZE型1995cc・V6DOHC24V(160ps)とK8-ZE型1844cc・V6DOHC24V(140ps)を設定。組み合わせるミッションにはホールドモード機構付き電子制御4速ATと5速MTを用意する。前後ストラット式の足回りは専用チューニングを実施。とくに高速ツーリングの快適性を高めるようにアレンジする。

あのジウジアーロ氏が絶賛したスタイリング。だが販売は低迷

 ユーノス・ブランド期待の4ドアセダンは、「ユーノス500」の車名で1992年1月に市場デビューを果たす。キャッチフレーズは“10年色あせぬ価値”。個性的なスタイリングや高品質なハイレフコート塗装のほか、ボディサイズを全長4545×全幅1695×全高1350mmの5ナンバー規格に収めた(基本骨格を供用するクロノスやアンフィニMS-6は全長4695×全幅1770mmの3ナンバーサイズ)ことも注目を集めた。

 カーデザイン界の巨匠であるG・ジウジアーロ氏に「世界で最も美しいサルーン」と評されたといわれるユーノス500。しかし、販売成績は思いのほか振るわなかった。当時ユーザーの興味の中心がセダンではなくレクリエーショナル・ビークル(RV)に移っていた、上質で個性的なルックスに仕上がっていたもののデザイン自体の主張が強すぎた、V6エンジンの割には回転フィールがスムーズさに欠けた、ユーノス+数字の車名ではユーザーがクルマをイメージしにくかった−−要因は色々と挙げられた。

ベーシック仕様とスポーツ仕様の追加

 販売台数のアップを目指して、ユーノス500は様々な改良とラインアップの変更を実施していく。1993年1月にはオフブラックのレザー内装やリアスポイラーを備えた20F-Xを、1993年5月には装備アイテムを充実させた20Fスペシャルを追加設定。1994年3月にはマイナーチェンジを実施し、内外装の変更のほかにFP-DE型1839cc直4DOHC16Vエンジン(115ps)搭載のエントリーグレードや専用ハードチューン・サスペンションおよびアドバンA407タイヤ+15インチアルミ等を組み込んだスポーティ仕様の20GT-iの設定を行った。

 高品質サルーンとしての商品価値の引き上げを多様なアプローチで敢行していったユーノス500。しかし、販売は低空飛行が続く。しかもマツダ本体の経営悪化が深刻化してきたことから、結果的にユーノス500の国内販売は1995年いっぱいで中止されてしまう。一方、ユーノス500は欧州では好調だった。欧州市場向けである「クセドス6」は、スポーティでスタイリッシュなサルーンとして独自のポジションを構築。1999年2月までリリースされ続けたのである。ユーノス500は、目の肥えたユーザーほど価値を実感する本物志向のクルマだった。