ファミリア 【1998,1999,2000,2001,2002,2003】
ショートワゴンを新設定したラスト伝統モデル
米国フォードの出資比率を引き上げ、同社の傘下に入ることでバブル景気崩壊からの経営再建を図っていた1990年代後半のマツダは、車種ラインアップの見直しも実施していった。中心車種のファミリアに関しては、4ドアセダンを新型に切り替え、1996年10月に大がかりなマイナーチェンジを施した3ドアハッチバックと日産からのOEM供給車のワゴン/バンは既存型を継続販売する方針を打ち出す。また、新ジャンルカーとしてショートボディのワゴンを新設する旨を決定した。
新型ファミリアは、“際立つ個性”“扱いやすさ、運転のしやすさと楽しさ”、そして“パッケージングイノベーション”の3つに焦点を絞って企画を推し進める。基本骨格については、ロール軸とロールスピードの見直しやフロアパン剛性の向上、新パワートレインの搭載に対応したBJプラットフォームに、トリプルH構造をベースとする新安全ボディのMAGMA(Mazda Geometric Motion Absorption)を採用。開発期間やコストを抑えるために、主要パーツにはカペラのユニットを多く流用した。
9代目となるファミリアは、1998年6月に市場デビューを果たす。ボディタイプは4ドアセダンとコンパクトワゴンの「S-ワゴン」という2タイプを設定。S-ワゴンのSはスポーティ、スタイリッシュ、ショートという意味を込めていた。
搭載エンジンは、セダンにZL型1498cc直列4気筒DOHC16V+S-VT(130ps)とZL型1498cc直列4気筒DOHC16V(110ps)、B3型1323cc直列4気筒OHC16V(85ps)という3種のガソリンユニットとRF型1998cc直列4気筒OHC(70ps)のディーゼルユニットを、S-ワゴンにはZL型1498cc直列4気筒DOHC16V+S-VT(130ps)とZL型1498cc直列4気筒DOHC16V(110ps)、そしてFP型1839cc直列4気筒DOHC16V(135ps)のガソリンユニットを採用する。駆動機構はFFと4WDを設定。トランスミッションは5速MTと電子制御4速AT(EC-AT)をラインアップした。懸架機構には徹底的な改良を施した前マクファーソンストラット/後ストラットを採用し、同時に新開発ダンパーを組み込んで優れた乗り心地と操縦安定性を確保。制動機構には最新の4W-ABSを全車に装備した。
エクステリアは、セダンが表情豊かな曲線とシャープに切れ込む直線、張りのある膨らみと緊張感のある絞り込みのコントラストなどによって、フォーマルにもカジュアルにも似合う調和のとれたルックスを創出。S-ワゴンは多用途性を感じさせる5ドアハッチバックのボディを基本に、伸びやかなルーフやソリッドな面構成、スタイリッシュなフォルムなどで独自のスポーティ感を表現する。また、2ボディともに新デザインのメーカーマークを組み込んだ新意匠のフロントフェイスを導入した。
インテリアは、アップライトパッケージによって優れた視界と乗降性、そして広い足もとスペースを実現。また、セダンはクラストップレベルの416L(VDA方式)のトランクルームや6対4分割可倒式のリアシート、テーブルとしても使える前倒れ機構付きの助手席などを、S-ワゴンはサブトランクボックスおよび固定用フックを備えたラゲッシルームや5対5分割可倒&デタッチャブルクッション&スライド&リクライニング機構付きのリアシート、前倒れ機構付きの運転席&助手席スペースアップシートなどを採用して使い勝手の向上を成し遂げていた。
S-ワゴンを中心に受注を伸ばした9代目ファミリアは、デビュー後も着実に中身の進化と車種ラインアップの強化を実施していく。1999年8月には、パワートレインにFS-ZE型1991cc直列4気筒DOHC16Vエンジン(170ps)を採用し、外装にエアロパーツを纏ったトップモデルのS-ワゴン「スポルト20」を発売。2000年の1月にはスポーティな内外装パーツを装備した限定車のS-ワゴン「エアロード」を、5月には装備の充実化を図った限定車のS-ワゴン「ブリーザ」を市場に放つ。10月になるとマイナーチェンジを実施し、内外装デザインの一部変更やグレード構成の見直しを行った。
2001年に入ると、4月に限定車のS-ワゴン「@NAVI SPORTS」を、5月に限定車の「マツダスピード ファミリア」を、10月に限定車のS-ワゴン「フィールドブレイク」をリリース。12月にはセダンにも「スポルト20」をラインアップする。翌2002年には、9月にS-ワゴンのスペシャルシリーズを、12月に「SPORT20スペシャル」を設定した。
2003年10月になると、ファミリアの実質的な後継モデルとなる新世代世界戦略車のアクセラがデビューする。それに伴い、ファミリアの生産は終了(OEM供給車のバンは継続)。9代40年あまりに渡って親しまれた車名に幕を下ろしたのである。