レオーネ・スイングバック 【1979,1980,1981,1982,1983,1984】

機能で個性を表現したアクティブ・ハッチバック

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上級クラスに成長した2代目レオーネ

 1971年10月に登場しスバルの主力モデルに成長したレオーネは、1979年5月にモデルチェンジする。2代目は初代と比べボディサイズ&エンジン排気量を拡大。上級モデルへと進化した。初代はトヨタ・カローラや日産サニーと同クラスだったが、2代目はトヨタ・カリーナ、日産バイオレットが競合車になったのだ。

 だが、車種ラインアップの少ないスバルにとって、レオーネは競合車以上に幅広いユーザーを獲得する命題が課せられていた。そのためレオーネは4ドアセダンをはじめ、2ドアハードトップ、ライトバン(1981年7月にツーリングワゴンを追加)、さらにスイングバックと呼ぶ3ドアハッチバックの4種のボディタイプを設定。きめ細かなグレード展開によってワイドなバリエーションを構築、幅広いユーザーニーズに応えた。

 なかでもスイングバックは、上級移行した2代目レオーネのなかで、最もアバンギャルドな存在だった。
 スイングバックは、初代VWゴルフやホンダ・シビックの成功により日本でも一般的になりはじめていた2BOXスタイルによって、セダンなど他のボディタイプより大幅にコンパクトなボディサイズを実現。さらにグレード毎にキャラクターを明確化することで想定ユーザーを明確化したのだ。
 スイングバックは排気量1595ccのシングルキャブ(87ps)とツインキャブ(100ps)、1781ccシングルキャブ(100ps)、そして1298ccシングルキャブ(72ps)という4種のエンジンを搭載し、4速MTと5速MTを組み合わせていた。ラインアップは全7グレード。ボディサイズは全長×全幅×全高3860×1610×1365mm(SRX)である。

スポーティなイメージを訴求したSRX

 スイングバックは、2代目レオーネ・シリーズの中で、スポーツ性、マルチユース性、そして経済性を象徴した。
 スポーツ性は、クラス唯一の、昭和53年排出ガス規制をクリアーしたツインキャブ仕様の水平対向4気筒エンジンを搭載したSRXグレードが代表だった。エンジンスペックは排気量1598cc、最高出力100ps/6000rpm、最大トルク12.5kg・m/4400rpm。SRXのツインキャブ・ユニットはパワフルなことはもちろん、シャープな吹き上がりと独特のスポーツサウンドでユーザーを虜にした。

 トランスミッションは、クロスレシオ設定の5速MT。ブレーキは4輪ディスクにグレードアップされ、専用調律のサスペンションと相まってワインディングロードでの実力は一級品だった。6連メーター仕様のインパネも好評を呼ぶ。SRXは、当時最もスポーティな1.6リッターモデルの1台だった。

4WDは乗用車の快適性とタフな走りを両立

 マルチユース性という面は、4WDモデルが話題を集める。2代目レオーネは、その後のスバルのアイデンティティとなる乗用4WDシステムを積極展開した最初のモデルだった。スイングバックには、排気量1781cc(100ps)の1800モデルと、排気量1591cc(87ps)の1600モデルの2種を設定。走行状況に応じてレバー操作でFFから4WDハイ、4WDローが選べるデユアルレンジのセレクティブ4WDシステムにより圧倒的な走破性を誇った。1979年当時、4WDと言えばジープなど一部のクロスカントリーモデルの専売特許だったが、スイングバック4WDは、乗用車そのもののパフォーマンスと4WDならではの走破力を兼備した革命的なモデルだった。4WDモデルは最低値上高を205mmに引き上げ、専用チン&アンダーガードを標準装備していた。

 もうひとつの個性、経済性は、排気量1298cc(72ps)の新開発ユニットを搭載したベーシックモデル、LFとEグレードが担当した。1298ccの水平対向ユニットは、2代目レオーネ・シリーズの中では唯一スイングバックのみが搭載。22km/L(60km/h定地走行)の優れた燃費とリーズナブルなプライスが特徴だった。LFとLはベーシックモデルとはいえ、スイングバックの魅力である多彩なユーティリティや、4輪独立サスペンションなどの機能をそのまま継承。実用域のトルクを重視したエンジンのトルク特性もあって、走りも軽快だった。

 レオーネ・スイングバックは、1984年7月にモデルチェンジした3代目が一段と上級モデルに進化したため、2代目モデルのみのラインアップとなった。決して販売成績に優れたモデルとはいえなかったが、他のスバル各車と同様に先進的で良心的なクルマ作りを象徴するモデルだった。名車といって差し支えない1台である。

映画でも熱演したスイングバックの高性能

 レオーネ・スイングバックは、1981年に公開された米20世紀フォックスと香港ゴールデン・ハーベストの合作映画「キャノンボール」に出演し、マニアの話題を呼んだ。

 スイングバックはジャッキー・チェンとMr.Booことマイケル・ホイが演じる日本人コンビの愛車として登場。赤外線ゴーグルやロケットエンジン、カーナビゲーションを搭載したハイテク4WDマシンという設定だった。映画に出演したのは左ハンドルの北米輸出仕様で、ランボルギーニ・カウンタックや、フェラーリ308GTS、アストンマーティンDB5など、そうそうたるライバルに伍して優れた走りを見せつける。なぜ、数多い日本車の中からレオーネ・スイングバックがキャスティングされたのかは明確ではないが、日本=先進技術という観点で、乗用4WDのパイオニアであるスイングバックが選ばれたようだ。喜劇仕立ての映画のため、多分に誇張はされているが映画ではスイングバックの類い希な走行性能が描かれていた。