ユーノス・ロードスター 【1989,1990,1991,1992,1993,1994,1995,1996,1997】

クルマの楽しさを再発見させた軽量オープン

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ロードスターが巻き起こした衝撃

 1989年5月、アメリカでマツダMX-5ミアータが発売された。3か月後に日本ではユーノス・ロードスターの名で発売されるモデルである。オープン2シーター、縦置きエンジンによるフロント・エンジン、リア・ドライブのきわめてコンベンショナルなFRスポーツだった。
 MX‐5ミアータがデビューすると、アメリカでは1950年~60年代にアメリカに大挙して流れ込んだ英国製の軽量小型スポーツカーの再来として大きな話題を集める。MG、トライアンフ、ロータス、サンビーム・アルパイン、オースチンヒーレー・スプライトなどと言った、1000ccから2000cc程度のエンジンを軽量なボディに組み合わせたかつての2人乗りのオープンスポーツの再来である。MX-5ミアータは、1600㏄の4気筒エンジンを搭載した2シーターのオープンスポーツであったから、多くの人々が、その姿にかつてのブリティッシュ・ライトウエイトスポーツをイメージしたとしても不思議はない。

オフライン・プロジェクトとして開発開始

 ユーノス・ロードスター(MX-5ミアータ)は、正規の開発プロジェクトから誕生したモデルではない。マツダ社内の有志が集まって自然発生的にはじまったオープン2シーター車のオフライン・プロジェクトだった。当初は量産化の目処はまったく立っていなかったという。開発陣は当初“既存のサスペンションを使ったショートホイールベースのオープン2シーター”を検討。しかし実際に試作車をまとめたところ議論が沸騰。マツダ技術者のスポーツ心に火をつけた。マツダは初代ロータリー・コスモ以来、長いスポーツカーの伝統を持ち、RX-7を生産しているメーカーである。それだけに技術者は生粋のスポーツカー好きばかり。“お手軽オープンカー”はマツダのスポーツ・フィロソフィーとは違うというわけだ。

 活発な議論を経て “駆動方式FR、前後の重量配分が50対50のライトウェイトスポーツ”という目標が明確になり、技術者は休日返上で開発に没頭した。その熱意はやがて経営陣をも動かし、晴れて量産化に向けたオンライン・プロジェクトに昇格したのだ。

開発コンセプトは“人馬一体” 一体感を徹底追及!

 古今東西のさまざまなライトウェイトスポーツを乗り比べ、開発陣が見出したポイントは“絶対的な速さではなく、ドライバーとクルマとの一体感が感じられ、運転して楽しいこと”。やがてその魅力は“人馬一体”というキーワードに集約されて開発陣に共有される。当初は“人車一体”と言われていたようだが、それが人馬に変わっていったのは、馬のように血の通った生き物を育てる思いでクルマを作り上げようという開発陣の思いを表現したからという。

 開発陣は楽しいと感じる感性領域の要件を、丹念に技術的な数値に置き換えひとつひとつ実現していった。その結果、運転テクニックに長けたドライバーが乗っても、初心者がステアリングを握っても楽しいロードスターが誕生。世界中に多くのファンを生み出すことになったのだ。ユーノス・ロードスター(MX-5ミアータ)ほど、開発陣の思いがストレートに結実したクルマはない

人気沸騰の古くて新しいクルマ!?

 言わば、「オープンスポーツ冬の時代」に突如現れたMX-5ミアータは、その素晴らしい操縦性能と安価な価格、ツボを抑えた魅力的なスタイリングで、たちまち人気車種になった。アメリカに遅れること3か月の1989年9月に日本でユーノス・ロードスターの名で発売されると、すぐにバックオーダーを抱えるほどの好調な売れ行きを示した。月間生産台数が8千台を超えたと言うのだから、その人気の高さも偲ばれようというものである。ユーノス・ロードスターの登場は、それまでオープン2シーターという車種に懐疑的であった世界中のメーカーにとって大きな刺激となり、以後続々と同工異曲のモデルの登場を促す結果となった。ユーノス・ロードスターは、世界の自動車マーケットに大きな風穴を開けることに成功したわけだ。ちなみに、ユーノス(Eunos)の名は、当時マツダが展開していた5つの販売チャンネルの一つであった。

正統派FRレイアウト採用

 ユーノス・ロードスターのシャシー構成は独特のもので、モノコックボディの中心を通る強固なトラス構造のバックボーン・フレームを主体として、前方にエンジンとトランスミッションを配置、後方にデファレンシャルギアを置いている。プロペラシャフトはバックボーン・フレームの横を通る形でリアのデファレンシャルに繋がる。

 マツダの言うフロント・ミッドシップに縦置きされるエンジンは、水冷直列4気筒DOHC16バルブで排気量は1597㏄。圧縮比9.4と電子制御燃料噴射装置を装備し、120ps/6500rpmの最高出力と14.0kg・m/5500rpmの最大トルクを得ている。トランスミッションは純粋なスポーツカーであることから、フロアシフトの5速マニュアルのみの設定となっていた(遅れて4速ATも登場)。ブレーキは4輪ディスクでサーボ機構を持つ。

 サスペンションはこの種のモデルとしては常識的なものだが量産車としては贅沢な、前後ともダブルウィッシュボーン/コイルスプリングの組み合わせである。タイヤは185/60R14となる。車重は940㎏前後と軽かったから、性能的には小型軽量な現代のスポーツカーとして十分なレベルに在った。モデルバリェーションは事実上存在せず、シートや内装などが若干異なる仕様が用意された。また、メーカーオプションとして、樹脂製ハードトップやトランクリッド後端に付けるスポイラーなどがあった。価格は約170万円からときわめてお買い得なものだった。