日産デザイン8 【1981,1982,1983】

スポーツモデルの刷新と新ジャンル車に注力した1980年代前半

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スタイル全体で躍動感を演出した6代目スカイライン

 1980年代に向けてFFのサニーやビッグスペシャルティのレパードといった新世代モデルを相次いで市場に放った日産自動車。その積極的な開発姿勢は、1980年代前半にかけてさらに勢いを増していった。

 1981年8月には、6代目となるR30型系スカイラインがデビューする。新型で目指したのは、“走りのスカイライン”の復活。開発主幹は、初代モデルから設計に携わってきた櫻井眞一郎氏が務めた。6代目のスタイリングは先代に比べて非常にシンプルに仕立てられていた。ウエッジを強調したシェイプは精悍な印象で、動的なイメージを主張する。伝統のサーフィンラインは省かれたが、スタイル全体で躍動感を演出していた。ボディタイプは2ドアハードトップと4ドアセダンを用意。遅れて5ドアハッチバックとエステートを追加した。

 6代目のデビューから2カ月後の1981年10月、GT-R以来長く途切れていたピュアスポーツモデルが登場する。レーシングスポーツの頭文字をグレード名に関した“RS”だ。RSの最大の注目点は、何といってもエンジンにあった。FJ20E型と名づけられたエンジンのヘッドはDOHC16Vで形成。燃料供給装置には市販車としては世界初のシーケンシャルインジェクションを組み込んだ。開発の勢いは、ここで終わらなかった。1983年2月にはFJ20E型にギャレット製T03ターボを装着したFJ20ET型エンジンがデビュー。2000ターボRSに搭載し、“史上最強のスカイライン”を標榜する。同年8月には薄型ヘッドライトとグリルレス、スモークテールランプを採用したマイナーチェンジ版が登場し、“鉄仮面”の愛称でクルマ好きを惹きつけた。

“世界初のニュー・コンセプトカー”を謳った新ジャンル車

 1982年4月になると、2代目パルサーが市場デビューを果たす。新型を企画するに当たり、開発チームは“先進のFF国際車”に仕立てることを目標に設定。そのうえで、実用性の高いハッチバックモデルと、スポーティなクーペモデルのイメージを明確に分ける方針を打ち出した。クーペモデルではクラス初のリトラクタブルヘッドライトを組み込む。

 既存車の高性能化を図る一方、日産は新しいジャンルの開拓に力を入れる。そして“世界初のニュー・コンセプトカー”というキャッチを冠したプレーリーを1982年8月に市場に放った。
 プレーリーは一見すると背の高いワゴンボディだが、その中身は新しさにあふれていた。注目を浴びたのがセンターピラーレスのドアだ。フロントの前ヒンジドアとリアのスライドドアを全開すると、広大な開口部が現れる。しかも左右のドアともにフルオープン式を採用していた。シート配列はグレードによって選べた。JWシリーズは3列式シートの7/8人乗り。1/2列目のフルフラット機構や2列目の回転対座機構など、現代のミニバンに通じる先進装備を盛り込んでいた。RVとSSシリーズは5人乗車の2列式シートで、後席の居住性とラゲッジスペースの使い勝手に重きを置く。さらに、ビジネスモデルのNVシリーズもラインアップした。

 日産はベーシックカーも刷新する。1981年10月開催の東京モーターショーで「NX-018」と呼ぶ新リッターカーを参考出品。そして翌1982年10月になって市販モデルのマーチをリリースした。マーチのスタイリングは直線と曲線を巧みに融合させたシンプルなデザインで構成し、機能的でカジュアルなイメージに仕立てたインテリア造形と合わせて、飽きのこない車両デザインを実現していた。

欧州製スポーツカーと肩を並べた3代目Z

 2台の新ジャンルカーが華々しくデビューした翌年の9月、日産は旗艦スポーツカーのフェアレディZを新型に切り替える。Z31の型式を付けた3代目は、欧州の高性能スポーツカーをベンチマークに据え、これを凌駕する性能を目指して開発された。

 車両デザインに関してはロングノーズ+ファストデッキの伝統的なスタイルを踏襲したうえで、エアロダイナミクスの向上を徹底追求する。世界初のパラレルライジングヘッドライトの装着、バンパーおよびエアダムスカート一体のフロントフェイシアの採用、ボディ全般のフラッシュサーフェス化などを実施し、Cd値は0.31と当時の日本車の最高数値を実現した。

 エンジンはフェアレディZとしては初めてV型レイアウトの6気筒ユニットを搭載し、さらに先進のターボチャージャー機構を組み合わせる。シャシーについては、全面的な設計変更を実施。最大の注目は世界初の機構となる3ウェイアジャスタブルショックアブソーバーの装着で、これを組み込んだ仕様を“スーパーキャパシティサスペンション”と名づけた。インテリアではメーター脇に配したクラスタースイッチや雨滴感知式オートワイパー、世界初のマイコン制御上下独立自動調整オートエアコンといった新機構が訴求点で、新世代スポーツカーにふさわしい快適性と先進イメージを打ち出す。空間自体も広がり、さらにASCD(自動速度制御装置)などの導入で安全性も向上させていた。