スペクトロン・ワゴン 【1983〜1995】

3代目ボンゴをベースとしたフォード版ワンボックス

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オートラマ店の拡販を目指して−−

 東洋工業(現マツダ)は1979年11月、米国自動車メーカーBIG3の一角であるフォードと資本提携を締結する。これを契機に、東洋工業とフォード自動車(日本)は新たなディーラー展開を計画。全国の有力マツダ系ディーラーや商社などの出資を得て、1981年4月に株式会社オートラマを設立した。

 1982年10月より商品供給を開始したオートラマは、最初にマツダ・ファミリアをベースとするフォード・レーザーとマツダ・カペラのフォード版、テルスターをリリースする。売れ筋であるコンパクトクラスとミドルクラスで足場を築いた新ディーラー網が次に狙ったカテゴリーは、当時販売台数を急速に伸ばしていた多人数乗り車のワンボックスカーだった。ベース車としてピックアップされたのは、開発の最終段階に入っていた第3世代のマツダ・ボンゴ。乗車タイプのワゴンのほか、商用車のバンモデルの設定も企画された。

“アメリカンビッグボックス”の登場

 3代目マツダ・ボンゴの発売から20日あまりが経過した1983年10月18日、ボンゴのフォード版となる乗用ワンボックスワゴンが「スペクトロン」の車名で市場デビューを果たす。グレード展開はベーシック仕様のXLと上級版のXL-Tを設定。ボディタイプに標準ルーフとハイルーフをラインアップし、XL-Tにはサンルーフ付きも用意した。キャッチコピーには、米国ブランドを強調する意味で“アメリカンビッグボックス”を謳う。また、商用モデルのバンは専用ネームの「J80」を冠してリリースされた。

 スペクトロンはメカニズム面でベース車となったボンゴを踏襲する。搭載エンジンはF8型1789cc直4OHC(97ps)とRF型1998cc直4OHCディーゼル(69ps)の2機種を設定。トランスミッションはF8型に5速MTと4速ATを、RF型に5速MTを組み合わせる。駆動機構はデビュー当初が2WDのみの設定で、1984年11月にパートタイム4WD(車高アップに合わせてミドルルーフ化)を追加した。シャシーに関しては、フロントサスにダブルウィッシュボーン/トーションバーを、リアサスに縦置半楕円リーフを採用。後輪タイヤはシングル仕様。操舵機構にはパワーアシスト付きのラック&ピニオンが組み込まれた。

 エクステリアに関しては、フォードのエンブレムを中央に配したフロントマスクやリアコンビネーションランプなどを専用デザインで仕立ててボンゴとの差異化を図る。基本フォルムはトラディショナルなボクシースタイルで構成。端正なデザインのフロント部や広いガラスエリア、鮮やかなサイドデカールなどで個性を主張した。ボディサイズは全長4100×全幅1640×全高1835〜1990mmで、ホイールベースが2220mm。カタログなどではロングホイールベース、ワイドトレッドによる走行安定性の高さを謳っていた。インテリアについては、2/3/3名乗車の3列式シートがすべてフルフラットになる点が特徴。また、セカンドシートには回転対座シートも設定する。ほかにも、電子メーターやセーフティモニター、パワーウィンドウ、サイドマルチボード、エアコン、高音質オーディオといった上級アイテムを豊富に取りそろえていた。

14年の長きに渡って販売を継続

 オートラマが扱う唯一の多人数乗りワゴンであるスペクトロンは、デビュー後もベース車のボンゴの改良に合わせながら進化と車種ラインアップの増強を図っていく。1984年11月には前述のパートタイム4WDモデルを追加。1986年11月なるとマイナーチェンジを実施し、フロントノーズを突き出したフェイスリフト(全長は230mm延長)やスタイリッシュルーフの採用(ハイルーフは廃止)、ガソリンエンジンの2リッター化(FE型1998cc直4OHC/82ps)、4WD車の2.2Lディーゼルエンジン(R2型2184cc直4OHCディーゼル/61ps)への換装とLSDの追加、装備の刷新などを行った。1989年1月にはR2型ディーゼルからターボ付きのRF型ディーゼル(76ps)に変更する。

 スペクトロンの改良は、1990年代に入ってからも精力的に続けられる。1990年2月には内外装の意匠変更のほか、リアアンダーミラーやルーフスポイラーの装着などを実施。1990年6月と1991年2月には特別仕様車のスポーツを、1993年10月にはRVパーツを満載した上級モデルのモンタニューを発売した。また、1993年8月にはRF型ディーゼルターボの排出ガス浄化性能を高めるなどの改良を実施。1994年9月にはディーゼルターボにインタークーラーを組み込むなどの変更を行った。ちなみに、1994年には販売ディーラーの名称がオートラマ店からフォード店に一新された。

 1995年6月にはボンゴ・ワゴンの実質的な後継車となるセミボンネット型ワゴンのボンゴ・フレンディが市場デビューを果たす。同時に、ボンゴ・フレンディのフォード版となるフリーダが発売された。この時点でスペクトロンはお役御免になると思われたが、市場でのワンボックスワゴンの根強い支持を得て同車は販売が継続される。結果的にスペクトロンは、1997年まで継続販売されることとなった。