RX-8(後期型) 【2008,2009,2010,2011】

基本性能を高めた進化版ロータリースポーツ

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


新世代ロータリースポーツの熟成

 マツダのシンボリックなスポーツモデルとして、2003年4月に発表、5月に発売されたRX-8。高性能ロータリーエンジンの13B-MSP型654cc×直列2ローターを動力源とし、“フリースタイルドア”と称する観音開きの4ドアボディや空力特性に優れたスタイリング、前ダブルウィッシュボーン/後マルチリンクの専用シャシー、機能に裏打ちされたインテリアデザインなどを採用したRX-8は、たちまち世界中のスポーツカーファンを魅了することとなった。

 一方、開発現場ではスポーツカーの命題、すなわち“進化”と“熟成”のベクトルに沿って積極的なリファインを実施する。2004年8月には、イモビライザーとリトラクタブルタイプキーの標準装備化や平成17年排出ガス規制の適合に伴う車両型式の変更などを実施。2006年8月になると、ATモデルの6速化や6ポートエンジンの採用、AAS(アクティブ・アダプティブ・シフト)の機能向上などを行った。また、折に触れて特別仕様車を開発し、マツダスピードバージョンやSport Prestige Limited、ロータリーエンジン40周年記念車などを市場に放った。

2008年、各部の改良でスポーツ性能を大幅強化

 RX-8の大がかりなマイナーチェンジは、2008年3月に行われる。「妥協なく、迷いなく、さらなる高みへ」というキャッチを冠した改良内容は、内外装から動力源、シャシーにいたるまで多岐に渡った。
 エクステリアについては、開口部を大型化したフロントバンパーやサイドマーカーを統合したヘッドランプユニット、エアアウトレット一体型のサイドウィンカー、LED内蔵のリアコンビネーションランプなどの採用によって機能性およびイメージを刷新。さらに、アルミホイールの17インチ化およびデザイン変更や新ボディ色のダイアモンドグレーメタリックの設定を実施する。インテリアでは、インパネ中央部のデザイン変更やタコメーター文字盤のシルバー塗装化、シート造形の一新、内装地のリファインなどを行った。

 動力機構に関しては、各領域で緻密な進化を図ったことが訴求点だった。エンジンについては、新型のウォーターポンプやオイルポンプの採用などにより低中速域の加速感を向上。また、可変レッドゾーンシステムを新たに組み込み、始動直後などエンジン水温が低い際のオーバーレブを回避させた。組み合わせるトランスミッションでは、6速MTのギア比および最終減速比の見直し、6速ATへのダイレクトモードの採用などを行い、加速時のリニア感の向上を図る。

 シャシー面では、前後のダンパー/コイルスプリング/ブッシュ/スタビライザーの特性を最適化させ、同時に台形ストラットタワーバーの採用(MT車)やサスタワーおよびホイールエプロン後部の板厚アップを行って操安性の引き上げを実現した。ほかにも、前後コーナー形状の適正化や前タイヤディフレクターの拡大、エンジンアンダーカバーの装着などを行い、空気抵抗係数(Cd値)を0.30に改善した。

スポーツ派に向けたType RSのデビュー

 マイナーチェンジの内容は中身の熟成だけではなかった。スポーツ志向のユーザーに向けた新機種の「Type RS」をラインアップしたことも、改良版の特長だった。ベースとなったのは「Type S」の6速MT仕様で、このモデルの走行性能を一段と高めるとともに、精悍かつ躍動的なスタイリングを採用するなどして“走る楽しさ”“持つ喜び”をさらに高い次元に昇華させた。

 主なスポーツアイテムとしては、専用エアロパーツ(フロント大型エアロバンパー/サイドアンダースポイラー/リアスポイラー)や19インチ鍛造アルミホイール(8J×19、ガンメタ塗装)、専用チューニングの225/40R19 89Wタイヤ、ファブリック+本革地のレカロ製フロントバケットシート(赤ステッチ)、本革巻きステアリング&シフトノブ&パーキングブレーキレバー(赤ステッチ)などを採用する。足回りに関しても抜かりはない。フロントサスのクロスメンバーには、操縦性と乗り心地の向上を狙って発泡ウレタン充填タイプを採用。さらに、様々な走行シーンで安定した減衰力を発揮する専用設計のビルシュタイン製ダンパーを組み込んだ。これだけの専用装備を加えながら、車両価格をベース車比で+20万円(300万円)に抑えたことも、Type RSのアピールポイントだった。

RX-8最後の特別仕様車「SPIRIT R」を発売

 マイナーチェンジによってロータリースポーツとしての完成度が高めたRX-8は、スポーツカー人気の低迷という逆風のなかにあってもユーザーの根強い支持を集める。メーカー側もロータリーの火を消さないよう、改良を継続し、2009年5月にはレインセンサーワイパーやオートライトシステムといった快適装備の標準化などを実施した。

 しかし、2010年代に入ると世界的な排出ガス規制の強化や燃費基準の引き上げなどがRX-8を襲う。もはや現行のモデルでは、厳しさを増す環境規制に対処できない--そう判断したマツダは、2012年6月をもってRX-8の生産を中止する決定をした。最後の特別仕様車として、2011年11月には限定1000台で「SPIRIT R」を発売。このモデルはすぐさま計画台数を超える受注に達したため、2012年4月にはもう1000台の追加生産が発表された。そして同年6月、予定通りに宇品本社工場でのRX-8の生産を終了したのである。