レガシィ・グランドワゴン 【1995,1996,1997,1998】
ワゴンとSUVの魅力を凝縮したクロスオーバー
レガシィ・グランドワゴンは、ベースになったツーリングワゴンの優れた機能はそのままに、SUVテーストを盛り込んだ新感覚モデルだった。ワゴンとSUV、両方の性格を持つクロスオーバーの先駆けである。
1990年代前半、日本では多様なライフスタイルをサポートし、充実した余暇を過ごすためのクルマが注目される。人気を牽引したのはレガシィに代表されるワゴンや、パジェロなどの本格SUVだった。レガシィなどのワゴンは乗用車と同等の優れた走行性能と快適性に、ユーティリティをプラスした点がアピールポイント。一方、本格SUVは、圧倒的な走破性を武器に大自然の懐に踏み込めることが人気の要因だった。だが、ワゴンにはタフさが、本格SUVには、走りの爽快さや快適性がやや欠けていた。
レガシィ・グランドワゴンは、ワゴンと本格SUVの美点を融合し、それぞれの欠点を解消した欲張りモデルと言えた。グランドワゴンはフルタイム4WDシステムを持つレガシィ・ツーリングワゴンの最低地上高を200mmに高め、トルクフルな2.5ℓユニットを搭載。内外装をアクティブなイメージに仕上げた“遊びの本格ツール”だった。アウトドアを中心とした活発なライフスタイルを持つユーザーに最適な1台だったのである。
ただしグランドワゴンは、日本市場をメインターゲットに開発されたモデルではなかった。狙ったのはアメリカだった。アメリカはSUV先進国であり、古くからアウトドアライフが生活に浸透していた。そんなアメリカに向けた、自由な空気を感じさせるスバルの新たな個性、それがグランドワゴンだった。アメリカでは日本より1年早い1994年に市場投入されている。ちなみにアメリカではアウトバックを名乗った。アウトバックの名称は日本でも2003年発表の3代目から採用されている。
グランドワゴンのカタログには「自由という大きなスケールを持ったワゴンとライフスタイルの新提案」と記されていた。キャッチコピーに込められた意味は、今までにないマルチな使い勝手を持ったクルマということだろう。確かにグランドワゴンは、ワゴンとして見ても、SUVとして見ても魅力的な存在だった。
ワゴンとしての優れた適性は、完成度の高さで定評のあるレガシィ・ツーリングワゴンがベースであることで明らかだった。ワゴン作りに豊富な経験を持つスバルだけにラゲッジスペースの広さと使い勝手は模範的。さらにワゴンで問題となるボディ剛性も非常にしっかりとしており、上質な走行フィールを持っていた。ボディサイズは全長4720mm、全幅1715mm、全高1555mm。最低地上高を高めたため全高はやや上昇しているが、日本でも使いやすいミディアムサイズに収めていた。最小回転半径も5.6mと適度で、取り回しに難がある本格SUVとは明らかに違っていた。
駆動方式はスバル独自のフルタイム4WDである。悪天候時やラフロードでもしたたかなパフォーマンスを発揮した。本格SUVと同等の200mmのロードクリアランスを確保したことで、ラフロードや雪道での走破性がぐっと高まっていたのも魅力ポイントだった。
パワーユニットは豊かな中低速トルクを持つ排気量2457ccの水平対向4気筒。スペックは160ps/6000rpm、21.5kg・m/2800rpmと1410kgの車重に対して余裕があり、シティユースからハイウェイまで優れたパフォーマンスを誇った。トランスミッションは電子制御タイプの4速ATを組み合わせた。
エクステリアは適度にワイルドな印象。フォグランプを組み込んだ大型バンパーと専用2トーン塗装、205/70R15サイズの大径タイヤが逞しさをアピールした。一方内装は豪華な仕立てで、オートACや運転席電動パワー機構などを標準装備。オプションで本革とエクセーヌのコンビシートが選べた。
グランドワゴンは、レガシィの新たな個性として好評を博し、堅実な販売セールスをマーク。1997年8月には車名をグランドワゴンからランカスターに変更。アクティブなライフスタイルを持つユーザーに愛された。