SUBARUデザイン5 【1989,1990,1991,1992】

“スポーティ&クオリティ”をキーワードに全面刷新

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“大いなる伝承物”の車名を冠した新世代セダン&ワゴン

 1980年代後半の日本の自動車業界は、好景気による大幅増益で賑わっていた。そのなかで富士重工業だけは海外事業での出遅れやヒット作の欠如などが災いして減益を記録してしまう。打開策として同社の技術陣は、全カテゴリーにおいて白紙状態からの新型車の開発を推進した。

 1989年1月には、スバル・ブランドの新しい中核車となる「レガシィ」を発表する(発売は2月)。ボディタイプは4ドアセダン=ツーリングセダンと5ドアワゴン=ツーリングワゴンの2タイプをラインアップ。2ボディともに基本フォルムをくさび形で仕立て、同時にセダンには6ライトウィンドウを、ワゴンには2段式ルーフを採用して個性を主張した。また、ブリスタータイプのフェンダーやブラックアウト化したピラー処理などで見た目のスポーティ感を盛り上げる。インテリアに関しては、“安全・快適にクルマを操る歓び”の創出をテーマにデザイン。具体的には、ドライバーを囲むようにアレンジしたメーターおよびセンター部や空気流路の通気抵抗を低減させたベンチレーションシステム、座り心地がよくサポート性にも優れたシートなどを採用した。

 注目の水平対向4気筒エンジンはEJ18型1820cc・OHC、EJ20型1994cc・DOHC、EJ20-T型1994cc・DOHCターボの3機種で、いずれも16バルブヘッドや各気筒独立点火コイル、センタープラグ配置などを取り入れた新設計ユニット。駆動機構はツーリングワゴンが4WDのみの設定で、セダンは4WDとFFの選択が可能だった。また、4WD機構は5速MTがビスカスLSD付きのセンターデフ式、4速ATが電子制御多板クラッチを備えたトルクスプリット式を組み込んでいた。
 富士重工業の新世代中核車は、RVブームの後押しもあって、とくにツーリングワゴンの人気が徐々に高まっていく。そして1989年10月に1984ccのターボエンジンを積む「GT」が設定されると、その人気は爆発的なものとなった。

“新世代のドライバーズ・ベーシック”を謳ったインプレッサ

 1992年10月になると、レガシィと軽自動車の間を埋める1.5リッタークラスの新しいベーシックモデルが市場デビューを果たす。車名は“印象”などの意を持つ英語の“impression”に由来する「インプレッサ」と名乗った。

 ボディタイプはサッシュレス4ドアのハードトップセダンとコンパクトなラゲッジを備えたスポーツワゴンの2タイプを用意する。車両デザインはオリジナリティあふれるもので、水鳥が飛ぶ姿をイメージした“フローイングライン”と称するフォルムを基本に、セダンはフロントロー&リアハイのスポーティかつ躍動的な造形で、ワゴンは個性的なテールゲートとルーミーなクオーター&リアガラスを組み込んだユーティリティあふれる造形で仕立てた。インテリアもフローイングラインを基調とし、伸びやかで居心地のいいキャビン空間を構築する。搭載エンジンは富士重工業渾身の水平対向4気筒ユニットで、EJ20-T型1994cc・DOHC16Vターボを筆頭にEJ18型1820cc・OHC16V、EJ16型1597cc・OHC16V、EJ15型1493cc・OHC16Vを設定。駆動方式に関しては、MTモデルにビスカスLSD付きのセンターデフ式4WDを、ATモデルにはトルクスプリット式4WDを組み合わせ、EJ16型とEJ15型エンジンにはFF仕様もラインアップした。

 富士重工業が大きな期待を込めてリリースした新しい中間車は、好感を持って市場に受け入れられる。とくに人気が高かったのはスポーツグレードのWRX系とベーシックワゴンのCS/CX系で、WRX系は走りを重視するユーザーに、CS/CX系は女性を中心とした若者層に高く支持された。

“シンプル・リッチ”を標榜した新世代軽自動車

 富士重工業は登録車クラスとともに軽自動車カテゴリーの刷新も鋭意画策する。そして1992年3月になって、レックスの後継を担う「ヴィヴィオ」をリリースした。車種構成は乗用モデルの3ドア/5ドアセダンと商用仕様の3ドアバンが基本。メイン車種はセダンで、スポーツグレードのRX-Rを筆頭に豊富なバリエーションを展開した。

 ヴィヴィオは“シンプル・リッチ”のキャッチフレーズが示すとおり、質感の高さを特長としていた。シャシーは前後ストラットの4輪独立懸架を採用。ホイールベースは従来のレックス比で15mmほど延長(2310mm)し、軽自動車枠のなかで目一杯のフロアスペースを確保する。ボディタイプは3ドアと5ドアの2タイプのハッチバックを設定した。スタイリングにも工夫を凝らし、曲線を活かした張りのある面構成で外装を構築する。また、ボディの材質や組み付け工程も見直し、従来以上の高い剛性と耐久性を確保した。室内に関しては、ドライバーズエリアを中心に各部をアレンジ。さらに、樹脂材の質感向上やインパネおよびドアトリムのデザイン一新を図り、小型車に匹敵する居住空間を創出する。搭載エンジンには直列4気筒のEN07型系(排気量658cc)を採用。スポーツモデルには4バルブDOHCのヘッド機構とスーパーチャージャーを備えた仕様を用意する。駆動機構には、FF/ビスカス式フルタイム4WD/パートタイム4WDの3タイプを設定した。

 市場に放たれたヴィヴィオは、質の高い新世代の軽自動車としてユーザーから大きな注目を集める。受注も順調に伸び、1992年度の軽乗用車販売台数は前年比で約14%のアップを成し遂げた。