R1 【2004,2005,2006,2007,2008,2009,2010】

小さいことに価値を求めた復活版“テントウムシ”

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地球に優しいコンパクトスペシャルティの誕生

 2004年12月富士重工業は、軽自動車R2(5ドアセダン)のスペシャルティモデルであるR1(3ドアクーペ)を発表した。R1の車名は、セダンであるR2に対応したものである。

 R1の母体となったR2は、2003年にデビューした新設計5ドアセダンで、それまでの実用一点張りのスタイルから一変した曲面豊かなスタイルと比較的高いボディ高を特徴としていた。3ドアクーペとなったR1にも、このスタイリングコンセプトは受け継がれていた。R1の最大の特徴は全長を軽自動車規格を目一杯使うのではなく、あえて全長を3285mmとコンパクトに仕上げていたこと。地球環境に優しいシティコミューターとして最適なサイズに仕立てたのである。

小さいことに価値を求めた新発想!

 小ささはR1の価値を求めた。開発を担当した商品企画本部の西尾貞典氏は「R1は、小さいことの魅力を引き出すデザイン、これまで以上に取り回ししやすいサイズ、ドライバーを中心として隅々まで手が届くような室内空間を実現した“スーパースモールカー”です」と、R1の個性を表現した。

 軽自動車の使用実態は、ほとんどがセカンドカーやサードカー。それならば胸を張って乗れる、小さいクルマならではの便利さ、満足感を、毎日の生活のなかで実感しやすいクルマを作ろうという流れになったという。各部を入念に作り込み、クラスを超える上質感を持たせることで大人も乗れるプレミアムミニを目指した。小さいことが賢さに通じる発想、それがR1を貫く最大の価値であり新しさだった。

3種の4気筒エンジンから選べたR1

 R1のエンジンは、ベースとなったR2に等しいもので、最終的に3種から選ぶことができた。排気量658ccの水冷直列4気筒レイアウトを基本とし、DOHC16Vユニットには機械式スーパーチャージャー仕様(64ps/6000rpm)と自然吸気仕様(54ps/6400rpm)の2種。そしてSOHC8Vの自然吸気仕様(46ps/6000rpm)を加えた合計3種のエンジンである。

 トランスミッションは電子制御システムを持つCVTが搭載されており、駆動方式は通常の前2輪駆動(FF)とVCU(ビスカスカップリング)をセンターデファレンシャルに用いたフルタイム4輪駆動方式の2種があった。
 サスペンションは前後ともストラット式独立懸架で、スポーティーな走りを可能としていた。ブレーキは前・ディスク、後ろ・ドラムの組み合わせ、タイヤは155/60R15と大径のものが装備されていた。また、アンチロックブレーキシステム(ABS)を標準装備していた。

 インテリアは、とても軽自動車とは思えない上質なデザインが施され、ヨーロッパ製プレミアムカーを思わせるものだった。シートの配置は、4人乗車可能となっていたのだが、実際には2+2で、特に後部座席は子供用か手回り品を置くためのスペースに過ぎない。ただし、後部座席のシートバックを倒せば、十分な広さのラゲッジスペースが出現する。

毎日の運転で実感できる良好な燃費を追求

 R1はプレミアムミニらしく、上級モデルに負けない上質な走りを実現していた。しかし軽自動車本来の経済性も磨いていた。地球に優しいクルマを目指したからである。

 主力となる自然吸気DOHC16V車の10・15モード燃費は24km/L。良好な燃費はエンジン本体の徹底的な効率化と、電子制御スロットルを含めたエンジンとi-CVTトランスミッションの統合制御がもたらしたものだった。しかも単に燃費がいいだけでなく発進加速に影響する低中速トルクを太らせることでキビキビ感を演出していたのもポイントだった。

 メーター内には省燃費走行状態のときに点灯するインフォメーションランプを設け、ドライバーに燃費のいい走り方を知らせる工夫も施していた。R1は自然なドライバビリティと良好な燃費が両立した、まさに21世紀のプレミアムミニと言えた。

R1はSUBARUの軽自動車作りの伝統を伝えるラストモデル!

 R1は、R2とともに2010年3月14日受注分を持って生産を終了。表舞台から姿を消した。これは「軽自動車の自社開発生産から撤退する」というSUBARUの方針に沿ったもので、ダイハツからOEM供給を受けるプレオとルクラが新たにスバル軽自動車の主軸となった。R1の累計生産台数は1万5081台(ちなみにR2は13万4036台)。プレミアムミニを標榜した個性派のR1は営業上けっして成功作と言えなかった。

 しかしこれはコンセプトが時代より先に行っていたからだった。R1の生産状況を子細に観察すると2009年4月から生産終了までの1年間のデータは、前年比136%をマークしている。登場して5年を経過したモデルがこれほどの伸びを記録するのは異例だ。事実R2の数値は前年比92.6%にとどまった。

 2010年1〜3月に絞るとR1の生産の伸びはさらに顕著だ。なんと前年比287%なのである。すでに生産終了のアナウンスがされていたから駆け込み需要が生産を押し上げたことは確かだが、それにしても凄い。R1が目指したプレミアムミニという新価値がようやく認識されたことの証明と言える。この生産の伸びは、R1がつねに新しいことに挑戦してきたSUBARUの軽自動車作りの伝統を伝える名車であることを証明していた。