マークII 【1992,1993,1994,1995,1996】

理想のパーソナルサルーンを目指した第7世代

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日本を代表する高級オーナーカーを目指して−−

 1980年代後半から1990年代初頭にかけたいわゆる“ハイソカー”ブームの最中、トヨタ自動車の開発陣はブームを牽引するマークIIの次期型(7代目)を企画する。開発テーマは、「日本を代表する高級パーソナルサルーン」の創出。

 高級・高性能車の本流を目指す新型は、具体的には3点に注力する。マークIIならではのアイデンティティを強調した“美しいスタイル”、新設計のシャシーや高性能パワートレーンが生み出す“高質な走り”、3ナンバーボディの採用による“ゆとりのアメニティ空間”だ。さらに、安全性の向上や時代に則した環境対策なども徹底追求する方針を打ち出す。グレード体系についても、従来型以上の充実を目指した。
 ちなみに、フルモデルチェンジするのはハードトップのみとし、セダンやワゴンは従来型の大幅改良にとどめることとした。

“美しいスタイル”と“高質な走り”の追求

 スタイリングは、洗練された美しさと高級感を備えたエクステリアを追求する。全体のフォルムはダイナミックなウエッジシェイプを基調にスポーティさを演出。フード一体のフロントグリル造形や立体感を強調したハイデッキのリアエンドを採用し、精悍かつ高品位なルックスに仕立てた。

 パフォーマンス面については、シャシーに新設計の4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションを導入する。同時に4輪ディスクブレーキや4輪ABS、TRC(トラクションコントロールシステム)、トルセンLSD、電子制御サスペンションのTEMSといった先進技術を盛り込み、優れたトラクション能力と操縦性、快適な乗り心地、高い安全性などを実現した。搭載エンジンは改良版の2JZ-GE型2997cc直6DOHC24V(220ps/28.5kg・m)を筆頭に、1JZ-GTE型2491cc直6DOHC24Vツインターボ(280ps/37.0kg・m)、1JZ-GE型2491cc直6DOHC24V(180ps/24.0kg・m)、1G-FE型1988cc直6DOHC24V(135ps/18.0kg・m)、4S-FE型1838cc直4DOHC16V(120ps/16.5kg・m)、2L-TE型2446cc直4OHCディーゼルターボ(97ps/22.5kg・m)の計6機種を設定。4S-FE型を除くガソリンエンジン車のATには最新のECT(電子制御式4速AT)を組み合わせた。

 インテリアは、3ナンバーボディ化によって室内幅を拡大したことに加え、ヘッドクリアランスやレッグスペースを広くとり、ゆとりのあるキャビンスペースを実現する。また、各部のデザインにおいてエルゴノミクスを徹底。快適なドライビング空間を創出した。さらに装備面では、先進技術を積極投入。遠視点表示採用のスペースビジョンメーターやGPSナビゲーションシステム付エレクトロマルチビジョン、電動チルト&テレスコピックステアリング、ゆらぎ制御付オートエアコン、DSP付7スピーカー・スーパーライブサウンドシステムなどを設定した。

“Mark,the MARK II”のキャッチで市場デビュー

 7代目マークIIは、キャッチフレーズに“Mark,the MARK II”を掲げて1992年10月にデビューする。グレード展開はスポーティなツアラー系とラグジュアリー志向のグランデ系、ベーシックなグロワール系およびGL系を設定。内外装の演出だけではなく、足回りやハンドリングも各系統によって差異化を図った。

 新しいマークIIは、広告展開にも力を入れる。イメージキャラクターを務めたのは、なんとすでに他界していた名監督&プロデューサーのアルフレッド・ヒッチコック氏。CMでは『ヒッチコック劇場』のテーマ曲とともに同氏の過去の映像とマークIIが映し出され、熊倉一雄氏の吹き替えによる名調子で新型マークIIの特徴を紹介。クルマ好きのみならず、映画ファンからも注目を集めた。

 従来型を大きく凌ぐ質感と性能を備えた7代目マークIIは、バブル景気の名残もあって、発売当初は順調にセールスを伸ばした。しかし、1990年代の中盤に差しかかると市場のRVブームに圧倒されるようになり、次第に販売台数を落としていく。復活をかけた“セダン・イノベーション”を掲げる第8世代に引き継がれるのは、1996年9月になってからだった。

「人と地球にやさしいクルマづくり」を実践した7代目

 7代目マークIIが登場した1992年は、世界規模での環境問題が大きく取り沙汰された時期だった。5月には気候変動枠組条約が作成され、翌6月にはUNCED(環境と開発に関する国際連合会議。通称・地球サミット)において同条約が採択される。以後、気候変動枠組条約締結国会議(COP)が順次開かれ、1997年開催のCOP3では京都議定書が採択された。

 こうした流れを受けて、トヨタは7代目マークIIの開発において“人と地球にやさしいクルマづくり”に取り組む。主な実践項目は4点。車両の軽量化とリサイクルへの取り組み、フロン対策、ノンアスベスト化だ。軽量化に関しては大型コンピュータを駆使したFEM(有限要素法)解析に基づく最適設計に、合理化を追求した4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションの採用、カーボンファイバーを用いたコンポジットプロペラシャフトの導入を行い、従来型に比べて最大120kgの軽量化を実現した。リサイクルについては熱可塑性樹脂の積極採用とともに、工程内で発生する樹脂端材の再利用を実施。さらに、リサイクル時の樹脂材識別を考慮して成分比を表示した。フロン対策ではエアコンに新冷媒のR134aを採用すると同時に、工程における発泡用フロンや洗浄用フロンの廃止を実施。ノンアスベスト化については、ブレーキをはじめ使用する部品のすべてからアスベストを除去した。