マークII 【1988,1989,1990,1991,1992,1993,1994,1995,1996】

高級車指向のユーザーの心を捉えた傑作モデル



いいものを求める時代の流れを見事に捉えた高級車

 「ちょっぴり高価でも良質な商品を手に入れたい」という時代の流れを見事に受け止め、大ヒットモデルとなったのが6代目のマークIIである。デビューは1988年8月。その頃、日本は未曽有のバブル景気の真っ最中だった。

 1988年当時、クルマには明確なヒエラルキーが存在した。トヨタ車の場合、頂点はクラウン。ベーシックモデルはスターレットで、カローラ、コロナ、カムリ、マークIIとボディサイズが大きくなるにしたがって、エンジン排気量が増大。エアコンやパワーウィンドー、高級オーディオ、パワーステアリングといった快適アクセサリーも、大型モデルになるほど充実した。つまり「大きいクルマほど高級」という図式が明確だったのだ。そんな中、バブル景気は、仕事を頑張れば、ストレートに給料に反映されるいい時代だった。若いユーザーが高額のローンを組んで高級車を購入しても、残業に励めば十分に支払いできた。しかも毎年給料は確実に上昇した。未来はバラ色に見えた。そんな時代である。高級車が高い人気を集めるのは、いわば当然だった。

 高級車のなかでもマークIIの人気は別格と言えた。トヨタの最高級車は、前述の通りクラウンだったが、クラウンはフォーマルな風合いも強いモデル。オーナードライバーがパーソナルカーとして楽しむにはクラウンよりマークIIのほうが最適だったからだ。またクラウンにすると立派すぎて近所や会社での人間関係に微妙な影響を与える心配があった。しかしナンバー2のマークIIなら、そんな気遣いは不要だった。マークIIは「高級車には乗りたいが、必要以上には目立ちたくない」という、日本人特有の“謙譲の美徳”満足させるクルマでもあったのだ。

スタイリッシュな4ドアハードトップが主役

 6代目のマークIIは、5代目で確立した「オーナードライバー向けの最上級モデル」という価値観を熟成させたモデルだった。クラウンと比較すると室内スペース、とくに後席スペースが狭かったが、静かで乗り心地がよく、快適装備を満載。スムーズな走りが自慢だった。ボディタイプはスタイリッシュな4ドアハードトップが主力で、保守的なユーザーのために伝統の4ドアセダンも設定した。ワゴンも選べたが、こちらは5代目のリファイン版である。ボディサイズは4ドアハードトップで全長4690×全幅1695×全高1375mmと5ナンバー枠のほぼ上限。全長と全幅はクラウンと事実上変わらないサイズだったが、全高を低く押さえると同時に、各部のデザインを繊細に仕上げることでスタイリッシュなイメージを強調した。

 パワーユニットは、排気量1988ccの直列6気筒エンジンが主役だった。6代目は最上級グレードのグランデG用のパワーユニットとして、最高出力170psを誇るスーパーチャージャー仕様の1G-GZE型DOHC24Vを新設定。販売の主力となるグランデ用ユニットはハイメカツインカム化を図り、最高出力135psのDOHC24Vとなった。トランスミッションは、一部グレードでは5速MTが選べたが、圧倒的多数はOD付きの4速ATを選んだ。足回りも進化しており、リアサスペンションにはダブルウィッシュボーン式を新採用。しなやかな乗り心地と良好なロードホールディングを両立させた。

圧倒的な静粛性で欧州製高級車を凌駕

 装備は至れり尽くせりだった。主力のグランデ系は、電子制御オートAC、パワーウィンドー、集中ドアロック、高級オーディオ、後席センターアームレストをすべて標準装備。グランデGではメーターがオプティトロン方式のデジタル方式となり、パワーシートやアルミホイールも標準となった。

 6代目は走りも際立っていた。とくに日本の法定上限スピードである100km/hまでの静粛性は抜群。メルセデス・ベンツやBMWといった欧州の一流ブランドと比較しても明らかに静かだった。マークIIが目指したのは「窓を閉めた瞬間、まるでナイフで切ったように外の喧噪が消える静粛空間」。この実現のため、6代目マークIIはサスペンション・マウントに大型サブフレームを採用。エンジンマウントも改良した。さらにマフラーの容量アップ、サンドイッチ制振パネルの最適配置など、きめ細やかな設計を徹底。ボディの高剛性化とも相まって世界トップクラスの静粛性を実現したのである。
 速さも必要十分以上で、長距離クルージングを楽々とこなした。6代目マークIIは、ユーザーニーズを徹底的に調査し、それに見事に応えた傑作サルーンだった。日本ベストのクルマ作りを象徴する存在である。