マツダデザイン10 【1990,1991,1992,1993】

話題をさらった1990年代初頭のスポーツ&高級モデル

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3ローターエンジンを搭載した高級スペシャルティの誕生

 1990年代初頭のマツダは、トヨタと日産に続く国内第3位メーカーの地位を確定的なものとし、さらには上位の2メーカーに迫るため大胆な戦略に打って出る。販売網の5チャンネル体制の構築と車種設定の大幅な拡大だ。同時に販売する新型車、とくにイメージリーダーとなるスポーツモデルやラグジュアリーカーの車両デザインをインパクトのある造形に刷新し、マツダ車の個性を目いっぱいにアピールした。

 1990年3月には、新世代の高級スペシャルティとなる「ユーノス・コスモ」を発表する(発売は4月)。搭載エンジンには量産車世界初のレイアウトとなる“3ローター”の20B-REW型654cc×3直列3ローター+シーケンシャルツインターボを設定。懸架機構には新設計のフルピロボール付スーパーコンプライアンスサスペンションを採用した。

 車両デザインについては、低くて流麗なラインで仕立てたロングノーズに2750mmの長いホイールベースを活かした伸びやかなサイドビューを持った、独創性あふれる2ドアノッチバッククーペのフォルムを構築する。2+2キャビンのインテリアは、インパネから後席シートバックにかけてのラインに連続性を持たせ、内装の周囲を曲線で囲むようにデザイン。また、前2席および後2席の中央を大きなセンタートンネルで仕切り、各席が独立した独自スタイルを演出した。

3ナンバーのワイド&ローフォルムを採用した3代目RX-7

 1991年12月になると、新しいロータリースポーツ車となる「アンフィニRX-7」を発売する。エンジンはダイナミック共鳴過給システムを新たに組み込んだ13B-REW型654cc×2直列2ローター+シーケンシャルツインターボを搭載。同時に、高張力鋼板+制振鋼板による閉断面構造で仕立てた新設計のパワープラントフレームを採用した。

 車両デザインは、全幅を1760mmにまで広げて前後トレッドを拡大するとともにボディ表面の徹底したフラッシュサーフェス化を実施。さらに、3次曲面フロントウィンドウやエアロウェイブルーフ、エアロアンダーカバーなどを採用し、空気抵抗係数(Cd)0.30、前面投影面積(Cd×S)0.53という優秀な数値を実現する。また、入念なテストを繰り返して形状を決めたフロントスポイラーやフローティングリアウィングは、高速走行時に効果的なダウンフォースを発生した。内装についてはクルマとの緊密な一体感を味わえるようにアレンジ。ドライバーを囲むように仕立てたインパネ造形に低い着座位置、センターとサイドのクッション構造を分離させたバケットシートなどで運転に集中できるコクピットを創出した。

パーソナル感を大切にしたプレステージモデル

 1991年5月にはマツダのフラッグシップサルーンが登場する。サッシュレス4ドアのピラードハードトップボディを採用した「センティア」だ。高級車の新しい価値を意味する“アナザー・プレステージ”というキャッチを冠したセンティアは、その車両デザインで市場の注目を集める。2850mmのロングホイールベースにワイドトレッドというディメンション、エンジンのフロントミッドシップ搭載に加え、アルミ製フロントフードをはじめとする綿密な軽量化施策などにより、スポーツカーに匹敵する前後重量配分と低重心を実現した。そして、滑らかな曲面が連続するカーブコンシャスのフォルムによって、Cd値0.32というハイレベルのエアロダイナミクスを成し遂げる。搭載エンジンはJE-ZE型2954cc・V6DOHC24VとJ5-DE型2494cc・V6DOHC24Vという2機種の新V6ユニットを採用。また、懸架機構には4輪マルチリンクをセットし、先進メカニズムとして車速感応型4WSや4輪ABSなどを組み込んだ。

 インテリアは、ドライバーオリエンテッドな空間の創出に重点を置く。インパネはメーターの視認性などを考慮したうえで3次元の曲面デザインで構成。最上位グレードには楡の天然杢を使ったセンターコンソールパネルや最高級の牛革を用いたステアリング&シフトノブを採用する。また、フロントシートには第4、5腰椎を適切に支持して最適な乗車姿勢を保持するバケットタイプを導入した。装備類の斬新さも特長で、とくにソーラーベンチレーションと呼ぶ新しい換気システムが注目を集めた。

“10年基準”のロングライフサルーン誕生

 1993年10月には、ユーノス・ブランドの旗艦セダンとなる「ユーノス800」が市場デビューを果たす。車両のキーワードは“十年基準”。高機能フォルムのなかに息の長い本質的なクルマの価値を造り込んだことを、この言葉で表現していた。

 エクステリアは、存在感のあるグリルを中央に据えた華やかなフロントマスクや伸びやかなサイドライン、端正な造形のリアセクションなどで強くて美しい4ドアセダンのスタイルを構築する。同時に、精緻な造りのパネル面や最高水準の塗装である高機能ハイレフコートなどを採用し、見た目の高級感と耐久性のアップを実現した。ラウンドデザインのキャビン空間にも、精緻な造り込みを施す。とくに、しっとりとした風合いを醸し出すコーティングや上質なシボ加工が、乗員の感性に訴えかけた。一方、量産車世界初のミラーサイクルエンジンを搭載したことも、ユーノス800の特長だった。吸気バルブ遅閉じ方式やリショルムコンプレッサーなどの新技術を用いたKJ-ZEM型2254cc・V6DOHC24Vユニットは、滑らかでゆとりに満ちた出力特性と優れた燃費性能を高次元で両立していた。