ステラ 【2006,2007,2008,2009,2010,2011】

“楽しい関係空間”をテーマに開発した新ハイトワゴン

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


市場ニーズを満足させる軽乗用車の開発

 2000年代中盤の日本の自動車市場では、軽乗用車の販売比率がにわかに高まっていた。後に“失われた20年”などと呼ばれる長い景気低迷の最中で、経済性に優れ、しかも使い勝手のいい軽乗用車、とくに室内が広いハイトワゴン系が、ユーザーから高い支持を集めていたのだ。

 こうした市況の中、富士重工業(現SUBARU)は、自社の軽乗用車の刷新を積極的に推し進める。その一環として実施したのが、新種の軽ハイトワゴンの設定だった。開発テーマは“楽しい関係空間”の創出。メインユーザーを女性層に据えて多様な市場調査を実施したうえで、クルマとしての高い基本性能に加えて毎日の生活の中で楽しく使える1台に仕立てることを念頭に置いて企画を進行させた。

イタリア語で“星”を意味する車名でデビュー

 富士重工業の新しい軽ハイトワゴンは、イタリア語で“星”を意味する「ステラ」の車名を冠して2006年6月にデビューする。車種展開はシックでお洒落なステラLとLX、スポーティ志向のステラカスタムRとRSをラインアップ。いずれも基本骨格には優れた衝突安全性能を発揮する新環状力骨構造ボディを採用し、またシャシーには路面の変化にしなやかに追従する4輪独立懸架式サスペンションを組み込んだ。

 エクステリアは堂々とした存在感と親しみやすさを両立したデザインを基本に、ステラは “シンプルクリーンモダン”をテーマに親近感や愛らしさを、ステラカスタムは“若さ・元気・スポーティ”をテーマに力強さや精悍さを表現する。また、後席へのアクセスを容易にするためにドアの開口角度を最大約90度にするとともに、開口部形状の最適化を図った。

インテリアは機能性と質感にこだわり、心地よい快適な室内空間を実現する。また、2種類の外装デザインに合わせて専用内装色(ステラ=アイボリー、ステラカスタム=ブラック)や専用メーターなどを採用し、それぞれの個性を演出した。シートについては、前席に快適性と機能性を両立させたベンチタイプを、後席に左右独立で前後200mmの移動を可能とする左右独立ロングスライドタイプを装備する。また、運転席からワンアクションで可倒し、背面をテーブルとして活用できる助手席マルチユーティリティシートをオプションで用意した。

 搭載エンジンは、ステラおよびステラカスタムRにEN07型658cc直列4気筒DOHC16V・AVCSユニット(54ps/6.4kg・m)を、ステラカスタムRSにEN07型658cc直列4気筒DOHC16Vインタークーラー付スーパーチャージャー(64ps/9.5kg・m)を採用。変速機にはフル電子制御・無段変速オートマチックトランスミッションのi-CVTを組み合わせる。駆動機構は全グレードに2WD(FF)とAWD(ビスカス式フルタイム4WD)を設定した。

最初で最後のオリジナル「ステラ」に−−

 発売からわずか1週間で月販目標の5000台を超える5438台の受注を記録し、好調なスタートを切った新世代軽ハイトワゴンのステラは、デビュー後も着実に新鮮味のアップと中身の進化を図っていく。

 2006年11月には、ステラカスタムRをベースとする特別仕様車の「R Ivory Selection」を発売。2007年1月開催の東京オートサロンでは、「ステラカスタムSTIコンセプト」と「ステラカスタムREVESTA(リベスタ)」を参考出品する。また同月中には、ステラLXをベースとする特別仕様車の「LX Interior Selection」とステラLをベースとする特別仕様車の「L SPECIAL」をリリース。さらに同年2月にはステラカスタムRをベースとする特別仕様車の「R SPECIAL」を、7月には特別仕様車のステラ「LX HID selection」とステラカスタム「RS S-EDITION」を発売した。11月になると一部改良を行い、ステラLへの5速MTの追加やステラカスタムのベースモデルとなるGグレードの設定、新ボディ色の採用、フロントシート形状の刷新、助手席アンダートレイの新設、盗難警報装置の標準装備化などを実施する。さらに同月中には、東京オートサロンに参考出品したREVESTAの市販バージョンとなる「ステラREVESTA」をラインアップに加えた。

 2008年に入ると、まず5月にスバル発売50周年を記念した特別仕様車のステラ「L Limited」とステラカスタム「R Limited」を発売。11月には一部改良を実施し、スーパーチャージャーエンジンを搭載するステラLSの追加や新ボディ色の展開、自立式リアシートベルトバックルの装備、本革シートのオプション設定などを行う。翌2009年の1月には、特別仕様車のステラ「L Black Interior Selection」をリリース。11月にはシート表地の刷新やステラカスタムのフェイスリフト、新ボディ色の採用、装備の充実化などをメニューとした一部改良を敢行し、同時に特別仕様車のステラL「Black Interior Selection」を発売した。

 一方で富士重工業は、2008年4月にトヨタ・グループとの協業を活用した事業改革を発表。そのなかで、軽自動車はダイハツからOEM供給を受ける旨をアナウンスする。軽自動車の自社開発および生産から撤退する決断をした同社は、ステラについて2011年2月ごろの生産終了を計画した。しかし、4気筒エンジンやスーパーチャージャーの過給器、4輪独立懸架といったスバル独自のメカニズムを信奉するファンは多く、駆け込み需要が発生する。結果的にステラは、2011年4月まで生産を延長。そして5月に販売を終了し、ダイハツ・ムーヴをベースとする2代目ステラへとモデルチェンジしたのである。