チェイサー 【1992,1993,1994,1995,1996】

3ナンバーボディを得た安全&ベストハンドリングセダン

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堂々としたジャストサイズボディ

 5代目となるチェイサーは、7代目マークII、4代目クレスタとともに1992年10月に登場した。5代目もチェイサー&マークII&クレスタの3兄弟の中でスポーティな色彩を強調する伝統を継承。ボディタイプはピラードタイプの4ドアハードトップに統一されていた。

 5代目の第1の特徴は、3ナンバーサイズに拡大したボディサイズにあった。先代モデルでも2.5&3.0リッターエンジン搭載モデルは大型バンパーを装着し3ナンバーサイズに拡大していたが、5代目はボディそのものを大型化し、長さの面でも幅でも3ナンバー車に成長する。デビュー時期こそバブル景気の絶頂期を過ぎていたが、開発自体はバブル絶頂期に行われたため伸びやかな3ナンバーボディを纏ったのである。

 ボディのスリーサイズは全長4750mm×全幅1750mm×全高1390mm。日本の道路環境のなかでも持て余すことがなく、しかも従来車より格段に大きく、立派に見える絶妙のサイズ設定だった。さすがはトヨタである。いままでのチェイサーは、メルセデス・ベンツやBMWなどの欧州製ライバルと比較するとひと回り小さく、イメージ的にやや見劣りがした。しかし5代目は実に堂々としており、欧州のライバルと並んでも位負けすることがなかった。

スカイラインにインスパイアされたフットワーク!

 第2の特徴は、磨き込んだフットワークにあった。それまでのチェイサーは、3兄弟のなかではスポーティと言っても明確に快適性重視だった。ハンドリングそのものは悪くはなかったが、それ以上にソフトな乗り心地を追求していたのである。いわばクラウンをちょっぴりしっかりとさせたイメージだった。

 リアだけでなく、フロントにもダブルウィッシュボーン式サスペンションを組み込んだ5代目は、はっきりと進化していた。ワインディングロードや高速クルージングで惚れ惚れとする高度なフットワークを披露したのである。ラック&ピニオン式のステアリング機構を採用したこともありステアリングに遊びはなく、ハイスピードでのコーナリングにトライしても難なくクリアーした。

 優れたハンドリング性能はドライバーに運転が上達したかのような印象を与えた。ハンドリングのリファインは、1989年に登場したライバルである8代目R32型スカイラインの影響が大きかった。R32型スカイラインの高い完成度に衝撃を受けた設計陣が奮起したのである。チェイサーはスカイラインほどにはスポーティ一辺倒ではなかった。それでもドライバーズカーとして一級品と呼べる完成度に達していた。

国産サルーンの到達点を示した秀作

 第3の特徴は、先進の安全設計だった。ボディには入念な設計の衝撃吸収構造を取り入れ、全車にサイドドアビーム&後席3点式シートベルトを装着。オプションではあったが、運転席エアバッグ、4輪ABS、TRC(トラクションコントロール)などの安全デバイスを設定した。超音波雨滴除去装置付きドアミラーなどのハイテク装備を用意していたのもトヨタらしかった。1990年代前半は、日本車の安全性が一挙に高まった時期だが、チェイサーはその先頭を走っていた。

 パワーユニットは最高出力280psの1JZ-GTE型DOHC24Vツインターボを筆頭に、6気筒エンジン4種、4気筒エンジン1種、4気筒ディーゼルターボ1種の計6種。トランスミッションは一部グレードで5速MTが選べたが、主力はAT、それも高度な電子制御式の4速タイプだった。

 5代目チェイサーは、ハイレベルのアッパーサルーンだった。ルックス、フットワーク、安全性のどの面を見ても国際車のレベルに到達していた。しかし残念ながら販売成績は先代モデルを凌ぐことができなかった。最大の要因は景気の後退だったが、ユーザーがSUVなステーションワゴンなど生活に広がりを与えるマルチユースモデルに注目したことも原因だった。トラディショナルな4ドアモデルはこの時期に曲がり角を迎えた。

エアコンはマイコン制御の高効率タイプ

 チェイサーはトヨタのアッパーミドルサルーンだけに快適性に対する配慮は入念だった。全車に標準装備されたエアコンはマイコン制御のフルオートタイプ。ドーム型の日射センサーの採用により、日差しの強い時も曇りの日も快適な設定温度に室内温度をコントロールした。

 エレクトロマルチビジョン装着車には“ゆらぎ制御”をプラスし、一層の快適性向上を図ったのがポイントだった。ゆらぎ制御とは、風の吹き出し量をランダムに変化させるきめの細かい制御。温度管理だけでなく、そよ風のような風量管理で快適な室内環境を作り出すものである。ちなみにエアコンの冷媒には地球環境に優しいR134aを採用していた。