Renault MEGANE R.S. 【2021】

ルノー・スポールが生み出した魅力的なホットハッチ

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中川 和昌
数あるホットハッチの中で際立つ1台

ルノー19の後継車として1995年に登場したCセグメント、メガーヌは、ルノーの定番的な存在として親しまれてきた。その次世代として、2002年にモデルチェンジしたメガーヌⅡのスポーツモデルとして2004年に追加されたのがメガーヌR.S.である。言うまでもなく、ルノーのモータースポーツ部門であるルノー・スポールが開発しディエップの工場で生産される高性能モデルで、通称「R.S.」、一般的にはレーシング・スポーツの頭文字だが、ルノー・スポールの頭文字であることは良く知られる通りだ。その後メガーヌⅢ、現行のメガーヌⅣにもメガーヌR.S.はラインナップされ、現行R.S.は3世代目にあたり、2018年に登場。2019年には、さらにその高性能版として足回りを強化し、R.S.の280psから300ps(221kW)/6000rpmにパワーアップ、最大トルクを390Nm/2400rpmから420Nm/3200rpmへ引き上げたR.S.トロフィーが追加されている。

ニュルブルクリンク北コースの量産FF車最速新記録を樹立。

もちろん、メガーヌR.S.のDNAは誕生から現在に至るまで、引き継がれ、そのパフォーマンスは、ニュルブルクリンクでの量産FF車最速チャレンジによって誇るべきDNAとして認められている。ちなみにその記録は2008年にはじまり、メガーヌR26.Rがニュルブルクリンク北コースで、8分16秒9のラップタイムを記録。2011年にはやはり北コースでメガーヌⅢのR.S.トロフィーが8分07秒97を、さらに2014年にはメガーヌⅢのR.S.トロフィーRが7分54秒36へ記録を更新。そして2019年、最新の現行メガーヌR.S.をベースとしたメガーヌR.S.トロフィーRは7分40秒100を達成し、ニュルブルクリンク北コースの量産FF車最速新記録を樹立している。

スポーツ性を強調するメガーヌR.S.トロフィー

そのメガーヌR.S.が今回マイナーチェンジ、2021年1月28日に日本導入を発表、3月4日から販売を開始、高性能バージョンのメガーヌR.S.トロフィーも変更を受けて、同時にラインナップされる。メガーヌR.S.トロフィーはMTと、6段ツインクラッチのEDCの2モデルがあり、強化されたシャシーなど、スポーツ性をより強調しているのが大きな特徴である。

メガーヌR.S.トロフィーの300psを搭載。

今回試乗したのは日常性も備えたホットハッチ、メガーヌR.S.で、ハイライトはパワーアップで、従来の1.8リッター直列4気筒16バルブ直噴ガソリンターボ・エンジン279psからメガーヌR.S.トロフィーに搭載される300ps(221kW)/6000rpmに、最大トルクは390Nm/2400rpmから420Nm/3200rpmへ変更された。さらにツインスクロールターボの軸受けベアリングには、スチール製に代えてセラミック製を採用し、摩擦を従来の3分の1に低減したとされるターボチャージャーを装着。

多くの先進装備を採用。

ほかにも、今回のマイナーチェンジでは、R.S.とR.S.トロフィーともにアダプティプクルーズコントロール、アクティブエマージェンシーブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ) 歩行者検知機能付など先進的な運転支援システムを採用したほか、多くの装備をバージョンアップ、あるいは新採用されている。
 注目すべきは、電子制御のアクチュエーターで、タイロッドを動かして後輪を操舵する「4コントロール」と呼ばれる後輪操舵システムと、ダンバーのバンプラバーの代わりにセカンダリーダンパーを内蔵して、ダンパーを大容量化したのと同じ効果を狙った「4輪HCC」(ハイドロリックコンプレッションコントロール)、さらにメガーヌR.S.トロフィーはトルセンLSDで、メガーヌR.S.は「R.S.デフ」と呼ばれる電子制御ブレーキングLSDなど走行性を重視したシステムなどが、ふんだんに盛り込まれることだ。言うまでもなくルノー・スポールはF1をはじめ多くのモータースポーツで活躍しているが、そのテクノロジーが市販車に生かされているのである。

ルノーのホットハッチとしての美点と実力を発揮。

日本仕様のR.S.は「EDC(エフィシェントデュアルクラッチ)」という6段DCTのみの設定で、走り出した瞬間から、多くの新装備の実力を堪能できる。まず、300psエンジンは、スタートからレッドゾーンまで、驚くほどシャープかつスムーズに吹け上がる。さらにシフトレバーを倒してMTモードを選択して、ドライブモードが選択できる「ルノーマルチセンス」で「レースモード」を選択するとレブリミットの7000rpm付近まできっちりと回すこともできる。
 このエンジンとEDCの組み合わせも見事だが、それ以上に際立つのは、ルノーらしいハンドリングである。剛性感の高いボディとしっかりとしたダンピング、さらに60km/hを境に(レースモードでは100km/h)低速では逆位相、高速では同位相に切れる後輪操舵システム「4コントロール」によって、コーナーリングの動きは機敏かつシャープ、しかも安定性が高く、トラクション性能や、グリップの良さが際立ち、コーナーでの立ち上がりは素晴らしい。ブレンボのブレーキや、「R.S.デフ」の効果の大きく、速く、安定感のある質の高い走行性を存分に楽しむことが出来る。荒れた路面に対してもフランス車らしいしなやかさも兼ね備え、ルノーのホットハッチとしての美点と実力を発揮。数あるホットハッチの中で、多くの魅力が際立つ1台と言えよう。