セフィーロ 【1998,1999,2000,2001,2002,2003】
“フルリラックス性能”を謳った第3世代グローバルセダン
グローバル事業革新計画を策定し、大規模なリストラを中心に収益力のある経営体質の確立を目指していた1990年代終盤の日産自動車。そのなかにあって開発現場では、より魅力度の高い新型車の開発に邁進していた。
時代に合った新価値を提供するグローバルカー−−そんなキャラクターを有するセフィーロも、全面改良が企画される。目指したのは、あらゆるシーンで誰もが気持ちよく感じられる快適な新世代セダンの創出。開発テーマには“フルリラックス性能”=見てリラックス(エクステリア)、乗ってリラックス(パッケージング/インテリア)、走ってリラックス(走行性能)、人も地球もリラックス(安全・環境)を掲げ、年齢や性別、個人差を問わずすべての人が使いやすいクルマに仕立てることを目的にユニバーサルデザインの考え方を取り入れる方針を打ち出した。
エクステリアに関しては、セダンらしい安定感のある量感を持ちながら、滑らかでスムーズに見えるスタイリングを考案する。参考にしたのは、知性と安心感が見て取れる“イルカ”のフォルム。新鮮で高級感のあるフロントマスクや流れるようなルーフ造形、スムーズなキャラクターラインと個性的なサイドガードモールが形作る印象的なサイドビュー、トランクリッド後端をはね上げたうえで大型のリアコンビネーションランプを配したリアビューなどで外観を仕立てた。同時に、フロントの左右両端を盛り上げるなどして車両感覚をつかみやすくした“ビジュアルボディ”を構築した。
パッケージングは、ホイールベースを従来型比で50mm拡大(2750mm)しゆとりある室内空間を実現するとともに、リア電動サンシェードおよびポップアップ式センターアームレストといった快適アイテムを装備する。クラストップレベルの540L(VDA方式)という大容量トランクルームやトランクスルー機構(6対4分割可倒式)を設けたこともアピールポイント。スイッチ類の操作性の向上や視認性のいいメーター類の配備、拡大したドア開口部およびドア開度による乗降性の引き上げなども特徴だった。
搭載エンジンはVQ25DD型2495cc・V6DOHCとVQ20DE型1995cc・V6DOHCという新開発の2機種のユニットを設定する。VQ25DD型は直噴機構やCVTC(連続可変バルブタイミングコントロール)、新可変吸気システム、電子制御スワールコントロールバルブなどを組み込み、210ps/27.0kg・mの高出力と優れた燃費性能を実現。VQ20DE型は32ビットマイコンを採用して緻密な空燃比制御を実現するとともにスワールコントロールバルブによるガス流動性の強化などを図って安定した希薄燃焼を成し遂げ、クラストップレベルの低燃費と高出力(160ps/20.0kg・m)を達成した。懸架システムの改良にも抜かりはない。リアサスペンションには従来のマルチリンクビームを進化させた新開発のS.T.C(Super Toe Control)マルチリンクビームを採用。マクファーソンストラットのフロントサスペンションも大幅なセッティング変更を施し、乗り心地と操縦安定性、音振性能の向上を実現した。
3代目となる新型セフィーロは、1998年12月に市場デビューを果たす。グレード展開は従来と同様に上級イメージのエクシモ系とスポーティ仕様のSツーリング系を用意。エクシモ系ではスーパーラッセル地シートや車間距離レーダー、アクティブダンパーサスペンションなどを、Sツーリング系では専用デザインのグリルやリアスポイラー、16インチアルミホイール+215/55R16タイヤ、スポーツチューンドサスペンションなどを設定した。
内外装の質感アップや乗り心地の向上など、従来型よりも車格がワンランク引き上がった3代目セフィーロ。しかし、上級車のカテゴリーでもRV人気が高まっていた当時の市場では、販売台数はそれほど伸びなかった。打開策として開発陣は、魅力度をアップさせるためのマイナーチェンジを2001年1月に実施。フロントグリルを見栄えのする縦桟メッキグリルに変更するとともに、スタイリッシュな大型バンパーや新造形のアルミホイールの採用、内装での木目調パネルの拡大展開および新デザインのステアリングホイールの装着などを行い、高級感と質感の向上を果たした。
ほかにも、お買い得感の高い新グレードの設定やオーテックジャパンによる特別仕様車のリリースなどのテコ入れ策を行ったが、セフィーロの人気が回復することはなかった。結果的に2003年2月には販売を終了。後継を担ったのは、モダニズムの思想を取り入れた新世代モデルのティアナだった。