マークII 【1996,1997,1998,1999,2000,2001】

「セダンの復権」を目指し先進技術を投入した8代目

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セダンをめぐる環境の変化がもたらしたもの

 1996年9月に登場した8代目のマークIIは、「セダン・イノベーション」を掲げた意欲作だった。黎明期からセダンは、パーソナルユースもビジネスユースもスマートにこなすクルマの定番である。アメリカではいまだにセダンの人気が高い。だが日本の場合、1990年前後のバブル期を最後に、セダンはクルマの主役の座から脇役へと移行しつつあった。公共交通機関が発達した首都圏では、クルマは週末のレジャー用。その場合、セダンよりも実用的なミニバンやステーションワゴンが好まれた。またクルマが足代わりである地方では、立派なセダンよりイニシャル&ランニングコストの安い軽自動車やコンパクトカーが選ばれるようになっていたからだ。どんな用途にも無難に適応するが、逆に言うと使い勝手の面で強い個性を持たないセダンは、日本では保守的なユーザーが選ぶクルマというイメージが強くなっていた。

 マークII(そしてチェイサー、クレスタの3兄弟)は、フォーマルなイメージが強いクラウンの弟分という性格であり。オーナードライバーの終着点というポジションを長い歴史の中で築き上げていた。しかしセダンに対する市場環境が変化する中で、従来と同じアプローチではユーザーにそっぽを向かれるのは必然である。8代目はセダン・イノベーションを開発コンセプトとしたのは、そんな時代の流れがあった。

技術によるイノベーションを成し遂げた8代目

 具体的に8代目のマークIIがイノベーションしたポイントは“先進性”だった。エンジンから安全性に至るまで、トヨタの最新技術で構成し世界トップクラスの完成度を実現する。

 スタイリングは、技術の先進性とは裏腹にマークIIらしさを強調する。ボディタイプはサッシュレスドアを採用したピラードハードトップ。横長形状のヘッドランプとエンターグリル、上品なボディカラーなどで伝統を表現した。ボディサイズは4760×1755×1400mmの堂々たる3ナンバーサイズ。旧型よりひと回り大型化され伸びやかな印象を増した。

 エンジンは5種類。このうち先進イメージを鮮明にしたのは、2997ccの2JZ-GE型(220ps)と2491CCの1JZ-GE型(200ps)、そしてそのツインターボ版となる1JZ-GTE型(280ps)の上級3ユニットだった。3種のエンジンは、エンジン回転数やアクセル開度に応じて、吸気バルブの開閉時間を最適に制御するVVT-i(連続可変バルブタイミング機構)を標準装備。エンジンのトルクを大幅に向上させると同時に、燃費の改善と排出ガスのクリーン化を実現していた。

走りと安全は世界トップの高水準

 フットワーク面では、最上級グレードにVSC機構を標準装備した。VSCとは、前後輪がグリップの限界を超えそうになるとセンサーが自動的に感知し、エンジンパワーとブレーキ制御を行うことで横滑りを抑制する先進システムである。ちなみにブレーキは全車ABS機構付きとなり、前後ダブルウィッシュボーン式の足回りも基本的なグリップ能力を高めることで、走りのベース性能を大幅に引き上げていた。

 この他、世界トップレベルの衝突安全性を実現したGOA(衝撃吸収ボディ&高強度キャビン)や、運転席と助手席用に加えてサイド用も標準とした4エアバッグを全車に採用。安全性も新次元に引き上げた。
 各部の先進技術と、伝統の快適性、静粛性を大幅に引き上げた8代目マークIIは、ドライブすると魅力が実感できる高い完成度の持ち主だった。しかし“イノベーション”を掲げた割には、見た目の印象がキープコンセプトと言えた。すでにマークIIのオーナーにはアピールしたが、残念ながらセダン復権の起爆剤にはならなかった。

8代目はマークII初のFFモデルが登場

 8代目マークIIの基本駆動レイアウトは、後輪駆動のFRと、FRベースの4WDがメイン。しかし8代目に1997年4月に加わった“クオリス”のサブネームを名乗るワゴンは、マークII初のエンジン横置きFFレイアウトと、FFベースの4WDという駆動方式の持ち主だった。

 マークIIクオリスは、カムリのワゴン版であるカムリ・グラシアの兄弟車。合理的なFFパッケージングの採用で広い室内空間とラゲッジスペースを誇っていたものの、4ドアハードトップとは100%別系統のクルマだった。パワーユニットは2163ccの直4DOHC(140ps)と、2496ccのV6DOHC(200ps)、2994ccのV6DOHC(210ps)の3本立て。クオリスはハードトップ版と共通イメージのフロントマスクでマークIIらしさを主張したが、熱心なマークIIユーザーからは受け入れられなかったらしい。FFベースのクオリスは1代で終了。次世代のワゴン“ブリット”は、9代目マークIIベースのモデルとなった。ちなみにクオリスの設定は、マークIIをめぐる市場環境の変化を象徴するものといえた。