フロンテ・クーペ 【1971】

時代を越える秀逸スタイルの2シーターKカー



人々がクルマのパーソナルユースに目を向けた70年代のはじめ。
時代を代表する個性的な軽自動車が登場した。
スズキが放ったこのフロンテ・クーペは、
ジウジアーロが手掛けたスタイリングを採用。
2人のための空間を用意したスペシャルティ軽自動車の登場である。
文:川上完
軽自動車のパーソナル化

1958年のスバル360に始まり、1976年にエンジン排気量が拡大されるまでの360cc時代の軽自動車には、今日とは異なる、かなり個性的なクルマが数多く輩出されていた。クーペスタイルの「マツダ R360クーペ(1960年)」、前輪駆動方式を採用した「ホンダ N360(1967年)」、軽自動車では初めてハードトップスタイルを採用した「ダイハツ フェローMAX SS(1971年)」などだ。

そして、個性派軽自動車の最右翼と思われるのが、1971年に登場した「スズキ フロンテ・クーペ」である。それは、日本でのクルマのパーソナル化と言う風潮が、軽自動車にも及んだことの証でもあった。

俊敏な加速性能でクルマ好きを魅了

 シャシーコンポーネンツの基本となったのは、4人乗りセダンのフロンテ71Wだったから、エンジンなどは排気量356ccの水冷2ストローク3気筒で、特別なチューンアップは加えられておらず、37ps/6500rpmの最高出力と4.2kg-m/4500rpmの最大トルクを持つ。乗員が2名だったこともあり、性能的には軽自動車の範疇を大きく越えるもので、とくに加速性能に優れ、0→400m加速は19.47秒と発表されていた。「信号GP」では、最初の200mまでなら、2.0リッター級の乗用車に匹敵する加速を見せたものである。

販売価格は43万3000円とそれほど高価なものではなかったのだが、2人乗りのクーペであることが、実用性を重視する軽自動車のユーザーに受け入れられなかったようで、販売台数は多くはなかった。メーカーでは1972年2月から後部に2個の簡便なシートを設けた2+2仕様も加えることになる。とは言っても、子供用か手回り品を置くスペースに使える程度ではあったが。

 実用的なクルマのスタイリングは、時間の流れや時代とともに古くなってしまうものだが、発売以来30年以上を経ても、今もってフロンテ・クーペのスタイルは魅力と新鮮さを失っていない。それだけ優れたスタイリングデザインだったと言うことなのだ。360cc時代の軽自動車を代表するスペシャルティカーである。

COLUMN
フロンテ・クーペは、新規格で車名を改める
(本文) 1971年に2シーターモデルとして登場したフロンテ・クーペ。デビューから5カ月後の1972年2月に、ユーザーのニーズに応える形で4シーターモデル(2+2)が加わる。その後、4シーターのラインナップを拡大するが、1972年の10月には、2シーターが廃止され、4シーターのみのラインナップに。2シーターは短命に終わった。紆余曲折のラインナップ展開を見せたフロンテ・クーペだが、その後、1976年に生産を中断。1977年に、基本スタイリングを継承しつつ、「セルボ」の名前で復活した。角目のフロンテ・クーペに対し、丸型ヘッドライトでの登場だった。