MAXクオーレ 【1977,1978,1979,1980】

ゆとりを極めた新規格モデル

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MAXクオーレは新規格スタートを
ボディーサイズをそのままにした
フェローMAX550で乗り切ったダイハツが、
ついに放ったニューモデル。
室内のくつろぎと安全性のアップを狙った新型は、
従来の優れたメカニズムを踏襲し、
走りのバランスにも優れた秀作だった。
新規格Kカーの登場

 1976年は軽自動車にとって大きなフシ目となる年であった。同年1月に当時の運輸省と通商産業省が「軽自動車の規格を拡大する保安基準改正」という政令を公布したからだ。簡単に言えば、軽自動車の排気量規制を緩和し、最大で550ccに、またボディーサイズも全長で200mm、全幅で100mmの拡大が可能となった。

エンジン排気量の拡大は度重なる排気ガス浄化規制のために低下したエンジン出力を補うためであり、ボディーサイズの拡大は衝突安全性を向上させるためであった。こうなると、軽自動車は本来の意味である「自動車にあらざる自動車」ではなく、日本独特の立派な小型自動車と言える存在になっていた。

フェローからクオーレにバトンタッチ

 1950年代末に軽三輪トラックの「ダイハツ・ミゼット」で一時代を築き、1966年に「フェロー」で軽乗用車生産へ進出した三輪トラックの老舗メーカーであったダイハツは、スポーティーな高性能モデル(1968年、フェローSS)や軽自動車初のハードトップ仕様(1971年、フェローMAXハードトップ)を設定するなど、軽自動車の分野でも常に新しいモデルへのチャレンジを続けていた。

軽自動車の新規格への対応にあっても、「三菱ミニカ」や「スバル・レックス」に倣い、まったく新しい水冷4ストローク並列2気筒547ccエンジンを開発、1976年5月に「フェローMAX550」の名で発売した。続く1977年7月には、それまで前後バンパーの大型化などで、寸法上大型化されていたボディーを、実質的に新規格のサイズまで拡大し、室内寸法をわずかに大きくした新しいボディーを開発、「MAXクオーレ」として発売した。ダイハツ製の軽自動車のネーミングとして親しまれてきた「フェロー」の名は消滅した。

ちなみに、車名の「フェロー(Fellow)」とは英語で仲間とか同輩という意味であり、「MAX」は究極のとか最高のなどの意味を持つ。また、「クオーレ(Cuore)」は、イタリア語で心とか勇気などの意味を持つ。いずれにしても、このネーミングからも分かるように、ダイハツ製の軽自動車が、20歳代の若者を主要なユーザーと考えていたことは間違いなかった。

室内の快適性を格段にアップ

 新規格のボディーでは、全長で200mm、全幅で100mmと数値的にはわずかなサイズアップではあったが、もともと小さいボディーの軽自動車では、かなりな大型化と言ってよいものだ。「MAXクオーレ」では、ボディーの中心を左右に分割して中央部を拡幅、ホイールベースは360cc時代と変わらないが、室内長は30mm、室内幅は100mm延長している。これだけで、居住性は大幅に向上した。また、ボディー各部の強化や遮音材の多用、そして「フェロー」のデビュー当時から採用されていた水冷エンジンの相乗効果により、軽自動車では最も静かなクルマとなっていた。

ボディーバリエーションに、2ドアと4ドアモデルを設けたのも魅力であった。軽自動車といえども、世のデラックス指向に背を向けることはできず、最豪華仕様である4ドアセダンの「ハイカスタムEX」では、69万7000円の価格となった。軽自動車らしからぬ価格であった。 

COLUMN
心にゆとりを生む豊富な装備も魅力に
MAXクオーレは、フェローMAX550同様、4ドアと2ドアを用意(ハードトップはフェローMAX550登場時に消滅)。MAXクオーレの4ドアはハイカスタムEXを筆頭に5グレードをラインアップし、2ドアはカスタムEXをトップに3タイプを設定してデビューした。装備の充実ぶりもMAXクオーレの特徴のひとつである。なかでもハイカスタムEXやカスタムEXといった「EX仕様」は、高級内装を奢ったモデル。肌触りのいいフルニットのシート地や、フロアに引き詰めたカーペットをはじめ、3本スポークステアリング、木目パネル、フルドアトリム、さらに間欠ワイパーも装備し、上級感をひときわ演出した。