MPV 【1991,1992,1993,1994,1995,1996,1997,1998,1999】

広く快適なキャビンを持つミニバンの先駆

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アメリカンミニバンを参考に誕生

 マツダがMPVと言う名のミニバンを日本市場に売り出したのは1990年1月のことだった。ボックス型のボディに7~8人乗車と多くのラゲッジを積み込むことができる多用途車としてのミニバンは、1983年にアメリカで発売されたクライスラー系のダッジ キャラバン/プリマス ボイジャーが始まりである。

 子供たちの通学での送迎からスーパーマーケットへの買い物、あるいは週末のレジャー用など、一般家庭におけるほとんどのシチュエーションに使うことのできる万能車として、ミニバンはデビューするやたちまち高い人気を得た。そして深刻な経営危機に瀕していたクライスラーを見事に立ち直らせる。そのキャラバンやボイジャーをきっかけにして、日本はもとより、世界中に同工異曲の「ミニバン」が大挙して出現することとなった。そのひとつがマツダのMPVだった。

3リッターのV6エンジン搭載

 車名のMPVは、多用途車を意味する英語の「Multi Purpose Vehicle」のイニシャルを採ったもの。いかにもマツダらしい、きわめて直接的なネーミングである。ボディサイズは大きく、ホイールベースは2805㎜、標準モデルの全長は4465㎜、全幅1825㎜、全高1745㎜と3ナンバーサイズとなっている。

 日本の道路では、高速道路や一級国道などではあまり問題ではなかったが、狭い路地や田舎道では取り回しに苦労させられるほどであった。これは、もともとアメリカでの販売を主に想定していたことによるもので、全体のサイズとしてはプリマス ボイジャーやフォード エアロスターなど、同時代のアメリカ製ミニバンにほぼ等しい。あまり奇をてらっていない、クリーンかつシンプルなスタイリングは実用性を重視した合理的なものとなっている。シート配列はデビュー当初は3列7人乗り。後に8人乗り仕様となった。マツダでは、MPVを「ミニバン」とは呼ばず、新しいカテゴリーの多目的高級サルーンと位置付けていた。そのため、シートを革張りにした高級車仕様でデビューを果たしていた。

 駆動方式はフロント縦置きエンジンによる後2輪駆動(FR)で4輪駆動の設定はデビュー時にはなかった。搭載されるエンジンは当初は排気量2954㏄のV型6気筒SOHC(JE型、出力155ps/5000rpm)のみの設定であった。トランスミッションは4速オートマチックでコラムシフト。これは、前後席でのウォークスルーを可能とするための工夫だった。サスペンションは前がストラット/コイルスプリング、後が5リンク/コイルスプリングとなる。ブレーキは前がベンチレーテッドディスク、後ろがドラムでサーボ機構を持つ。車重は1700㎏を超え、決して軽くはない。乗り心地はソフトな乗り心地重視の設定で、静粛性にも優れていた。

新ブランド名を冠して熟成

 1991年10月にマイナーチェンジされるが、その時に車名を販売店系列の名を採ってアンフィニ(efini)MPVと変更している。これまでの本革シートに加え、ファブリックシートの仕様も用意された。次の1995年のマイナーチェンジは多岐に渡り、フロントバンパーの延長(全長200mm延長)や、フロントグリルやヘッドライトの変更を行い、フロントマスクをリファイン。この時、2494㏄、直列4気筒SOHC(G5-E型、120ps)エンジンと、ディーゼルモデルの投入が行われている。2500ディーゼルターボのパワースペックは、最高出力125ps/4000rpm、最大トルク30.0kgm/2000rpm。また、走行中でも自由に2WD/4WDが切り替えられるスーパーデュアル4WDも設定した。

 初代MPVは、その後も改良を加えながら歴史を刻み、1999年6月まで存続。異例に長いライフスパンを保った。本格的なミニバンとして完成されたモデルであり、アメリカ市場でも堅実な人気を獲得した。