ネイキッド 【1999,2000,2001,2002,2003,2004】

自由な使い勝手を実現した道具感覚Kカー

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プロトタイプを1997年の東京モーターショーに出品

 1999年11月にデビューしたネイキッドは、自分のライフスタイルに合わせ自由にアレンジできる新発想の軽自動車だった。ダイハツは1997年の東京モーターショーに同名のプロトタイプを出品していた。開発テーマは「大人の遊び道具」といったところ。スタイリングはネイキッド(NAKED=裸の状態)、のネーミングどおりシンプルかつ飾り気のない機能主義でまとめられていた。

 ポイントはクルマを道具として捉え、オーナーが使いやすいようにさまざまなアレンジができたこと。シートは取り外し自在で、外すと大きな荷物が積めた。また室内各所には、棚などを取り付けやすいようにフックが装着され、釣り竿やアウトドアグッズなどの固定に便利なように配慮されていた。

 ネイキッドの主人公はあくまでオーナー自身。最終的にオーナーが自分の使いやすいように仕上げるクルマだった。1990年代半ばからファミリーカーとして多人数乗車が可能で装備が充実し、なにをするにも便利なミニバンがもてはやされていた。ネイキッドはいわばその対極。趣味人のパーソナルカーという点が新しかった。しかも、女性ユーザーをメインターゲットにした軽自動車が多かった中で、男性、それも若者層からベテランまで、比較的幅広い年齢層を狙っていたのも異色だった。コンセプトカーのネイキッドはモーターショーで大きな反響を呼ぶ。それがメーカーの自信を後押しし、正式市販化が決定した。

市販モデルはコンセプトカーのアイデアを100%踏襲

 市販版のネイキッドは、ほぼコンセプトカーと同様の仕立てだった。スタイリングはもちろん、室内細部の仕様まで、100%コンセプトカーを踏襲していた。
 ラインアップはシンプルで、659ccの自然吸気エンジン(58ps)搭載した標準仕様と、同659ccのターボエンジン(64ps)を積むターボ仕様の2グレードを基本とし、それぞれにFFと4WDを設定していた。トランスミッションは全車で5速マニュアルと4速オートマチックが選べた。装備面はパワーステ、パワーウィンドウ、エアコンが標準装備。ネイキッドというネーミングながら決してシンプルな“裸”の状態ではなく軽自動車としては豪華だった。しかもGパッケージ仕様を選択するとデュアルSRSエアバッグ、プライバシーガラス、助手席+後席シートバックボード、キーレスエントリー、後席ヘッドレスト、リアワイパーなどがプラスされ、さらに装備が充実した。

 丸型ヘッドランプを採用したスタイリングは直線基調。ドアのヒンジをあえて露出させるなど機能主義的にまとめていた。ユニークなのはバンパーを前後とも3分割構造とし、簡単に取り外しができるように工夫していた点だった。万が一のアクシデントの時でもパーツを用意さえすればオーナー自身が交換できたのだ。ボディサイズは全長3395mm、全幅1475mm、全高1550mm。機能性を重視しながら全高を一般的な立体駐車場にも収納できるサイズに抑えていた。

取り外し自在の後席で多彩な使い勝手を実現

 室内は、ピラーやドアトリムなどにあえてボディ色を露出させたシンプルな構成。コンセプトカーのように後席は折り畳むだけでなく簡単操作で取り外すことができた。後席を取り外すと26inの自転車がそのまま積み込めた。またアウトドアユースを意識してシートには撥水加工、フロアマット、荷室マットは防水処理が施され、ルーフ部などには、これもコンセプトカーと同様にオーナーの好みでバーなどを装着できるフック(ナットを埋め込んだ穴)が用意されていた。

 ユニークだったのは室内カラーである。標準色は国産車には珍しいグリーン。シートだけでなくドアトリムやインパネ、ステアリングのセンター部までグリーンで統一していた。無難なブラックカラーも用意されていたが、グリーンの設定は、ネイキッドが“遊びのクルマ”であることを表現していた。

 メーカーの大きな期待を担ってデビューしたネイキッド。しかし市場の反応はさほど芳しくなかった。興味を示す人は多かったものの、なかなか購入にまで至らなかったのだ。理由はいろいろ考えられたが、コンセプトが新しすぎたのかもしれない。軽自動車が“遊びのベース基地”として意識され、乗用車の快適性と、SUVの多様性を持つクルマ、すなわちネイキッドと同様の考えで設計されたスズキ・ハスラーがヒットするのは2014年。ネイキッドが登場した1999年時点では、ネイキッドを使いこなせるほどユーザーのライフスタイルは成熟していなかったのである。

スペアタイヤの配置にまでこだわって使い勝手を重視

 ネイキッドは、細部までユーザーの立場に立って使い勝手を煮詰めたまじめなクルマだった。そのひとつがスペアタイヤの配置。ネイキッドは通常の床下配置ではなく、荷室右側に立て掛けて収納していた。それは490mmという低い荷室地上高を実現するためだった。荷室地上高が低いためネイキッドは重量物でも積み込みが容易。さらに荷室高そのものが1040mmと十分だったため自転車が楽に積み込めた。また取り外し自在の後席は、ディーラーオプションの専用スタンドを装着するとアウトドア用の椅子に変身した。金属部分をあえて露出させた室内も開発者のこだわりポイント。マグネットで各種の小物を動かないように固定するための配慮だった。ネイキッドの各種アイデアは、開発陣に本物の“遊び趣味人”が居ることを連想させた。