クラウン・エステート 【1999,2000,2001,2002,2003,20042005,2006,2007】
機能と快適性を高次元で融合したオールラウンドワゴン
クラウン・エステートは、11代目クラウンをベースにしたステーションワゴンである。デビューは1999年12月。クラウンのワゴンは1980年代以降、セダン系とは別のモデルライフを歩んでおり、エステートは1987年の発売から12年ものモデルライフを刻んでいた先代S130型系のモデルチェンジ版だった。
良質なセダンをベースにしたステーションワゴンは、実用車として最良の1台といえる。セダンならではの優れた走行性能、居住性をそのままに、アレンジ自在の広いラゲッジスペースをプラスしているからだ。フォーマルからビジネス、そしてレジャーユースまで、幅広いライフシーンに寄り添うマルチパーパスな存在である。中でも日本有数の高級車であるクラウンのステーションワゴンともなれば、オーナーに与える満足感は格別。11代目クラウンは、ボディをモノコック構造に刷新し、走りの基本ポテンシャルを飛躍的に高め、さらに広い室内空間を実現していたこともあり、機能面でもエステートの完成度が高かった。
エステートのラインアップは、セダン系と同様にジェントル指向のロイヤルと、スポーティ指向アスリートの2シリーズ構成。クラウンといえども、エステートは個人ユーザーが主流という判断から、アスリート系のラインアップを充実していたのが特徴だった。アスリート系は2997ccの2JZ-FSE型V6DOHC24Vエンジン(220ps)を積む最上級グレードのアスリートGを筆頭に、走りを重視した2491ccの1JZ-GTE型V6DOHC24Vツインターボ(280ps)を搭載したアスリートV、そして2491ccの1JZ-FE型自然吸気V6DOHC24V(200ps)仕様の標準アスリート、そしてその4WDモデルとなるアスリートFourの4グレード構成。対してロイヤル系は、ロイヤルサルーンの1グレード構成で、エンジンは2997ccの2JZ-FSE型(220ps)と2491ccの1JZ-FE型(200ps)が選べた。トランスミッションは全車が電子制御タイプのAT。グレードに応じて5速と4速タイプを組み合わせていた。
ボディサイズは全長×全幅×全高4835×1765×1510mm(アスリートV)。ホイールベースはセダンと共通の2780mm。足回りは前後ダブルウィッシュボーン式の4輪独立システムを組み込み、アスリート系は適度に固めのスポーツサス仕様となっていた。ちなみにアスリート系は、足回り以外にも専用形状ヘッドライトやフロントグリルなどで独自の個性をアピールした。
クラウン・エステートは、マークIIクオリス、レガシィ・ツーリングワゴンの上位に位置する最上級ステーションワゴンであり、国産車ではライバル不在。欧州車のメルセデス・ベンツEクラス・ワゴンや、BMW5シリーズ・ツーリングなどと肩を並べるプレミアムモデルだった。欧州のライバルと比較すると、静粛性や日常域の乗り心地は、クラウン・エステートの洗練度が高く、ハンドリングのしっかり感や超高速域のスタビリティでは欧州勢に軍配が上がった。しかしアスリート系、とくにアスリートVの走りのポテンシャルは目を見張るものがあり、スポーツ派のドライバーをも満足させるレベルに達していた。
肝心のラゲッジスペースは広く、アレンジ自在。使い勝手は欧州車と同等。室内各部の丁寧な仕上げと、長めの全長を生かした荷室長の余裕がクラウン・エステートの魅力だった。
クラウン・エステートは、販売台数こそさほど多くなかったものの、独自のマーケットを構築。根強い信奉者の支持を集める。比較的小規模ながらモデルの充実や改良も実施された。2000年8月にはシンプル装備の廉価版アスリートEを追加。2001年8月のマイナーチェンジでラインアップをアスリート系に統一する。そしてセダン系がモデルチェンジして12代目に移行した後もそのまま生産を継続。2007年6月まで販売された。後継車は、様々な事情で未設定。それだけにクラウン・エステートの人気は中古車になっても高く、またユーザーが長期間保有する満足度の高いモデルとして認知されている。