昭和とクルマ13 【1979,1980,1981,1982】
“デートカー”として人気を博したスペシャルティカーの時代
世界屈指の厳しさといわれた排出ガス規制を乗り超えた日本の自動車メーカーは、目前に迫った1980年代に向けて新型車の開発に傾注するようになる。なかでも重視したのがブランドのイメージを高めるカテゴリー、具体的にはスペシャルティカーの企画を積極的に推し進めた。
1979年3月には第3世代となる日産シルビアが、兄弟車のガゼールとともに市場デビューを果たす。スタイリングに関しては、低いノーズラインに大きく傾斜したフロントウィンドウ、オペラウィンドウ(ハードトップ)およびスポーティテール(ハッチバック)などを採用し、スペシャルティカーならではのファッショナブル性とスポーティさを強調。インテリアでは居住空間を広げたうえで、ドライブコンピュータやトータルイルミネーションシステムといった先進機構を鋭意取り入れた。搭載エンジンには新開発のZ20E型1952cc直列4気筒OHC(120ps)を筆頭に、Z18E型1770cc直列4気筒OHC(115ps)、Z18型1770cc直列4気筒OHC(105ps)を用意。足回りには改良版の前マクファーソンストラット/後4リンクをセットした。
斬新なスタイルと先進的な装備を満載して登場したS110型系のシルビアとガゼールは、たちまちメインユーザーである若者層の大注目を集め、カテゴリーをリードする人気モデルに発展する。とくにターボモデル(Z18ET型。1981年5月デビュー)や4バルブDOHC仕様(FJ20E型。1982年4月デビュー)が追加されると、スペシャルティカー市場での人気は盤石なものとなった。
勢いに乗る日産は、1980年9月になると新ジャンルのビッグスペシャルティを発売する。車名は動物の“豹”の意味を持つレパードと冠した。レパード・シリーズは日産系列(レパード)とチェリー店系列(レパードTR-X)のディーラー網で販売。ボディタイプは2ドアハードトップに加えて、このカテゴリーでは珍しい4ドアハードトップをラインアップした。
スタイリングはシャープな直線を強調したダイナミックなフォルムで構成。当時の国産車としては最大のスラント角26.5度をもつノーズやバンパー一体型のエアダムスカートなどを採用し、Cd値(空気抵抗係数)0.37のエアロフォルムを実現した。内装については従来モデルにはなかったスペシャルティ感の創出を目指し、世界初の電子メーターやドライブコンピュータといったハイテクを積極的に導入する。肝心の走りの技術に関しては、ゼロスクラブの4輪独立懸架サスペンションや大径マスターバック付き4輪ディスクブレーキなどを採用して高性能化を達成。搭載エンジンにはECCSを組み込んだL28E型2753cc直列6気筒OHC(145ps)を筆頭に、L20E型1998cc直列6気筒OHC(125ps)とZ18型1770cc直列4気筒OHC(105ps)の計3機種を設定した。
1981年2月になると、トヨタ自動車が満を持してビッグスペシャルティを市場に放つ。英語で“最上級グライダー”を意味する車名を冠したソアラだ。キャッチフレーズに“スーパーグランツーリスモ”と掲げたソアラは、当時の先進機構を満載していた。4輪独立懸架の足回りを採用したシャシーは新設計。搭載エンジンには新開発の5M-GEU型2759cc直列6気筒DOHC(170ps)と改良版の1G-EU型1988cc直列6気筒OHC(125ps)を設定する。内外装についてもトピックが目白押し。2ドアノッチバックのスタイリングは、フロントおよびリアの台形フォルムとノーズからトランクまでストレートに伸びたサイドラインを基本に流麗で端正なルックスを構築し、Cd値もクラス最上レベルの0.36に達した。一方、上質な素材で覆われたインテリアには、最新のエレクトロニクス技術が積極的に採用される。具体的には、計器盤から指針をなくしたエレクトロニックディスプレイメーターや省エネ機構を内蔵したマイコン式オートエアコンなどの先進機構が豊富に盛り込まれていた。
トヨタの新世代高級パーソナルカーのソアラは、やがて“デートカー”の筆頭格に位置づけられるようになり、市場での注目度を大いに高めていく。この上昇気流をさらにアップさせようと、開発陣は積極的にソアラの改良を実施。エンジンではM-TEU型1988cc直列6気筒OHCターボ(145ps)や1G-GEU型1988cc直列6気筒DOHC24V(160ps)、6M-GEU型2954cc直列6気筒DOHC(190ps)などを設定していった。
1982年11月になると、デートカーとしてソアラと人気を二分することになる2代目のホンダ・プレリュードが登場する。スタイリングは従来型よりさらにワイド&ローを強調。ホンダ初のリトラクタブル式ヘッドライトや極端に低いフロントノーズはデザイン部門がこだわった部分で、エクステリア全体からスペシャルティ感を醸し出すように演出した。インテリアもスペシャルティ感を重視。フルバケットシートやカラーフィルター式液晶デジタルメーターなどの新規アイテムを精力的に採用する。パワートレインには新設計のES型1829cc直列4気筒OHC12V・CVCCエンジン(120〜125ps)を搭載。サスペンションには当時のFF車としては異例の前ダブルウィッシュボーン式を導入した。
デビュー直後から高い人気を獲得した2代目プレリュードは、1985年6月になると高性能モデルの2.0Siを追加する。搭載エンジンは新開発のB20A型1958cc直列4気筒DOHC16Vユニットで、最高出力は2l 自然吸気トップレベルの160psを発生。よりスタイリッシュになったルックスと相まって、プレリュードのスペシャル度をいっそう引き上げていた。