ホンダデザイン9 【1995,1996,1997,1998】
個性明確なRVムーバー・シリーズの展開
1994年10月に発売した“クリエイティブムーバー”(生活創造車)と称するオデッセイの大ヒットによって、RV市場における販売シェアで上昇気流に乗った本田技研工業。その勢いを確かなものにしようと、同社は矢継ぎ早にホンダ流のRV(レクリエーショナル・ビークル)を開発していった。
1995年10月には、クリエイティブムーバーの第2弾となるライト級4WDモデルの「CR-V」を発売する。CR-Vは乗用車感覚の実現を重要項目として掲げ、そのうえでセダンと同等の快適性、ワゴンのユーティリティ空間、クロカンの機動性、機能と安心の新スタイリングという4つのテーマを具現化していた。
スタイリングは、日々の生活シーンからスポーツ&アウトドアシーンまで、あらゆる場所で映える外観を目指してデザインを創出。具体的には、幅広い行動範囲を有する“トレッキングシューズ”をイメージして全体のフォルムを構築した。
クリエイティブムーバーの第3弾は、小型ミニバンの「ステップワゴン」となって1996年5月に市場デビューを果たす。ソフトとハードの両面から“生活性能”を追求したステップワゴンは、当時のミニバンで主流だったキャブオーバースタイルの後輪駆動を見直し、1.5BOXスタイルのFFレイアウトを導入していた。
スタイリングは5ナンバー規格の箱型フォルムを基本とし、ここに大型ルーフガーニッシュから大型リアコンビネーションランプ、リアバンパー、ボディサイド、フロントバンパーへぐるりとつながった、一体感あふれるサラウンド・ボディプロテクターデザインを取り入れる。また、バンパー四隅をラウンドさせて実用回転半径を縮小したり、ガラス面積を拡大して有効な視界を確保したりと、使い勝手の面でも大いに工夫を凝らした。
キャビン空間については、低床フロアと高いルーフなどでクラス最大級の室内スペースを実現する。さらに、ファニチャー感覚の内装設計や明るくて楽しいインテリアファブリック仕様、フロントシートから3列目シートまでスムーズに移動できるウォークスルー性能、2列目シートの回転対座を含めた多彩なシートアレンジなどを採用し、快適性と利便性に富むインテリアスペースを創出した。
ホンダは1998年になると、クリエイティブ・ブーバーに続くRVシリーズの“Jムーバー”を創出する。第1弾モデルは同年4月にデビューしたスモールワゴンの「キャパ」。そして第2弾が、同年9月に登場した新ジャンルカーを謳う「HR-V」だった。
“Small is Smart”を基本コンセプトに掲げたHR-Vは、車両デザインとして「ワゴンでもクロカンでもない、ひと目でわかる斬新なスタイリング」を創出する。キーワードは“アーバンクール”。ボディ高を抑えながら地上高を高くとり、そのうえで大径タイヤを組み合わせたジェットフィール感覚のハイライダースタイルを構築した。インテリアは、スポーティ感に重きを置いたアレンジを実施する。具体的には、上下2色に分けたツートンインパネとツインタイプのメーターバイザー、ブルーを基調としたメーター&空調パネル、ホールド性の高いフロントシートなどを導入した。
ホンダのムーバー・シリーズは、1998年になって軽自動車カテゴリーにもおよぶ。呼称は“Kムーバー”。その主役の1台となったのが、同年10月にデビューした「Z」だった。
街中からアウトドアまでをイメージした車両デザインを採用し、プラットフォームに新開発のUM-4(Underfloor Midship 4WD)を取り入れたZは、個性的で斬新なスタイリングを特徴とする。基本パッケージはスーパーロングキャビンに全方位視界、前後重量配分50:50、フラットフロアなどで構築。そのうえで、プレスラインやエアダムを組み込んだサイドビュー、グリップ式のドアハンドル、別体色の前後バンパー、大型マルチリフレクターヘッドライト、15インチ大径タイヤ等を採用して存在感のあるルックスに仕立てていた。