ストリート 【1988,1989,1990,1991,1992,1993,1994,1995,1996,1997,1998,1999】

スペース効率にこだわった軽ボクシーワゴン

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高効率3気筒ユニット搭載。快適ワゴンの先駆け

 寸法制限のある軽自動車にとって、ボックス形状モデルは、人がゆったりと乗れ、しかも荷物も積める最もスペース効率に優れたマルチユースフルな存在といえる。この点に着目し、いち早く“快適ワゴン”として商品化されたのが1988年5月にデビューしたホンダ・ストリートだった。

 ホンダ・ストリートは、軽商用車シリーズ、アクティをベースにしており、厳密には商用車登録だった。しかし内外装ともに実質的には乗用ワゴンとして仕上げられていた。スタイリングはまさに四角四面のボクシー形状。ボディサイズは全長×全幅×全高3195×1395×1870mm(X)。全長と全幅は当時の軽自動車規格ぎりぎり、全高を高めることで開放的で利便性の高い室内空間を生み出していた。

 バリエーションは標準仕様のLと、上級版のXの2グレード構成。駆動方式は2WDと、“リアルタイム4WD”と称したビスカスカップリング方式の4WDが選べた。ちなみにビスカスカップリング式4WDの設定は軽商用車としては初だった。エンジンは1気筒当たり4バルブ形式の高効率タイプを搭載。547ccの直列3気筒OHCで34ps/5500rpm、4.5kg・m/5000rpmのパワー/トルクを発揮した。トランスミッションは2WDが5速MTと3速ATの2種、4WDは5速MTの1種のみだった。

圧倒的に広い室内空間。使い勝手も抜群

 ストリートの特徴は、内外装ともに乗用車イメージで仕上げた点だった。外装は、アクティの丸型ヘッドランプに対し、専用角型ヘッドランプを採用。上級グレードではバンパーがボディ同色タイプとなり、ルーフ部にはツインガラスサンルーフを標準装備していた。

 内装では、上質なソフトウィーブ素材のシートを採用。前後席ともにリクライニング機構を備え、シートバックを倒すとフラットなフリー空間が出現した。しかも分割可倒式の後席を折り畳むと荷室長×幅×高1730×1185×1180mmの広大なラゲッジスペースを作り出せた。広いラゲッジスペースは自転車やキャンピング用品など遊び道具をふんだんに積み込めるだけでなく、アウトドアシーンでは、ベース基地としてユーザーのアイデアしだいで自由に使えた。リアドアはスライド形式。リアゲートともども開口部がワイドなのはユーティリティ面で大きなアドバンテージだった。

優れた静粛性。高速クルージングも楽々の実力

 ストリートは、ホンダ車らしく高回転域までスムーズに吹き上がるエンジンのおかげで、スペック以上によく走った。絶対的な加速性能は大したことはなかったが、通常の交通の流れに乗るのは楽々。高速道路でも当時の軽自動車の制限速度だった80km/hでクルージングできた。しかもストリートはライバルと比較して圧倒的に静粛性に優れていた。ウレタン封入二重フロアなど各部の遮音対策が入念だったこともあるが、エンジンをリアタイヤ前方に配置する独自のアンダーフロア・ミッドシップ形式が高い静粛性の源泉。騒音発生源であるエンジンがドライバーから遠く、しかもノイズが後方に流れ去る効果で結果的に静かな室内を生み出したのだ。2WD・5速MT車の80km/h走行時の騒音レベルは73dB。この数値は長時間走行でもパッセンジャーをうるさいと感じさせないレベルだった。

 ストリートは最小回転半径が3.8mと小回りが利き、ATも設定されていたことからイージードライブと言う点でも優れていた。女性ユーザーにとっても使い勝手に優れたクルマといえた。ただし事故などに遭遇した場合、前方のクラッシャブルゾーンが実質的にないため、パッセンジャーが怪我をする危険性が高かったのは確か。フロントブレーキに制動能力が高いディスク式を装備していたものの、運転には相応の配慮が必要だった。とはいえ、そんな安全面の注意点さえ承知していれば、便利このうえないクルマだった。軽自動車は2000年代以降、スペース効率に優れたハイトワゴンが販売の主流になる。 ストリートはその流れのパイオニア。生活のパートナーである軽自動車にこそ、スペースのゆとりと、自在な使い勝手が大切であることを教えてくれる存在だった。