ROLLS-ROYCE GHOST 【2020】

ロールス・ロイス史上最も技術的に進歩したモデル

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


中川 和昌
ロールス・ロイス、ベストセラー

2003年にBMWグループのロールス・ロイス・モーターカーズとしてスタートしてファントムの生産を開始、「エクステンデッド ホイールベース」、「ドロップヘッド クーペ」、「クーペ」といった派生モデルでラインナップを拡大してきたが、2009年に新型のラグジュアリーセダン、初代ゴーストが登場する。創業時の1906年から1925年にかけて製造された高級乗用車、シルバーゴーストのネイミングを継承した初代ゴーストは、幽霊の名にふさわしい静粛性の高さと滑らかな走行性、そして別世界の存在であることを明確にしてロールス・ロイスらしさを備え、ファントムよりコンパクトなボディサイズと、ドライバーズカーとしてのシンプルなデザインやシックでモダンな雰囲気が特徴的で、5年目の2014年のマイナーチェンジ、2020年9月にフルモデルチェンジした。この10年間にわたる生産期間で、ゴーストは、ロールス・ロイスの116年の歴史上、最も多く販売されたベストセラーとなった。さらに、派生モデルとして2013年に2ドアクーペのレイス、2015年にドロップヘッドクーペのドーンも送り出している。

すべてを一新した新型ゴースト。

その2代目として、2020年9月1日に発表された新型ゴーストは、初代ゴーストからそのまま受け継いだコンポーネンツは、スピリット・オブ・エクスタシーのマスコットとドアに収納されるドア・アンブレラのみで、デザインやメカニズムなどすべてを新開発、製作し、ロールス・ロイス史上最も技術的に進歩したモデルと言われている。
 まずボディサイズは、全長5546mm×全幅2148mm×全高1571mm、ホイールベースは3295mmで、先代に対して全長が89mm、全幅が30mm拡大されるが、ドライバーズカーとしての基本は継承している。また、これまでと同様、全長5715mmのエクステンデッドも用意され、ショーファードリブンとしての要素も備えている。
プラットフォームはファントムやカリナンと同様、ロールス・ロイス独自のアルミスペースフレーム・アーキテクチャーを採用して、50:50の前後重量配分を実現するため、フロントのサスペンション・マウント・アセンブリーをボディのより前方に配置されV12エンジンをフロントアクスル後方に搭載している。

ファントムやカリナンと同様のロールス・ロイス専用の排気量6.75リッターのV型12気筒エンジン

パワーユニットは、従来モデルとは異なり、ファントムやカリナンと同様のロールス・ロイス専用の排気量6.75リッターのV型12気筒ガソリンエンジンを採用。2基のターボの過給により571PS(420kW)/5000rpmの最高出力と850Nm(86.7kgf・m)の最大トルクを発生する。さらに駆動システムにはFRだった従来モデルとは異なり、四輪駆動システムと四輪操舵システムを採用している。
 サスペンションも新設計で、フロントがダブルウィッシュボーンで、上部に世界初のアッパー・ウィッシュボーン・ダンパーを装着、リアアクスルは5リンク式で、後輪操舵システムを採用、「プラナーサスペンションシステム」と呼ばれる新機構によって快適な乗り心地や優れた運動性能を実現。カメラで前方の道路を読み取って減衰力を調整する可変式電子制御ショックアブソーバーと、セルフレベリング式の大容量エアストラットにより、「マジックカーペットライド」(魔法の絨毯のような乗り心地)と呼ばれる快適な乗り心地がさらに進化して、高いシャシー性能を実現。トランスミッションにはGPSデータによって前方のコーナーを検出し、最適なギアを選択する「サテライトエイデッド・トランスミッションシステム」が採用されている。

モダンなシルエット

こうした大きな進化とともに、目を引くのは新しいスタイリングだ。先代はファントムの流れを汲み段差が強調されるフロントフードやトランクが特徴的だったが、新型ゴーストは滑らかな仕上がりで、フロントエンドもやや丸くモダンな雰囲気となり、ラジエターグリルには20個のLEDが配され、グリル内のクロームバーを柔らかに照らす。さらにルーフラインはトランクリッドにかけて躍動感がさりげなく強調され、全体的にモダンなシルエットが魅力的である。もちろん手作業で溶接されたアルミボディ構造も特徴的で、上級モデルのファントムと同様の手法を採用している。

ゴージャスなインテリア

インテリアは、デザインや装備の配置など、ロールス・ロイスらしさが際立ち、乗った途端に実感できる。ドライバーシートに収まると、上品でありながら、ダッシュボードやインナートリムの装備や配置がシンプルな印象で、コンセプトのひとつであるポスト・オピュエンス(脱贅沢)を感じることができる。リアシートも上質なレザーで仕立てられ、スペースやポジションは、ファントムやエクステンデッドほどではないが、ショーファードリブンらしい雰囲気も備えている。
センターコンソールの奥に設置された新開発のシャンパンクーラーも魅力的で、ソムリエと相談することで、ノンヴィンテージのシャンパンやワインは6度、ヴィンテージの場合は11度に温度設定できるようにしている。人気オプションのひとつであるスターライトヘッドライナーは、相変わらず満天の星空を再現して、自分の星座にカスタマイズすることも可能なほか、流れ星をつくることもできる。さらに「GHOST」のロゴが輝く新開発のイルミネーテッド・フェイシアも魅力的で、9万個を超えるドットがレーザーエッチング加工され、スターライトヘッドライナーのように輝き、スピリット・オブ・エクスタシーやパルテノン・グリルのようにロールス・ロイスのシンボルのひとつになった。

ファントムの流れを汲むセルフ・クロージング・ドア

4ドアモデルはファントムの流れを汲むセルフ・クロージング・ドアを装備され、Cピラーのスイッチで操作できるが、新型ゴーストは、さらに進化してドアを開ける際、パワーアシストが作動する。外側から閉める際もドアハンドルにあるボタンを押すだけで、自動的に閉まり、各ドアに取り付けられたセンサーによって、坂道など停車条件が変化しても、ドアは常に同じ速度で開閉する。

ロールス・ロイスらしいゴージャスかつシックなインテリア

試乗車のボディカラーは嵐を意味するテンペスト・グレーで、シックなグレーがとてもいい。そのドアを開け、ドライバーズシートに収まって、まず感じるのは、言うまでもなくロールス・ロイスらしいゴージャスかつシックな雰囲気で、グレース・ホワイトのレザーでまとめられ、サイヴァロ・グレーのウッドパネルやダッシュの一部が組み合わせられる。さらにシートバックの一部やパイピング、RRの刺繍などはテイラード・パープルで仕上げられ、カーペットもパープルで、とても気持ちが良く、イルミネーテッド・ファイシアとスターライトヘッドライナーも際立ち、ロールス・ロイスの極上さを強く感じる。

ドライバーズカーと言うにふさわしいキャラクターが際立つ

乗り心地の良さも格別で、前方の路面変化をカメラでスキャンして事前に電子制御ダンパーとエアサスペンションを最適化し、新採用の「プラナーサスペンションシステム」の効果は大きく、うねりがある路面ではゆったりと滑らかな上下動終始するし、路面の不整は、丁寧にショックを吸収して、まさに「マジックカーペットライド」(魔法の絨毯のような乗り心地)を強く感じさせてくれる。さらにロールス・ロイスとしてはファントムよりはコンパクトだが、一般的な大型サルーンでありながら、後輪操舵や4WDといった新しい電制デバイスの効果によって、3mを越えるホイールベースとは思えないほど回答性が良く、サイズを感じることなくスポーティに走ることができる。まさにドライバーズカーと言うにふさわしいキャラクターが際立つのである。
 独特で上質な手触りのレザーを使用してたっぷりとしたクッションを持つシートの座り心地の良さもロールス・ロイスらしい。ぶ厚いテイラード・パープルのフロアカーペットも、ラグジュアリー性と伝統を強く感じさせてくれる。スウィッチ類も伝統的なデザインを意識して、プッシュ式、ロータリー式、さらに上下に動かすトグル式などが組み合わせられ、メーター類もクラシカルな雰囲気を持ち、伝統的な持ち味がモダンに仕立てられ、走らせていると至高の喜びと、ロールス・ロイスならでは贅沢な世界観を強く感じる。