トヨタデザイン4 【1966,1967,1968】

個性を一段と明確にした1960年代後半のトヨタ車



セミファストバック・スタイルを採用した新世代の大衆車

 パブリカや2000GTなど、多くのカテゴリーで斬新なデザインを世に送り出した1960年代中盤のトヨタ自動車工業。市場調査を重視したうえで、先進的で信頼性の高いクルマの開発を目指すその積極姿勢は、1960年代後半に入るといっそうの輝きを見せるようになった。

 まず、渾身の新世代大衆車を1966年10月に発表(販売は同年11月)する。車名は「カローラ」(E10型系)。キャッチフレーズには、サニー1000などを意識した“+100ccの余裕”を謳った。
 トヨタ自工の新しい大衆車は、「大衆車は合理性だけでは人気が出ない。内外装やスペックの見栄えがよく、ユーザーの所有欲を満たす1台でなければならない」という経験則を生かして、開発が進められた。スタイリングに関しては世界の乗用車デザインの最新流行を採り入れ、スポーティなセミファストバックを導入する。さらに、見栄えのするフロントグリルやメッキパーツを積極的に盛り込んだ。エンジンは企画当初、1000ccクラスを想定していたが、開発中に「日産の新しい大衆車は1000ccのエンジン排気量を採用する」という情報が入り、差別化を図るために急遽1100ccクラス(K型1077cc直4OHV)に変更した。

 内外装の見栄えがよく、しかも優れた総合性能を持つカローラは、たちまち市場で大人気を博す。発売月の11月には、最大の競合車であるサニーの3355台を抜いて5385台を記録。その後もサニーの販売台数を圧倒した。
 好調なセールスを維持しようと、トヨタ自工はカローラの車種強化を精力的に実施していく。1967年5月には4ドアセダンを追加。1968年4月になるとフルファストバックスタイルの「カローラ・スプリンター」を発表した。

デザイン・ドームから誕生した3代目クラウン

 カローラの成功で大衆車カテゴリーのトップに君臨したトヨタ自工は、次なる戦略として高級車分野でのシェア拡大を画策する。ここで課題となったのが、「いかにしてオーナードライバー層を取り込むか」。それまでの高級車、トヨタ車でいうとクラウンの主要ユーザーは法人需要が占めていた。いま以上に販売成績を伸ばすためには、オーナードライバーの獲得、具体的にはクラウンを“ハイオーナーカー”に仕立てる必要がある--。3代目の開発指針は、こうして明確化された。

 スタイリングは1966年に完成したトヨタ自工のデザイン・ドームで仕上げられる。日本ならではの美をテーマに据えたエクステリアは従来型以上にロング&ワイドになり、さらに曲面ガラスを採用してスタイリッシュに仕上げた。高速化時代に対応するために安全対策も重視し、1968年に実施を予定していたアメリカの安全基準項目のほとんどを満たす。新設計のペリメーターフレームも鋭意導入した。

 1967年9月、3代目となるS50型系クラウンが満を持してデビューする。その実車を見て、ユーザーは驚いた。イメージカラーが“白”だったのだ。キャッチフレーズも「白いクラウン」と大々的に掲げられていた。それまでの高級車といえば黒やグレーの塗装が中心で、白いカラーリングは大衆車のボディ色と相場が決まっていた。クルマ好きはこの時点で、「新しいクラウンは個人ユーザーにも向けた新種の高級車」と認知するようになる。

 クルマのキャラクターをオーナーカーに移行させ、ユーザーにもその性格が浸透しつつあった3代目クラウン。そして1968年10月には、その“真打ち”といえるモデルが発表される。パーソナル性を強調した2ドアハードトップだ。「男ざかりにふさわしい」というキャッチコピーを冠したハードトップ仕様は、ボディ以外にもセダンとの違いを設ける。ヘッドライトは丸型4灯式から角型2灯式に変更。グリルやリアランプなども専用デザインとした。販売台数は順調で、やがてシリーズの約20%をハードトップ仕様が占めるようになった。

日本の伝統を体現した新世代プレステージカー

 3代目クラウンがデビューした21日後、新しいボディを纏ったショーファードリブン専用車が姿を現す。車名は“トヨタ自動車の父”豊田佐吉の生誕100年を記念して、「センチュリー」(VG20型)と名づけられていた。

センチュリーの外観には荘重な雰囲気、それも日本の伝統文化を随所に感じさせるアレンジが施されていた。鳳凰を模したエンブレムに神社仏閣の建物を連想させる趣あるスタイリング、贅を尽くした内装など、どこをとっても日本の高級車の風格を備えていた。また、ボディカラーは全部で6タイプを設定したが、そのいずれもが日本の誇る名所の色合いを規範にして塗料を配合した専用色だった。ノーブル・ホワイトは富士、エターナル・ブラックは神居(カムイ)、グレーシアス・マルーンは平安、ルーシド・グリーンは蓬莱、カーム・ブルーは摩周、ミスティ・グレーは雲仙をイメージしている。エンブレムは宇治平等院の鳳凰を基にデザイン。フロントが金色、リアはグレード別にバイオレット(Dタイプ)、アクアマリン(AとCタイプ)、クリムソン(Bタイプ)と色分けしていた。