ドミンゴ 【1983,1984,1985,1986,1987,1988,1989,1990,1991,1992,1993,1994】

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スバル・リッターカーの先駆け

 「スバル・ドミンゴ」は、1983年10月にデビューした、スバル久々の1000cc級乗用車である。1984年2月に登場するジャスティに先駆けて登場したマルチパーパスモデルだった。いわゆる「リッターカー」と呼ばれるこのクラスでは、1977年に登場したダイハツ・シャレードが第2ジェネレーションのパイオニア的な存在だったが、トヨタ・カローラやホンダ・シビックと言った成熟した1200ccクラスと軽自動車の中間に位置していたために、日本ではクルマとしての性格はいささか曖昧になってしまい、市場としての発展はあまり期待できなかった。
 しかし、相次ぐ排気ガス浄化規制の強化や安全性の向上が求められた結果、軽自動車の枠組みでは、排気ガス浄化規制や安全性の完全な確保が難しくなっていた。その対策の一つとして、にわかに注目を集めたのがリッターカーだったのだ。軽自動車のエンジン排気量やボディーサイズの枠組みを離れ、完全な形で排気ガス浄化規制や安全性をクリアできることになる。「スバル・ドミンゴ」も、いわば拡大された軽自動車として登場したクルマだった。“ドミンゴ(DOMINGO)”とは、スペイン語で“日曜日”を意味する。

パワフル新開発3気筒を搭載

 「ドミンゴ」のコンセプトは、エンジン、ボディーを拡大した、リア・エンジン、リア・ドライブの軽自動車「サンバー」である。ボディーサイズは全長3410mm(サンバーの215mm増し・以下同)、全幅1430mm(35mm増し)、全高1870mm(増減無し)となる。サイズ拡大は比較的小規模だったが、これだけでも、軽自動車の狭苦しさは大いに軽減された。駆動方式はリア・エンジン、リア・ドライブと「サンバー」のままだが、新設計のエンジンは水冷直列3気筒SOHC(回転をスムーズにするためのバランスシャフト付き)と凝ったもので、排気量は997ccとなった。これを、サンバーと同様にトランスミッションもろとも、ボディー最後部にほぼ水平に寝かせて搭載している。エンジンのパワーは56ps/5400rpm、トルクは8.5kg・m/3200rpmと「サンバー」のほぼ倍に達していた。車重は900kg前後に増加したものの性能的には十分な余裕が生まれ、走行性能は大幅に向上し、豪華装備の充実も可能となったのである。「サンバー」では交通の流れに乗るのがやっと、というイメージだったが、「ドミンゴ」は高速道路のクルージングが楽しくなるクルマに変身していた。

便利で楽しい回転対座機構

 デビュー当初の「ドミンゴ」のバリェーションは2WD仕様が2車種、4WD仕様が3車種と控え目なものだった。トランスミッションは5速マニュアルのみの設定で、オートマチック仕様はなかった。大きな特徴は、2+3+2のシートアレンジで最大で7人乗車が可能だったことだ。最上級車種の4WDモデル「ドミンゴGS—S」には1列目の回転シート機構まで奢られていた。ドライバーズ・シートと助手席は独立して回転することが可能となっており、当時流行し始めた回転対座シートとして使える。もちろんフルフラット機能など現在のミニバンに匹敵する数々のシートアレンジも楽しめた。また、通常のRR走行から4WDへのトランスファーギアの切り替えは、シフトレバー上のスイッチで行うワンタッチ式となり、1速から5速までどのギア・ポジションでも可能となっていた。ブレーキが前輪にベンチレーテッド・ディスクが装着されたのも、高速化する交通事情に対処したものだ。
 高級化に伴うボディーサイズの拡大を繰り返した小型車と、ボディーサイズ拡大が望めない軽自動車の間に生まれた「リッターカー」だったが、性能の向上とボディー拡大などにより、比較的短期間の内にしっかりしたマーケットを築くことが出来た。「ドミンゴ」は、クルマをさまざまなライフシーンで使いきるユーザーにとって格好のモデルだった。