ミニカトッポ 【1990,1991,1992,1993】

トールワゴン軽自動車のパイオニア

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背高のっぽに通ずるネーミング

 1990年3月に三菱は新しいスタイルの軽自動車として、ミニカトッポを発売した。この新型軽自動車は、1990年から変更された軽自動車の規格にのっとって、設計とデザインが行われたモデルで、室内空間の拡大と使い勝手の良さを最大のアピールポイントとしていた。車名のトッポ(Toppo)とは、イタリア語でネズミのことであり、同時に日本語の「背高のっぽ」に由来する。

 設計とデザインの考え方は新しいものであったが、クルマとしての成り立ちは新しいものではなく、主要なコンポーネンツは既存のモデルから流用されていた。エンジンなどのパワートレーンは6代目ミニカのものであり、スタイリングもフロントウィンドウから前のエンジンルームはミニカのまま、その後部に規格制限いっぱいの寸法を持つキャビンを組み合わせたもの。排気量657㏄のエンジンは3タイプ。トップグレード用の電子制御燃料噴射装置付きDOHC5V(3G83型、出力52ps/7500rpm)を筆頭に、キャブレター仕様の46ps/7000rpm仕様、さらにバルブ駆動をSOHCとし、キャブレター仕様とした40ps/6000rpmなど3種のチューニングが用意された。

実用的な左右非対称ドアを採用

 車体の寸法は全長3255㎜、全幅1395㎜、ホイールベース2265㎜でセダンのミニカと大差ないものの、全高は1745㎜(セダン型ミニカは1465㎜)もあった。大きな特徴は、この背の高さを生かしたリッターカーをもしのぐ室内スペースの広さで、10歳以下の平均的な体格の子供なら立って歩くに十分なほどであった。着座位置も高くすることができ、セダン系よりは30㎜も高くなっていた。面白いのは、左右のドアの幅が異なっていることで、特に左側ドアが大きくなっている。これは、2ドアであることから、後部座席へのアクセスを容易にするための配慮であった。

 ミニカトッポには、当時、税金面が軽くなる商用タイプ(バンタイプ)と、後席の居住性を高めた乗用タイプ(セダンタイプ)の2シリーズを用意していた。バンタイプにはUで始まるグレード名を、セダンタイプにはQで始まるグレード名を使用。ワゴンという呼称は用いず、セダンを名乗っていたのは当時まだ軽自動車にワゴンという発想が生まれていなかったからだった。

トールスタイルが軽自動車の定番に

 レジャービークルとしての装備は極めて充実したもので、後部座席を左右分割式としてリクライニング機構を付け、天井部分には積み荷を固定するためのフックなどが付けられるユーティリティレールと小物入れを、後部荷室には12V電源のソケットを付けてあると言った具合。加えて、標準装備以外にも数多くのオプションパーツを揃えていた。また、多数の特別仕様車が登場したのも画期的なことで、使用目的に準じたオリジナルデザインの装備品が用意されていた。こうしたきめ細かなグレード展開はユーザーの人気を集め、販売台数でも大きな成功を収めることになった。

 こうしたミニカトッポの成功に刺激される形で、ライバル各社はこぞってトールスタイルと呼ばれる背の高いモデルを相次いで登場させる。スズキが1993年にワゴンRを、ダイハツはムーブを、ホンダがライフをデビューさせている。これらのライバルは、ミニカトッポを研究しつくした上でモデル開発を行っただけに、完成度はさらに向上していたのは確かであり、この種のモデルのパイオニアとなったミニカトッポは旧態化したのは事実。オリジナルのモデルがデビューしてから3年半後の1993年9月にフルモデルチェンジされて2代目となった。すでに、トールスタイルは軽自動車の定番的スタイルとなり、さらに多くのバリエーションを生むことになる。