昭和とクルマ11 【1978,1979,1980,1981,1982,1983】

オイルショックをきっかけにFF小型車の時代到来

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


効率パッケージングのFF化の流れ

 1973年と1979年に巻き起こったオイルショックは、世界中の自動車メーカーのクルマ造りに大きな影響を与えた。従来のパワー競争や高級化路線から、燃費性能に優れる実用車、とくに横置フロントエンジン・フロントドライブ(FF)方式の高効率なパッケージングを有する小型車の開発へとシフトしていったのである。以後、新世代のFF小型車はグローバルなマーケットで販売競争を展開することとなった。

FF小型車の先駆となったシビックの全面改良

 国産FF小型車の先駆モデルとなるシビックをリリースしていた本田技研工業は、1979年7月に同車の全面改良を実施して第2世代の“スーパー・シビック”に移行させる。スタイリングに関しては、初代のイメージを色濃く反映。実用性重視のハッチバックフォルムやクリーンなリアビューなど、どこから見ても「あのシビック」だとわかった。

 一方で詳細に観察していくと、新型ならではの特長がそこかしこで見受けられた。ひと回り大きくなったボディと厚みのあるバンパーは見た目の上級感と安心感を与え、ワンクラス上のクルマに変化したことを認識させる。さらに、デザインと素材ともに上質になったインパネや広くなったキャビンルームなど、インテリアの進化も訴求点だった。メカニズム関連にも意欲的なアプローチが成される。4輪ストラットの足回りは大幅な改良が施され、路面追従性と剛性感が格段に向上。CVCCエンジンもリファインし、EGRや触媒が装着されたユニットに進化していた。

高度な設計を施した三菱初のFF車、ミラージュ

 1978年2月には、三菱自動車工業がFFレイアウトのニューモデルとなるミラージュを発表していた。基本デザインには2BOXのハッチバックスタイルを採用。造形自体は直線を基調としたクリーンなフォルムが特長で、角型ヘッドライトやブラックアウトした横長グリル、広いガラスエリア、シンプルなリアコンビネーションランプなどがまとまりよく収まる。内装のアレンジも凝っており、スライドスイッチ式のライト&ワイパー調整や2チャンネル・4スピーカーのオーディオシステムなどを盛り込んだ。

 ボディタイプはデビュー当初が3ドアのみの設定で、後にホイールベースを80mm伸ばした(2380mm)5ドアが加わる。シャシーには前マクファーソンストラット/後U字型トレーリングアームの4輪独立懸架を採用。搭載エンジンはG11B型1244cc直4OHCとG12B型1410cc直4OHCの2機種をラインアップし、トランスミッションには“スーパーシフト”と称する2段(POWER/ECONOMY)の副変速機を持つ4速MTが設定された。

一大ブームを巻き起こしたFFファミリア

 1980年6月になると、駆動レイアウトをFFに一新した5代目マツダ・ファミリアが市場ビューを果たす。
 安定感のあるハッチバックスタイルに4輪ストラットの足回り、新設計のE型系直4OHCエンジン(E5型1490cc/E3型1296cc)、前席フルフラットシートなどを備えた新型は、スポーティで軽快な走りと快適性に富んだ室内を両立したモデルとして、とくに流行に敏感な若者層のあいだで注目を集める。最も人気が高かったのは電動サンルーフや後席ラウンジシートを装備した最上級グレードのXGで、それも赤いボディカラーの仕様。“赤のXG”は当時ブームだったサーファーの格好のアイテムとなり、ルーフキャリアにサーフボード、Tシャツを被せたシート、ダッシュボードに置いた人工芝やヤシの木など、定番のドレスアップを施したファミリアが数多く出現した。

クラス代表モデルもFFモデルに移行

 国産車の最量販モデルで、かつ永遠のライバル関係であるカローラとサニーも、相次いでFFレイアウトに切り替わる。最初に動いたのは日産で、1981年10月に第5世代となるFFサニーを市場に放った。ボディタイプは4ドアセダン/3ドアハッチバッククーペ/5ドアワゴン(カリフォルニア)の3種類を設定。車両デザインも大きく変わり、ウエッジを利かせた直線基調のフォルムをベースに、セダンは飽きのこないハイクオリティのノッチバックスタイル、クーペはおしゃれ感覚あふれるスタイリッシュな造形、ワゴンは多用途性を感じさせる低くて長いシルエットで仕立てる。

 内装についてはクラス最大級の居住スペースと広いガラスエリアを確保したうえで、視認性に優れるメーターや快適な座り心地を有する大型シートなどを配した。メカニズム関連では、新開発のE型系直4OHCエンジン(E13型1270cc/E15およびE15E型1487cc)や4輪独立懸架のサスペンションなどで、省資源かつハイレベルなパフォーマンスを達成した。

真打ちカローラの大変身

 1983年5月になるとカローラ/スプリンターの全面改良が実施される。5代目となる新型は実用性重視のセダン系(4ドアセダン/5ドアハッチバック)のみをFF化し、クーペ系のレビン/トレノはFR方式を継続した。FFカローラはスムーズで安定感のある立体構成のスタイルを基調とし、内側へ大きく絞り込んだ前後のサイドパネルや徹底した各部の面一処理などによりスタイリッシュで空力特性に優れたフォルムを構築する。

 キャビンは、FF化の利点を最大限に活かした広くて快適な居住空間を確保。同時に、使用材のクオリティアップや機能性の向上などを図った。搭載エンジンは新開発のレーザーユニット直4OHCの4機種(4A-ELU型1587cc/3A-LU型1452cc/2A-LU型1295cc/1C-L型1839ccディーゼル)を設定。足回りは4輪独立懸架のサスペンションで構成し、優れた乗り心地とコーナリング性能を実現していた。