バイオレット 【1973,1974,1975,1976,1977】

有機フォルムをまとった“しなやかな”小型車



フレッシュな魅力のバイオレット

 1973年1月に、販売台数でトヨタに続く万年2位に甘んじていた日産が、510系ブルーバードの後継モデルとして登場させたのが1.5リッター・クラスの「バイオレット(710系)」だった。しかし、この「バイオレット」に関しては、日産は公式には「510系ブルーバード」の後継モデルという位置付けにはしておらず、全く新しく開発された小型乗用車と言っていた。たしかに、外見上「510系ブルーバード」と共通している部分は、エンジンとボディーサイズ程度で、シャシーやスタイリング、インテリアなどは全て新設計となっている。
 ボディーバリェーションは、ベーシックな2ドア・セダンと4ドア・セダン、2ドア・ハードトップの3種。グレードはエンジン排気量なども含め、スタンダード、デラックス、SSSなど15種に上る。全体のスタイリングは、直線を基調とした旧510系とは大きく異なり、曲線を用いた近代的なラインを持っていた。個性的なスタイリングに由来して、当時のカタログ・キャッチコピーは“しなやかなクルマ”が採用された。

信頼のメカニズムで構成

 クルマ自体は新設計であったが、生産性の向上と生産コストの引き下げを果たすために、他のモデルと使用する部品の共用化が押し進められている。例えば、エンジンやトランスミッション、デファレンシャルギアなどは旧型510系の上級版だった「ブルーバードU(610系)」から流用したものであり、フロント・サスペンションも610系からと言った具合だ。フロパネルそのものも610系と非常に近い。しかし、だからと言って、「バイオレット」はバランスに欠けたクルマではなかった。むしろ良い所取りの効果で、総合的にはきわめてバランスに優れた車に仕上げられていたのである。
 搭載されるエンジンは日産の主力だったL型系列の水冷直列4気筒SOHCで、排気量は1428ccと1595ccの2種。1.4リッター仕様はキャブレター仕様のみだったが、1.6リッター仕様はキャブレター仕様とボッシュ社製の電子制御燃料噴射装置が選べた。1.4リッター仕様のスペックは最高出力85ps/6000rpm、最大トルク11.8kg・m/3600rpm。1.6リッター仕様には3種のチューンがあり、シングルキャブ仕様の100ps/6000rpm、13.6kg・m/4000rpmはデラックス&GL用。SUキャブを2連装した105ps/6200rpm、13.5kg・m/4000rpmはSSSに搭載。インジェクション仕様の115ps/6200rpm、14.6kg・m/4400rpmはトップグレードのSSS-Eに採用された。トランスミッションはシングルキャブ車が4速(営業車仕様は3速)、SSSは4速と5速のマニュアルが選べ、3速オートマチックは1.4&1.6リッターともにデラックス・グレード以上に設定されていた。ただしSSS-Eは5速マニュアル専用である。

モータースポーツで優れた性能を実証

 駆動方式はブルーバード系伝統のフロント・エンジン、リア・ドライブのFRである。サスペンションはSSS系に限って、後輪懸架がセミトレーリングアーム/コイルスプリングの独立型となるが、他はリーフスプリングによるリジッド・アクスルとなっていた。またブレーキがスタンダードを除きフロント・ディスクブレーキとなっていたのは時代性の現れである。車重は2ドア・セダンの「1400デラックス」で940kg、スポーティ仕様のハードトップSSS-Eで1005kgと軽かったから、最高速度は各々155km/h、170km/hとその目的には十分以上の性能を発揮した。価格は56万5千円から84万円までとなっており、その性能や装備の豊富さから考えればかなりお買い得なモデルと言えた。
 
 バイオレットのポテンシャルはモータースポーツ分野で遺憾なく発揮された。国内のモータースポーツ・シーンではさほど目立った戦績は残していないが、海外、とくにラリー・シーンでは日産のワークスマシンとして大活躍。ワークス仕様はL18型を改良した2リッターの230psユニットを搭載。軽量ボディとの組み合わせにより強烈なパフォーマンスを披露した。フル加速時には直線路でもテールを振り出すほどジャジャ馬だったという。1976年のアクロポリス・ラリーでH.カールストローム選手が見事に優勝、メタ選手も3位に食い込む。翌1977年のサファリ・ラリーではアルトーネン選手が2位を獲得している。サーキットでは1974年マレーシアで開催された’74セランゴールGPでターボ仕様のバイオレットが、フォード・エスコートBDAやポルシェ911Sを押しのけて優勝したのが光る