カルディナ 【1997,1998,1999,2000,2001,2002】
260psの快速モデルを設定したスポーティワゴン
2代目のカルディナはスポーツ派からエコノミー派まで、幅広いユーザーを満足させる意欲作だった。初代は同じボディで商用バンを設定していたが、2代目ではワゴンのみ新世代化を図ったことでイメージが向上。トヨタを代表するミディアムワゴンとしての地位を確立する。
2代目のハイライトは、最高出力260psを誇るGT-Tの設定だった。ライバルのSUBARUレガシィGTに対抗する生粋のスポーツワゴンである。基本メカニズムはセリカGT-FOURとオーバーラップしており、走りの性能は超一級品。GT-Tの心臓は空冷式インタークーラー付きターボを採用した3S-GTE型だった。
クラストップ級となる260ps/6000rpm、33.0kg・m/4400rpmのスペックはマニアを魅了するに充分だった。しかも刺激的なピークパワーだけでなくVVT-I((可変バルブタイミング機構)の採用により全域で太いトルクを生みだした。新世代のスポーツ心臓だったのである。駆動システムはセンターデフとビスカスカップリングを組み合わせたフルタイム4WDで、トランスミッションは5速MTと電子制御タイプの4速ATの2種。ATはステアリング部でもシフト操作が可能な“スポーツステアマチック”仕様となっていた。
GT-Tはハイパワーを路面にしっかりと伝えるため、シャシーも強靱だった。4輪ストラット式のサスペンション形式自体は他のカルディナと共通だったが、フロントには操縦性&安定性を重視した2段絞りバルブを持つ専用ダンパーを採用。さらに前後のストラット頂部に剛性を高めるパフォーマンスロッドを装着していた。
ブレーキはフロントが15inのツインポッドキャリパー、リアが14inキャリパーの強化版である。それだけではない。前後輪がグリップの限界を超えて滑り出しそうになると、自動的に4輪に適切なブレーキ制御とエンジンの出力制御を行い、車両姿勢を安定させる先進のVSC(ビークルスタビリティコントロール)も標準で組み込んでいた。日本初の4WDトラクションコントロールシステムと相まって、安心して260psのハイパワーを解き放つことのできるスポーツワゴン、それがカルディナGT-Tだった。
GT-Tは大型フェンダーフレアの採用で全幅1720mmの3ナンバーボディを持ち、ボンネット上のエアインテークや、専用グリルなどでエクステリアもスペシャルだった。走りは確かにスパイシーで、ワインディングロードではワゴンという事実を忘れるほどに活発。いい汗が掛けるスポーツモデルだった。ただしVSCなどの先進デバイスを搭載したとはいえ、トータルの安定性や操縦性では、ライバルのレガシィGTに一歩譲っていたのも事実だった。カルディナGT-Tの速さは際立っていたが、雨天時など路面状況が悪化するとスリリングで、腕に覚えのドライバーでないと制御が難しかった。
GT-Tの電子制御4速AT車にはスポーツステアマチックが採用されていた。ステアマチックは、トヨタ流スポーツATの第一歩だった。Dレンジの右側に配置したMポジションにシフトレバーをセレクトすると、ステアリングスポークの表と裏に設定したスイッチ操作でマニュアルシフトが可能になる機構だった。
シフトダウンは表側、シフトアップは裏側のボタン操作するようなっていた。セレクトしたギア数はコンビネーションメーター内のインジケーターに表示される。現在のスポーツATはステアリングコラムにパドルを設け、左側がシフトダウン、右側にシフトアップの機能を持たせるのが主流だが、その萌芽とも言える機構だった。
スポーツステアマチックは、操作性面では改良すべき点もあった。しかしATのイージードライブとマニュアルシフトのスポーツ性を融合した点で画期的だった。ATでもアクティブなアニュアルシフトを可能とした功績は大きなものがあった。
GT-Tの走りは刺激的だったが、総合バランスという意味では、1762ccの7A型・DOHC16Vリーンバーン・エンジンを搭載したベースグレードのほうが優れていた。7A型は通常走行時に希薄燃焼(リーンバーン)状態とすることで優れた実用燃費と環境性能を実現していた。
スペックは115ps/5400rpm、15.8kg・m/2800rpmとGT-Tと比較すると非力だったが、実際の走りは思いのほか俊敏。実用燃費に相当する10・15モード燃費は17.6km/L(MT車)とクラストップに達していた。しなやかな印象の足回りは快適で、気軽にドライブを楽しめるモデルだった。
2代目カルディナは専用の大開口スライドムーンルーフを採用したエアリアル仕様の設定など、すべての面でワゴンとしての遊びゴコロ、可能性を追求したクルマだった。地味な印象もあるが、開発者の熱意と愛情が感じられた逸材である。