日産サニー・クーペ vs トヨタ・カローラ・スプリンター 【1968,1969,1970】

スポーティモデルでも展開されたSCライバル対決

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若者層に向けたスポーティモデルの開発

 1966年は印象的な年だった。4月にB10の型式を付けた「ダットサン・サニー1000」が市場デビューを果たし、10月になるとサニー1000(ほかにスバル1000/コルト1000/ファミリア・クーペ1000など)を意識し“+100ccの余裕”を謳うE10型「トヨタ・カローラ」が発表(発売は11月)される。後に“マイカー元年”と呼ばれるこの年から、サニーvsカローラの激烈な販売競争が始まった。

 デビュー当初のサニーの販売は絶好調で、約5カ月のあいだに3万台を上回る実績を残す。ユーザーの評判もよく、とくに俊敏な加速性能や購入・維持費の安さなどが好評を博した。一方、内外装の見栄えがよく、優れた総合性能を持ち、しかもバリュー・フォー・マネーの高いカローラも、登場後たちまち市場で大人気を獲得する。発売月の11月には、早くもサニーの3355台を抜いて5385台の販売台数を記録。その後もサニーの販売台数を圧倒した。

 2車は車種設定に関しても凌ぎを削る。サニーが1967年4月に4ドアモデルを発売すれば、翌月にはカローラも4ドア仕様を設定。さらにサニーが1967年4月にスポーツを、カローラは1968年3月にSL(Sporty&Luxury)を追加した。

日本初の本格的なF.B.ルックを謳ったサニー・クーペ

 セダン系のグレードを充実させる一方、2社の開発陣は若者層を中心ターゲットに据えた新たなボディタイプも企画する。スポーティなイメージを演出できると同時に荷物の積載性の向上も図られる、当時アメリカ市場などで流行していた“ファストバック”モデルを設定しようと画策したのだ。

 最初にファストバックモデルを市場に放ったのは、日産自動車だった。1968年2月、日本初の“本格的なF.B.(ファストバック)ルック”を謳うKB10型「サニー・クーペ」が発表(発売は3月)される。
 サニー・クーペはルーフからリアへと美しく流れるファストバックのラインのほかに、傾斜を強めたウィンドウシールドやカーブドガラスのクォーターウィンドウの採用、バンパー位置のハイト化、新意匠のフロントグリルの装着などを実施。ボディサイズはセダン比で50mm短く、35mm低いディメンション(全長3770×全幅1445×全高1310mm)に仕立て、車重は675kg(4速MT。ニッサンフルオートマチックは705kg)に抑えた。エンジンについてはセダンと同形式のA10型988cc直4OHVを搭載するが、圧縮比を8.5から9.0にまで高めるなどして、パワー&トルクを60ps/8.2kg・mにまで引き上げる。カタログ値の最高速度は140km/h、0→400m加速は18.4秒(ともに4速MT)に達した。

“情熱の車”カローラ・スプリンターの登場

 サニー・クーペの発表から2カ月ほどが経過した1968年4月、“スイフトバック”と呼称するファストバックスタイルを纏ったKE15型「カローラ・スプリンター」が満を持して発表(発売は5月)される。販売については、既存のカローラ店系列ではなく新設のトヨタオート店系列が担当した。

 ボディ後半部がファストバックスタイルとなり、リアコンビネーションランプもセダンの縦長から横長に一新されたカローラ・スプリンターは、車高のみがセダン比で35mm低いディメンション(全長3845×全幅1485×全高1345mm)となる。サニー・クーペに比べるとやや大柄なボディサイズだった。搭載エンジンに関しては、ツインキャブ仕様のK-B型1077cc直4OHV(73ps/9.0kg・m)とシングルキャブ仕様のK型1077cc直4OHV(60ps/8.5kg・m)という2機種を設定。グレード展開はK-B型エンジン搭載のスプリンターSLを筆頭に、K型エンジンを積むスプリンター・デラックスとスプリンターを用意する。性能に関してはカタログ値で最高速度が160km/h、0→400m加速が17.5秒(ともにスプリンターSL)を記録した。

 積極的な車種拡大を図ったサニーとカローラだったが、販売成績は終始、カローラ・シリーズが圧倒する。しかし唯一、スポーティモデルに関してはサニー・クーペがカローラ・スプリンターを上回る時期もあった。車重の軽さを活かした俊敏な運動性能に、軽快に回るエンジン特性を有したサニー・クーペのキャラクターが、スポーツ派ドライバーから熱い支持を集めたのである。一方、伸長していたハイウェイなどでの高速性能を重視するユーザーには、絶対的な性能が高いカローラ・スプリンターが好評を博した。
 セダンモデルからファストバック仕様まで、熾烈な販売競争を展開した初代のサニーとカローラ。そのライバル関係は、1970年代に入るとさらに激しく火花を散らすこととなる−−。