ファミリア 【1980,1981,1982,1983,1984】

すべてを革新したベストセラーモデル

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スタイルも技術もリード!

 1980年6月、新型マツダ・ファミリアがデビューした。1964年にデビューした初代から数えて5代目となるモデルだ。最も大きな変更点は、それまでフロント・エンジン、リア・ドライブだった駆動方式を、時流に即した横置きエンジンによる前輪駆動(FF)としたことだった。それまでのマツダ製の小型車は、どちらかというとスタイリングは先進的なもの、メカニズムの面では冒険をしない保守的なクルマだったが、新しいファミリアでは一挙にライバルたちとの技術的な差を詰め、逆にリードした。

あのVWゴルフを凌ぐ安定感

 新型ファミリアは、駆動方式ばかりではなく、ボディスタイリングをはじめシャシーフレーム、サスペンション、エンジン,トランスミッションに至るまで、すべての点で新設計となっていた。スタイリングは、FFの先駆であり世界のリーダーカーだったVWゴルフをさらにリファインした印象の安定感溢れるプロポーションを採用。当時のプレス技術が持つ生産性も考慮した結果、平面と直線を基調としたシャープなものとしている。フロントグリルなどの意匠は、上級モデルであるカペラに共通するイメージを持ったもので、新型ファミリアがマツダの新世代であることを強調している。ボディ・バリエーションは、当初2BOXスタイルの3/5ドア・ハッチバックのみだったが、同年9月には3BOXの4ドアセダンがシリーズに加えられた。

電動サンルーフ付きで100万円弱

 搭載されるエンジンは、前輪駆動方式に対応して新しく設計されたユニットである。直列4気筒SOHCで、排気量は1296㏄(74ps/10.5kg・m)と1490㏄(85ps/12.3kg・m)の2種があった。燃料の供給装置が両方とも2バレル型のキャブレターであったのが時代を現している。こうした小型で安価なクルマには電子制御燃料噴射装置などコスト的に装着はまだ無理だったのだ。ブレーキがフロントはディスクであったのに対し後輪がドラムに留まっていたのも同様の理由である。そのほかにも、室内儀装の簡略化とか、装備の簡素化などで大幅なコストダウンを達成、当時のこのクラスの小型車としてはお買い得な価格を実現していた。ベーシックな1.3リッターの3ドアXCなら、73.8万円で買うことが出来た(同時代の軽自動車は75万円前後)のだから、その車名のように、一家に一台の正統派ファミリーカーと言ってもおかしくはなかった。販売主力モデルとなる1.5リッターの3ドアXGでも103.8万円。この価格は電動サンルーフや、クオーツ時計、ハロゲンランプ、フルフラット・ラウンジシート、70扁平ラジアルタイヤなど当時としては贅沢な装備を満載してのプライスだったから価値があった。

カローラを抜きNo.1に!

 走りや使い勝手も欧州車的にしっかりとしていた。小型実用車として満足できるレベルに仕上げられていたのだ。マツダが走りに優れたメーカーとして認知されたのはRX-7と、このファミリアの功績である。新設計の前後4輪ともマクファーソン・ストラット型サスペンションは、軽量なボディの効果もあり、ハンドリングはスポーティといえるレベルであったし、小型車のボディサイズながら、大人4~5人が十分乗れる室内スペースも確保していた。特に、2BOXスタイルと上方に大きく開くハッチゲートの存在は、分割可倒式の後部座席シートバック(最も安価なグレードには付かないが)と共に、ワゴンに匹敵するラゲッジ・スペースを持ち、使い易さを大きく向上させていた。
スポーティな走りと、欧州車的な合理的なスタイリング、そしてフレキシビリティたっぷりのユーティリティが新型ファミリアの大きな魅力であった。いつしかファミリアは常勝カローラを販売台数で破り、ファミリーカーの新スタンダードに君臨する。軽自動車やライバルの小型車の中には、ファミリア的スタイルとアイデア溢れた装備を標準化するものが続々と現れた。ファミリアが与えたインパクトは、それほど大きかった。