ライフ 【1971,1972,1973,1974】

次代を担った軽ファミリーカー

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Nをはじめ軽自動車を続々発売したホンダ

 ホンダは、軽自動車の革命児となった「N360」を1967年3月に発売、N360は、空冷並列2気筒OHCエンジンで前輪を駆動するスポーティーな走りと31万5000円という安さで、たちまち軽自動車のベストセラーとなった。軽自動車の高性能化は、N360から始まった。ホンダは、その後も1970年1月のNⅢ360、同年10月のZなど、次々と新機軸を持ったモデルを登場させ、軽自動車のトップメーカーに躍進する。

 しかし、軽自動車が無用な高性能化に走っている間に、安全思想の拡大や排気ガス浄化規制の強化など、軽自動車を取り巻く環境は厳しさを増していく。こうした事態に対応するために、ホンダはまったく新しい軽自動車のシリーズである「ホンダ・ライフ」をデビューさせた。1971年6月であった。

ライフは広い室内と静かさを徹底追及

 ライフは、室内の広さと静かな走行を目的に開発されたファミリーカーだった。エンジンは水冷並列2気筒SOHCの排気量356ccで、最高出力は30ps/8000rpm、最大トルクは2.9kg-m/6000rpmに抑えられていた。騒音と振動を軽減するためバランサーシャフトが採用され、絶対的なパワーよりもトルクの厚い余裕のある走りができるように考えられていた。4速トランスミッションは新設計となり、静かな走りに貢献していた。

 スタイルは、全体に角が取れてマイルドなものとされ、新しく4ドア仕様が加わった。室内はリッターカーに匹敵するほど広く、軽自動車とはいえ、本格的な小型車に近い内容を持っていた。また、ライフ・タウンと呼ばれるシリーズもあり、こちらは走行性能よりも、経済性を重視したチューニングが施され、エンジン出力は21ps/6500rpm、トルクは2.5kg-m/3200rpm。燃費は軽自動車の中で抜群に良かった。

豊富なバリエーションで魅力を訴求

 ライフは、豊富なバリエーションが魅力だった。当初から2ドアと4ドアを設定し、エンジンは、30ps/2.9kg-mの標準仕様と、タウン用の21ps/2.5kg-mを用意。ATモデルも設定し、5つの基本グレードをラインアップした。そのなかのスタンダードと呼ばれるベーシックグレードにはヒーター有無のモデルがあり、当時のプレス向けリリースでは6グレード構成となっていた、エンジンやミッションの違いを含めると全27機種のワイドバリエーションである。1972年4月にはツインキャブ仕様(36ps)のスポーティモデル、ツーリングを追加し、さらに選択の幅を広げる。

軽自動車黄金時代の終わり

 ホンダのN360シリーズからライフ・シリーズへの方向転換は、軽自動車といえども、確実に迫っていた排気ガス浄化規制の強化とは無関係ではいられないことを如実に物語るものであった。あれだけ高性能をうたい文句にしていたホンダ以外の軽自動車たちも、軒並みエンジンの水冷化と安全性の向上へと足並みを揃えることになる。同時にそれは、あれだけ人気のあった軽自動車の第一次黄金時代が終焉することをも意味していた。

 ホンダは小型車シビックをデビューさせ、そのシビックの生産量を確保するために、軽自動車の市場から一時的に撤退する。