ボンゴ・マルチワゴン 【1978,1979,1980,1981,1982,1983】

本格的キャブオーバー型RVの登場

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より広い室内空間を目指して

 英語で“大カモシカ”を意味する車名を冠し、1966年5月に市場デビューを果たした東洋工業のマツダ・ボンゴ。エンジンを床下に配置するキャブオーバー型のワンボックスカーは、広い室内空間と低床構造による使い勝手のよさで大好評を博し、次第にクラスのベンチマークに位置づけられるようになっていた。1975年には第1次石油危機後の経営悪化などにより一時ワンボックスの生産を中止するものの、東洋工業のスタッフは次期型の企画を鋭意温め続け、少ない予算と人員ながら工夫を凝らした開発を推し進めていく。

 新型ボンゴの基本レイアウトを策定するに当たり、開発陣は従来型のメリットである広い室内空間と低床をさらに発展させる方針を打ち出す。駆動方式は従来のリアエンジン&リアドライブから前席下にエンジンを置き、後輪を駆動する方式に一新。そのうえで、後席および荷室に張り出すホイールハウスを無くし、さらに有効な荷重性能と駆動力を確保できる後輪の“小径(12インチ)ダブルタイヤ化”を図った。また、リアのアクスルはドライブシャフトに負担をかけない全浮動式を採用し、高い耐久性と信頼性を確保する。

 シャシーやボディも強化し、前・ダブルウィッシュボーン/後・縦置半楕円リーフのサスペンションには取り付け剛性のアップやチューニングの変更を、メインフレームには箱型断面構造を、ボディ塗装には改善されたアニオン塗装(後にカチオン電着に変更)などを採用した。

広々室内。ワゴンは9/10名乗り

 搭載エンジンは、NA型1.6L直4(82ps)とTC型1.3L直4(77ps)の2機種のガソリンエンジンを用意。さらに、乗車定員が増えるワゴンモデル用にはVC型1.8L直4(95ps)も設定した。

 スタイリングは、大型化したボディに、より洗練度を増したワンボックスのエクステリアを構築し、既存モデルにはない乗用車感覚のスタイリッシュな外観を演出する。ボディタイプはホイールベース2155mmの標準ボディと同2405mmのロングボディを設定。ルーフ形状も標準タイプとハイルーフタイプを用意した。

 インテリアも洗練される。現代的で機能性に優れるインパネ形状にクッション性と調整度合が増したシート、安全装備の増設、ベンチレーションの容量アップを実施し、キャビン空間の快適性と安心感を大きく引き上げた。また、レクリエーショナルビークルの役割を担うワゴンモデルにはカリフォルニアミラーや室内カーテン、ステップマット、ウッディキャリアといった専用アイテムを豊富にラインアップする。乗車定員はバンモデルが3(6)人乗りと6(9)人乗り、ワゴンモデルが9人乗りと10人乗りを設定した。

ダブルタイヤのワンボックスの登場

 2代目となるマツダ・ボンゴは、1977年9月に“ボンゴ・ワイドロー”と称するトラックが登場し、翌1978年1月にはワンボックスの“ボンゴ・マルチバン”が、同年10月になると乗用車モデルの“ボンゴ・マルチワゴン”がリリースされる。マルチバンの車種展開は600kg積(ホイールベース2155mm)と850kg積(同2405mm)、さらに6(9)人乗りの計3タイプを設定。マルチワゴンは9人乗り(同2155mm)と10人乗り(同2405mm)の計2タイプをラインアップしていた。

 小径ダブルタイヤの装着によるタイヤハウスの張り出しのない低床荷室にフルフラットシート(マルチワゴンに設定)を装備した2代目ボンゴは、商用ユーザーのみならず多用途車を求める人からも大きな注目を集める。また、人気タレントの山城新伍さんを起用したユーモラスなCMも販売台数の伸びに拍車をかけた。

魅力的な車種ラインアップの拡大

 デビュー後の2代目マツダ・ボンゴは、月5000台をコンスタントに販売する人気定番車種となり、1970年代末のマツダ・ディーラーの最量販車種に成長する。その人気に応えるように、開発陣は精力的にボンゴの車種ラインアップ拡大とリファインを実施していった。

 1979年4月にはフロントマスクのデザインなどを変更したマツダオート店向けの兄弟車、“ボンゴ・ボンディ”を発売。同年10月には、S2型2.2L直4ディーゼルエンジン(70ps)を搭載した仕様を設定する。同時に、TC型ガソリンエンジンはUC型1.4L直4(80ps)へと換装された。

 1981年1月になると、大がかりなマイナーチェンジが実施される。ヘッドライトは丸型2灯から角型2灯へと変更。リアコンビネーションランプやインパネの形状なども一新された。さらに、“ウエストコースト”と称するRV色を強めたマルチワゴンも追加設定。サンルーフや全面ブルーペインガラス、メッキ式ラジエターグリル、フルトリム内装、回転シートなどを備えたウエストコーストは、アウトドア派のユーザーから高い支持を獲得した。

 様々な改良を加えながら、1970年代末から1980年代初頭にかけてコンスタントに売れ続けた2代目マツダ・ボンゴ。当時の販売スタッフによると、「1980年6月に5代目ファミリアが登場するまで、2代目ボンゴは間違いなくマツダの屋台骨を支えたクルマだった」という。ロータリーエンジン搭載車と同様、マツダのクルマ造りの哲学が存分に込められた1台--それが2代目ボンゴなのである。