1200トラック 【1961,1962,1963,1964,1965】
ブルーバードの雰囲気を持つタフな相棒
乗用車の代名詞的な存在へと瞬く間に成長した。
日産自動車では人気のブルーバードのイメージを
商業モデルにも拡大展開することを決定。
積極的にモデルの改良を図った。
1961年に登場したダットサン・トラックは
まさにブルーバードの洗練されたイメージを携えていた。
ブルーバードの洗練されたイメージと快適性を持ったトラック。それが1961年8月に登場したダットサン・トラック320型だ。初代ブルーバード(310型/1989年デビュー)は、さまざまな影響を及ぼした。
流麗で伸びやかなスタイリングを筆頭に、豪華な室内調度、乗り心地とロードホールディングに優れた独立方式のフロントサスペンションなど、初代ブルーバードは乗用車の基準となり、ユーザーの憧れの対象となった。当時は世代を問わず誰もがブルーバードに乗りたがったという。それほど人気は絶大だった。
日産はブルーバードが作り出した好印象を商業車にも投影させ、人気をさらに加速させることを決断する。その決定版が320型ダットサン・トラックだった。320型の印象は、まさに“ブルーバード・トラック”。従来のG223型と比較して49mmワイドとなった全幅1515mmのボディはブルーバード・イメージ。フロントグリルやバンパーこそブルーバードのメッキ仕上げに対し、ビジネスライクなホワイト仕上げだったが、洗練された印象はブルーバード譲りだった。
室内はさらにブルーバードに近い。インパネ形状はブルーバード用を流用しており、時計、ラジオ、ヒーターなどをオプションで設定。運転席側サンバイザーを標準装備していた。シートも40mmのフォームラバーとスプリングの併用によって乗り心地を改善した快適仕様を装着。さらに100mmもの前後スライドが可能で、様々な体格のドライバーに対応した。安全性面の配慮も入念で、ステアリングホイールは衝撃でスポークが折れ、ドライバーを守る独特のコーン型だった。
メカニズムも内外装の印象と同様にブルーバードの血統でまとめている。エンジンは1189ccの排気量から55ps/4800rpmのパワーと、8.8kg・m/3600rpmのトルクを引き出すE1型。2連式キャブレターによって力強い加速と、通常走行時の良好な燃費を両立した高効率設計で、フロントサスペンションはブルーバードと共通のウィッシュボーンとトーションバー式ばねの組み合わせとしている。足回りは、カタログでも乗り心地のよさを強調。パワフルなエンジンと相まって、ブルーバード譲りの俊敏で快適な走りを約束した。ちなみにトップスピードは105km/hに達した。
320型ダットサン・トラックはブルーバードのイメージを投影したとはいえ、トラックとしての本来のタフさ、便利さも一段と磨き込んでいた。もともとダットサン・トラックはライバルを凌駕する耐久性と実用性で絶大な人気を堅持してきたモデルである。快適さを増すことで、本来の美点をスポイルすることは許されなかったのだ。
最大積載量1トンに設定された荷台は1427mmの幅と1850mmの長さを確保したゆったりサイズ。先代のG223型と比較して61mmもワイドで30mm長くなっていた。しかもリアサスペンションのリーフ長を100mmも伸ばした効果で、悪路での荷台振動が少なくなっていた。ユーザーにとって、荷傷みの心配は無用となったこと、そしてデファレンシャルギアの歯数が36枚となり、厚みと幅が増大したことで耐久性がリファインされたことは朗報だった。標準装着のタイヤはフロントの6プライに対して後輪は8プライ。前後で構造を変えたタイヤを装備したのは重荷重に対して腰くだけにならないようにした配慮である。
ダットサン・トラックの伝統であるタフさをそのままに、ブルーバードの快適性と洗練されたイメージを盛り込んだ320型は、市場に大好評で迎えられ、トップセラーに躍進する。海外、とくにアメリカ市場でも好評ぶりは同様で、ダットサンはコンパクト・ピックアップの代名詞的な存在となった。アメリカではマルチユースなコミューター的な存在として独自のマーケットを開拓。黎明期の日本を代表するモデルの1台として記憶されている。