ライトエース・ワゴン 【1971,1972,1973,1974,1975,1976,1977,1978,1979】

カローラの心臓を持つスタイリッシュモデル

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ユーザーを魅了したジャストサイズワゴン

 1971年2月に登場したライトエース・ワゴンは現代のノア&ヴォクシーの先祖にあたるマルチユース・ワゴンである。性格的には初代パブリカ・ベースのミニエース・コーチ(1968年2月デビュー)の後継となる上級モデルであり、ハイエース・ワゴン(1967年10月デビュー)の弟分というキャラクターだった。エンジンをはじめとするメカニカルコンポーネンツは2代目カローラから流用しているものが多い。

 ライトエース・ワゴンのポジショニングはボディサイズとエンジンを見ると理解しやすい。ライトエースのスリーサイズは全長3870×全幅1565×全高1750mm。ちょうどミニエース(全長3580×全幅1380×全高1630mm)とハイエース(全長4310×全幅1695×全高1880mm)の中間に位置する。搭載するパワーユニットは当時のカローラで好評を得ていた3K型の直列4気筒OHV。1166ccの排気量から68ps/6000rpmを発揮する。こちらもミニエース(水平対向2気筒、790cc/36ps)とハイエース(直列4気筒、1490cc/70ps)の中間に位置していた。当時からトヨタの緻密な商品戦略には定評があったが、ライトエースはまさにミニエースでは物足りなさを覚え、ハイエースでは大きすぎると感じていたユーザーに向けての回答だった。

 しかも中間サイズとは言っても、ワゴンの乗車定員はハイエースと同じ9名(ミニエースは7名)。最高速度にいたってはハイエースの120km/hを凌ぐ135km/hをマークした。高速道路網の充実が急ピッチで進んでいた当時の状況では、ライトエースのほうがむしろ兄貴分のハイエースよりも賢い選択だったかもしれない。

基本構成は商用車のバンと共通

 ライトエースは1970年11月にまずトラックが誕生し、ワゴンはバンと同時に1971年2月に追加設定された。乗用車登録のワゴンながら実質的には商業車のトラック&バンをベースにしており、この点が最初から乗用ミニバンとして開発している現代のノア&ヴォクシーと異なっている。

 1970年代の初頭、ワゴンはあくまで少数派だった。一部では3列シートワゴンの便利さを理解する層が存在したが、ユーザーの多くは通常のセダンやスポーツモデルに憧れていた。だからライトエース・ワゴンは2&3列目がフルフラットになる3列シートレイアウトを持つものの、基本的にはバンの荷室にシートを配置したクルマだった。とはいえライトエースは新世代のコマーシャルカーとして耐久性だけでなく、乗り心地や静粛性といった快適性に十分に気を配っていた。スタイリングもヘッドランプ部と一体化した縦型のカウルや、右側にオフセット配置したナンバープレート、曲面ガラスを使用したウィンドーグラフィックなど、お洒落にまとめていた。商用車にしておくのはもったいないほどのポテンシャルを持ったクルマだったのだ。

カローラ用エンジンを20度傾けて搭載

 メカニズム面も意欲的だった。エンジンはカローラ用の3K型1166ccを搭載。68ps/6000rpmのパワーはもちろんだが、軽快な吹き上がりと静粛性に定評があるユニットだった。しかもライトエースへの搭載にあたってエンジン本体を約20度傾けて搭載することで、1列目中央席に設けたサービスリッドを開けるとオイルや水量などの日常点検が簡単に行えるように配慮していた。

 フロントサスペンションはコイルばねを用いたウィッシュボーン式の独立システムを採用し、従来の商業車と一線を画した優れた乗り心地を実現していた。カローラが“+100cc”の余裕を謳い、ユーザーの期待値よりさらに上をいく完成度で大きな成功を獲得したのと同様、ライトエースもまた当時の商業車に対する期待値を、ほとんどの面で上回るクルマだったのだ。ライトエース・ワゴンは当初のメーカーの予想以上に高い人気を獲得し、トヨタの3列シートワゴンの基幹モデルとして発展することになる。

車名は名車トヨエースの血統!

 ライトエースは、トヨエース、ハイエース、ミニエースに続いて“エース”を車名に組み込んだモデルだった。エースの名を初めて名乗ったのは “トラックの国民車”を標榜し絶大な人気を誇ったトヨエースである。トヨエースはキャブオーバー型トラックの先駆で、発表は1954年9月。しかしデビュー時点での正式車名は「トヨペット・ライトトラックSKB型」。なんともビジネスライクだった。1トン積みライトトラックSKB型は、直列4気筒995cc(33ps)エンジンを搭載し、使い勝手のよさと低価格戦略も功を奏し圧倒的な販売シェアを獲得する。人気の高さから独立したネーミングを付けようという話しになり、車名を一般から公募。1956年5月から「トヨエース」を名乗るようになったのだ。初代トヨエースはトラックを基本に、ダブルキャブトラック、パネルバン、ライトバンなど多彩なラインアップを誇ったが、乗用車感覚のワゴンは未設定だった。