コロナ・マークⅡ 【1976,1977,1978,1979,1980】

ゆとりを求めた上級サルーン

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3代目は真のゆとりを目指して開発

 3代目コロナ・マークⅡは、1976年12月に発表された。3代目は開発のメインテーマに「真のゆとりと豊かさ」を掲げていた。この当時のコロナ・マークIIは、かつてBC戦争とさえ言われていた日産ブルーバードとの熾烈な販売合戦に勝利し、市場占有率(シェア)を着々と拡大していたトヨタの、クラウンと並ぶフラッグシップだった。日本のモータリゼーションは、その形はある意味ではきわめて変則的なものではあったが、発展途上にあり、乗用車は自家用車を中心として、1.5リッター・クラスから2.0リッター・クラスへとその中心を移しつつあった。つまり、ボディもエンジンも大型化の傾向にあったのである。3代目マークIIの登場は、そうしたユーザーの志向に合わせるべく登場した車種である。コロナ・マークIIは、その後、上級オーナーカーの主力車種として、“マークII現象”と言われるほどの人気を集め、社会現象の一つにさえなるのだ。

ジャガーを彷彿させたスタイリング

 第3世代となった30系マークIIは、エンジンとトランスミッションなどの駆動系を除いて、全てが新設計となった。ボディスタイリングは、それまでのマークⅡがどちらかと言えばアメリカ的なものであったのに対して、ヨーロッパ的なデザインを採り入れたものとなった。比較的角の立ったシャープなラインで構成され、フロント・エンドには逆台形のセンターグリルと一対の丸型ヘッドライトと角型補助ライトが付けられている。全体のニュアンスは英国製のジャガーXJにも似たものとなった。サイドビューは端正な3ボックス型で、特徴的なプレスラインがフロントフェンダーからリアホイール直前まで伸びている。リアエンドには矩形のテールライトが付き、この部分はアメリカ車的なデザインとなっていた。欧米の特徴的なデザインを巧みにミックスした伸びやかなスタイリング・デザインである。それは、後部座席を重視したクラウンなどとは異なり、完全にパーソナルユースを前提としたスタイリングであり、日本のモータリゼーションが2.0リッター・クラスのクルマをパーソナルカーとして使える段階まで成熟したことを端的に示すものでもあった。

ラインアップ総数は49タイプ!!

 インテリアのデザインも、欧州車を想わせるもので、やはり後部座席にVIPを乗せて走ることよりも、自分でステアリングを握り、積極的にクルマを走らせることを目的とした、ツーリングカー的なパーソナルデザインとなっていた。
 マークIIは、トヨタの基幹車種であったから、モデル・バリエーションは多彩を極める。ボディバリエーションは4ドアセダン、2ドアHT, 5ドアワゴン、そしてワゴンの商用車仕様である5ドアバンの4種があり、乗用車シリーズに搭載するエンジンは、旧モデルからのキャリーオーバーとされ、1968㏄の直列4気筒SOHC(100ps)をベーシックに1988㏄(110ps&125ps)と2563㏄(135ps)の直列6気筒SOHCなどがあるが、チューニングの程度によって4種類に分かれている。さらに、装備されるアクセサリーや内装の違いなどで、ラインアップ総数は49車型に達する。これでも、まだまだグレード数は少ない部類に属するものだった。

上級車は4輪独立サス採用

 シャシーは完全に新設計となり、サスペンションは前輪がマクファーソンストラット/コイルスプリング、後輪はグレードによって異なり、GSLやグランデなどの上級車種にはセミトレーリングアーム/コイルスプリングによる独立懸架となり、他のモデルはパナールロッド/コイルスプリングを使ったリジッド・アクスルとなっている。使用状況とコストのバランスを考えながら、グレードによってサスペンションを使い分けるなどは、いかにもトヨタらしいところだ。
 ブレーキは全車種フロントにディスクブレーキが標準装備とされ、ELR付きのシートベルトも全車種に標準装備されている。安全性向上のためには当然と言える装備である。

フラッグシップに2.6リッターを設定

 5ナンバー枠にこだわり続けていたマークⅡが、エンジン排気量で3ナンバーとなる2600㏄の直列6気筒エンジンを搭載した2600グランデをバリェーションに加えたことも新しかった。厳しさを増す排気ガス浄化規制の下で、十分なエンジン性能を確保するためには、従来からの2.0リッター・エンジンでは限界があったと言うことだ。当時の税制上では不利になる3ナンバー枠になっても、絶対的な性能の高さを求めるユーザーも少なからず存在し始めたのだ。日本のモータリゼーションの大きな変化の一つであったと言える。
 旧モデルに存在したスポーティーモデルのGSSはカタログから落とされ、代わって登場したのが豪華な装備と3ナンバー枠に属する2600グランデのシリーズだったわけである。これがトヨタの標榜する「真のゆとりと豊かさ」の表れであったかは定かではない。しかしトヨタ・マークIIが爆発的な人気を獲得したのは紛れもない事実であった。