キャブライト 【1964,1965,1966,1967,1968】

ヒューマンフェイスの愛すべきコマーシャルカー



商用車に求められるスタイリングとは!?

 スポーツカーの場合、スタイリングは優れたパフォーマンスを無言のうちに語る造形が望ましい。“羊の皮を被った狼”という表現も存在するが、それさえもジェントル一辺倒ではなく、マニアが見れば違いが瞬時に分かる差別性の演出が必須条件だ。スポーツカーにとってスタイリングは性能の一部なのである。しかし商業車のスタイリングに求められる要件は違う。荷物を運ぶのが主目的だけに、ラゲッジスペースをきちんと確保した機能的な造形であることは基本要件。ただしそれだけでない。周囲に愛される造形が求められるのだ。とくに街中での使用がメインとなる生活に密着した小型トラック&ライトバンの場合、必要となるのは“威圧感”ではなく“親近感”。庶民の生活を支えるパートナーにふさわしいフレンドリーさが要求される。

3代目キャブライトの愛らしい個性

 今回の主役となる3代目キャブライトは、商用車として理想的なスタイリングの持ち主である。そもそもキャブライトは、1958年3月に3輪トラックと同等のリーズナブルなプライスを目指したシンプルな4輪トラックとして誕生した。ライバルとなるトヨタのトヨエースが完全キャブオーバースタイルを採用したのに対し、キャブライトは短いボンネットを持つ1.5ボックス・スタイル。無骨な印象のトヨエースに対して、キャブライトはどこかヒューマンな味わいを感じるデザインにまとめていた。このテーストは1961年3月にデビューした2代目に継承され、1964年3月登場の3代目で完成の域に達する。

 丸型ヘッドランプと、ちょっぴり内側にマウントしたウインカーランプ。白塗りのグリル&バンパー。短いボンネットとそれに続くキャビン。Aピラーから長いステーが伸びるミラーなど、どこから見ても3代目キャブライトのスタイリングには味がある。周囲の微笑を誘うグッドデザインだ。もちろん機能の面もしっかりと吟味されていた。

 バリエーションは、トラックとライトバン、そして3列シート構成で9名乗車が可能な乗用車登録のコーチの3シリーズ。トラックは全長4310mmの標準型を基本に、全長3840mmのショートボディーと、高床タイプを設定。標準型で2490mm、ショートボディー&高床タイプは2020mmの、それぞれクラス最大級の荷室長を確保した。最大積載量は1000kgである。
 ライトバンとコーチの全長は3970mm。ライトバンは最大荷室長1855mmを確保し最大積載量は500kgの設定。広い荷室空間とともに、リアドアに国産車初のスライドドア機構を採用したのが特徴だった。カタログでは「狭い軒下にぴったり横づけでき、雨の日でも大切な商品が濡れません。リアドアを開けるとルームランプがつき、夜間の積み降ろしに便利。」と、スライドドアのメリットを説明していた。

メカニズムはタフで信頼性抜群

 メカニズム面では、日本だけでなくアメリカをはじめとする輸出市場でも高い評価を得ていたダットサン・トラックの血統を受け継いでいた。1138ccのD11型・直列4気筒OHVエンジンの基本設計はダットサン・トラックと共通。53ps/5000rpmの伸びやかなパワーと、8.5kg・m/2800rpmの実用域を重視したトルク特性によりクラス水準を抜くパフォーマンスを披露した。トランスミッションはフルシンクロ方式の4速マニュアルタイプ。カタログ上の最高速度は100km/hに達した。シャシーは頑丈そのもののフルフレーム方式で、前後サスペンションはシンプルなリーフリジッドとなっていた。

 室内はシンプルそのもの。メーターはダットサン・トラックと共通の2連丸型タイプだったが、ソフトパッドはインパネ上面のみで、ドアをはじめ室内各部は金属パネル仕上げになっていた。ちなみにラジオやヒーターはオプション扱い。ユニークだったのは、コラムに配置されたシフトレバーが通常とは逆の右側に配置されていたことである。これは左側に配置すると前席3名乗車状態の場合、中央席の乗員と操作時に干渉するためだった。限られたスペースを有効に活用するため、あえてシフトレバーを通常とは逆に配置したのである。3代目キャブライトは、スタイリングが愛らしいだけでなく、合理的な設計を貫いたクルマでもあった。