パルサー 【1986,1987,1988,1989,1990】

カーオブザイヤーに輝いた実力派カジュアル

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パルサーはサニーよりカジュアルな存在

 パルサーは1986年5月に2回目のフルチェンジを受けて3代目へと進化した。3代目となったパルサーは、兄基分であるサニー系と多くのコンポーネンツを共用している。2430mmのホイールベース、フロントが1435mm、リアは1430mmのトレッド数値は同時代のサニーに等しい。いい方を変えれば、サニーの派生モデルのひとつということができる。ボディバリエーションは3/5ドアハッチバック、4ドアセダンの3種がある。

 パルサーは、日産のモデルレンジの中ではサニーよりややカジュアルな存在に位置づけられており、フロントエンジンによる前輪駆動(FF)メカニズムによって実現した広く合理的なパッケージングを特徴としていた。海外、とくに欧州市場での評判もよく日本車のなかで最もヨーロピアンライクなクルマの1台だった。

日本初の先進4WD機構をラインアップ

 3代目パルサーのエンジンはガソリン仕様が4種とディーゼル仕様が1種の計5種で、いずれも水冷直列4気筒でフロントに横置きされている。排気量はガソリンが1270ccと1487cc、それに1598cc。5ドアハッチバックとセダンには1680ccのディーゼルが加わる。出力はガソリン仕様が67ps/6000rpm から120ps/6400rpmまで。ディーゼルは55ps/4800rpmを発揮する。ターボチャージャー装着仕様はない。

 魅力的なモデルとして、センターデファレンシャルにビスカスカップリング(VCU)を用いた日本初のフルオート・フルタイム4WDシステムを持つモデルが加えられた。積雪地や条件の悪い路面での安全かつ安定した走りには有効な4WDメカである。トランスミッションは3速/4速のオートマチックおよび5速/4速のマニュアル型がグレードによって使い分けられる。上級の電子制御インジェクション・ユニットを搭載する1500ミラノX1-Eのみに4速オートマチックがオプション設定されていた。

シャープな造形。充実のオーディオシステム

 ボディスタイルは、生産性を最優先に考えられており、シャープな直線と平面を多用したものとしている。当時のプレス技術ではこの辺りが最も効率的なスタイルだったのだ。フロアパネルは、4WDモデルとの供用を図るため、前2輪駆動のモデルでもフロア中央に大きなトンネル部を持っていた。4WDモデルでは、此処に前後アクスルを繋ぐプロペラシャフトが通ることになる。フルタイム4WDシステムは、当初は4ドアセダンのみに設定されていた。

 装備やオプションには数々の工夫が凝らされていた。JBL製スピーカーを採用したサウンドセレクションもそのひとつである。サウンドセレクションは、カセット一体型のAM/FM電子チューナーとグラフィックイコライザー&パワーインジケーターアンプ(100W)、そしてJBL製スピーカーを組み合わせた高級システム。迫力たっぷりのサウンドはもちろん、専用バーに取り付けられたスピーカーが後方に150度回転するのが自慢だった。ハッチゲートを開けスピーカーを回転させると屋外でもグッドサウンドを満喫できた。ライバルも様々なオーディオシステムを用意していたが、屋外でも楽しめたのはパルサーだけだった。

高い技術力で日本カーオブザイヤーを受賞

 パルサーシリーズの直接的なライバルとなるのは、トヨタのカローラ/スプリンター、同ターセル/コルサ、ホンダのシビック、三菱はミラージュ、マツダのファミリアなどであり、1.3〜1.5リッタークラスの国産小型車の最激戦区といえるセグメントであった。そんな中で、ビスカスカップリングを使ったフルタイム4WDシステムを採用したパルサーシリーズは、価格の安価さもあって予想を上回る成功を収めた。最も安価な1300V1(2輪駆動)が91万円、最上級車種である4WD機構を備える4ドアセダンJ1(マニュアルトランスミッション仕様)でもベース価格は154万円だった。

 日産系初の前輪駆動モデルであったチェリーの後を受け、より完成されたモデルとなって登場した3代目パルサーは、日産製小型車の切り札となったのである。日本カーオブザイヤーも受賞し、その先進技術は大いに注目された。「技術の日産」という古いキャッチコピーは未だ健在だった。