79日産シルビアvs77トヨタ・セリカ 【1977,1978,1979,1980,1981,1982,1983】
豊富な車種展開で勝負したスペシャルティカー対決
メーカー側は段階的に実施された厳しい排出ガス規制の対策に一定の目処がつき、一方のユーザーのあいだでは高性能なスポーツモデルの復活が望まれていた1970年代終盤の日本の自動車市場。この流れに対して日本におけるスペシャルティカーの創造者であるトヨタ自動車工業は、6年8カ月ぶりにセリカ(とカリーナ)の全面改良を実施した。“高品質・高性能”を開発テーマに据え、キャッチフレーズに「答えは風の中にある」と謳ったA40型系の2代目セリカは、1977年8月に市場デビューを果たす。ボディタイプは2ドアクーペと3ドアリフトバックの2種類を用意。車種展開はクーペが33タイプ、リフトバックが31タイプの計64車型をラインアップした。
スタイリングについては、従来モデルよりボディを大型化したうえで空気力学を追求したボディラインや3次曲面のウィンドウガラスなどを採用して斬新なデザインを構築。インテリアでは室内空間の拡大と合わせて、インパネの刷新や空調性能の向上、シート形状の改良などを実施して居住性の引き上げを図った。
搭載エンジンは18R-GU型1968cc直4DOHC(130ps/17.0kg・m)をはじめ、2T-GEU型1588cc直4DOHC(110ps/14.5kg・m)、18R-U型1968cc直4OHC(100ps/15.5kg・m)、3T-U型1770cc直4OHV(98ps/15.2kg・m)、12T-U型1588cc直4OHV(88ps/13.3kg・m)を用意する。このうち12T-U型ユニットは、TGP(乱流生成ポット)やEGRシステム、2次吸気導入装置、酸化触媒コンバータなどを組み込み、いち早く昭和53年度排出ガス規制に適合させた。
2代目セリカはデビュー後も着実に進化を図っていく。1978年3月にはリフトバックのGT/GTVにサンルーフ仕様を設定。同年4月には、4M-EU型2563cc直6OHC(140ps/21.5kg・m)とM-EU型1988cc直6OHC(125ps/17.0kg・m)エンジンを積み込んだセリカXXシリーズが登場する。同時期、2T-GEU型エンジンなども昭和53年度排出ガス規制に適合させた。さらに同年9月には2000GTラリーを、11月には1600GTラリーを発売し、セリカのスポーティ・イメージをいっそう引き上げた。
2代目セリカのデビューと進化を横目で見ながら、日産のスタッフは3代目となる次期型シルビアの開発を鋭意、推し進めていく。そして1979年3月、兄弟車で日産モーター系販売店向けの兄弟車「ガゼール」とともに市場に送り出した。
「1980年代に向けた本格的小型スペシャルティカー」と称し、S110の型式を付けて登場した3代目シルビアは、まず2ドアノッチバックのハードトップが登場し、5カ月後に3ドアハッチバックが追加設定される。車種展開はハードトップが16タイプ、ハッチバックが15タイプの計31車型を設定した。
スタイリングに関しては、低いノーズラインに大きく傾斜したフロントウィンドウ、オペラウィンドウ(ハードトップ)およびスポーティテール(ハッチバック)などを採用し、スペシャルティカーならではのファッショナブル性とスポーティさを強調。インテリアでは居住スペースを広げたうえで、ドライブコンピュータやコンポーネントオーディオシステム、トータルイルミネーションシステムといった先進機構を積極的に取り入れた。
搭載エンジンについては新開発のZ20E型1952cc直4OHC(120ps/17.0kg・m)を筆頭に、Z18E型1770cc直4OHC(115ps/15.5kg・m)、Z18型1770cc直4OHC(105ps/15.0kg・m)の計3ユニットを用意する。足回りはフロントが改良版のマクファーソンストラット式で、リアがスタビライザーを組み込んだ4リンク式。また、操舵系には西ドイツ(現ドイツ)のZF社と共同で手がけたエンジン回転数感応式パワーステアリングを設定した。
斬新なスタイルと先進的な装備を満載してデビューしたS110型系シルビア(とガゼール)は、たちまちメインユーザーである若者層の大注目を集め、セリカを上回るほどの人気モデルに昇華する。とくに、シルビア/ガゼールにターボモデル(Z18ET型。1981年5月デビュー)や4バルブDOHC仕様(FJ20E型。1982年4月デビュー)が追加されると、スペシャルティカー市場での人気は盤石なものとなった。
S110型系シルビア/ガゼールの人気に苦戦を強いられたトヨタ自工は、1981年7月になってセリカの全面改良を実施し、3代目となるA60型系に移行する。また、1982年11月になると本田技研からAB型系の2代目プレリュードがリリースされ、日本のスペシャルティカー市場は稀に見る活況を呈することとなったのである。