ラウム 【1997,1998,1999,2000,20012002,2003】

広さだけでなく、使い勝手にこだわった意欲作



“部屋”というネーミングの小型車の登場

 トヨタの良心が結実した新発想コンパクト、それがラウムだ。1997年5月に登場したラウムの個性は、使い勝手に優れた室内空間にあった。それまでも広い室内にこだわったコンパクトカーは存在した。しかしラウムは室内の広さだけでなく、乗降のしやすさや、室内アレンジ、安全性に気を配った新世代モデルだった。広いだけでなく使いやすいクルマに仕上げていた点が新しかった。

 ユーザーの多彩なライフシーンに寄り添い、信頼の置けるパートナーとしてしっかり働くクルマ、ラウムはある意味コンパクトカーの理想形と言えた。ちなみにラウム(RAUM)というネーミングは、英語の部屋(ROOM)に相当するドイツ語で、空間をイメージして命名したものである。

リアスライドドアが生んだ新たな乗降性

 ラウムのスリーサイズは全長4025mm×全幅1685mm×全高1535mmと小柄な5ナンバーサイズにまとめていた。スタイリングはシンプル&クリーンな印象で、とくに印象深いものではない。だが都会でも郊外でもさりげなく馴染むコットンシャツのようなプレーンさを持っていた。ラウムの特徴はリアドアにスライド式ドアを採用したことにあった。1997年はファミリーカーの主流がしだいにミニバンに移行していた時代だった。それだけにスライドドア自体は珍しいものではなかった。しかしコンパクトカーとの組み合わせは斬新だった。

 スライドドアの利点は、狭い場所でも乗り降りが楽に行えることだが、ラウムはその利点をフルに生かしていた。狭い駐車場などでも楽々と後席に乗り降りできたのはもちろん、前席への乗降も自在なものとしていたのだ。フロントシートにはフロントドアから、リアシートにはリアドアから乗降するものという、既存の常識をラウムはあっさりと破ったのである。ラウムは室内フロアをフラットに仕上げ、足踏み式パーキングブレーキや、コラムシフトを採用することで前席中央にもウォークスルー可能な空間を確保していた。いわば室内を自由に移動できるクルマだったのだ。しかも1245mmとたっぷりとした室内高を確保していたから、大人でも頭を屈めれば移動は楽々だった。

しっかりとした足回りと先進の安全性も魅力

 シートアレンジは多彩だった。後席は分割可倒機構とともにリクライニング機構を備えており、シートバックを倒せばミニワゴン、前席と繋げリクライニングさせると手軽なリフレッシュスペースに変身した。シート自体の作りも入念で後席にはセンターアームレストを装備。クッションも通常より分厚くすることで快適性もハイレベルに仕上げていた。

 ラウムのメカニカルコンポーネンツは、ターセル&コルサ&カローラIIから流用していた。搭載するエンジンは排気量1496ccの5E-FE型・直列4気筒DOHC(94ps/5400rpm)で、トランスミッションは4速オートマチック。サスペンションは前がストラット式、リアにはトーションビーム式を採用する。スペック面では特筆するものはなかったが、そのチューニングは絶妙で、とくに足回りのしっかりとした味付けは秀逸だった。走りの良さは開発主査がスープラも担当したトヨタ屈指のエンジニアだったことと無縁ではなかった。

 安全面での配慮も万全で運転席&助手席エアバッグ、ABS、ブレーキアシスト、プリテンショナー機構付きシートベルト、GOA衝撃吸収安全ボディをいち早く導入していた。当初、FFのみで登場したラウムは1997年8月には4WD仕様を加えラインアップを充実。良質な実用車を求めるユーザーから共感を得ることに成功する。輝かしい販売成績こそ残していないが、トヨタを代表するエポックカーの1台である。