サニー 【1981,1982,1983,1984,1985】

FFに進化。すべてを一新した5代目



意欲的な設計で時代をリードした5代目

 1981年10月、サニーがFF機構を採用する5代目へとモデルチェンジした。サニーは日産の主力大衆車であり、カローラとともに日本のモータリーゼーションを牽引してきた存在である。それだけにサニーのモデルチェンジは大きな意味を持っていた。サニーの完成度が日本車のひとつの基準でもあったからである。

 5代目は従来やや保守的だった姿勢を一新、小型車の世界的な潮流だった合理的なFF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式に進化した。FF方式は、FR方式と比較してドライブシャフトなどが省略でき、エンジンをはじめとするメカニズム関係をシンプルにまとめられるのがメリット。同じボディサイズであれば室内空間を広くでき、車重も軽く仕上がるため燃費面でも有利だった。サニーはFFの利点をフルに生かしてすべてを新設計していた。エンジンとトランスアクスルをフロントに横置きにし、ワイドトレッド&ロングホイールベース化することで室内長を従来よりも165mm拡大(セダン比)。さらに設計の合理化で車重を77kgも軽量に仕上げクラストップ級の燃費性能を実現した。

 新開発ゼッパ型等速ジョイントにより小型乗用車として日本最小の4.5mという最小回転半径を実現していたのも特徴だった。5代目はサニー伝統の“経済的で小回りがきき運転しやすい”という美点をさらに磨き込み、ひとクラス上の居住性を実現する。ちなみにライバルのカローラがFFに移行したのは1983年5月(セダン系のみFFに移行。クーペはFRを踏襲)だった。FFにいち早く変身したサニーの先進ぶりは光った。

全45車種のワイドなバリエーション!

 サニーのボディラインアップは4ドアセダンをメインに、スタイリッシュなハッチバック形状のクーペと、カリフォルニアを名乗る5ドアワゴンの3種。セダン25車種、クーペ9車種、カリフォルニア11車種の合計45車種のワイドなバリエーション構成で様々なユーザーニーズに対応した。

 パワーユニットはすべてFF専用に開発され半球形燃焼室、ハイスワール吸気ポートを持つ燃焼効率に優れた新世代のE型である。排気量1270ccのE13型(75ps/10.7kg・m)、1487ccのE15型(85ps/12.3kg・m)、そして電子制御インジェクションを組み合わせた1487ccのE15E型(95ps/12.5kg・m)の3種が設定され、主力はE15型。ちなみにSGX-Eグレードに搭載したE15E型は渦巻き型インテークマニホールド、デュアルエグゾースト、専用カムシャフトを組み込み、トランスミッションのギア比もクロスレシオ化したスポーツユニットに仕上げられていた。

徹底した静粛設計が5代目の自慢

 スタイリングはシャープなシルエットを基調に傾斜の強いフードとフロントガラス、薄く水平なルーフで構成した空力に優れたプロポーションで、Cd値はセダンで0.40、クーペは0.39をマークした。FFのメリットが実感できたのは広い室内である。セダンの室内寸法は1835×1365×1155mm(長×幅×高)とクラストップ級。従来モデルと比較してそれぞれ165×20×35mmも拡大されていた。しかも窓面積の20%拡大で開放感が増し、フロア面もフラットだった。大人5名でのロングドライブも苦にならないスペースが確保されていたのだ。室内の広さはライバルのカローラを確実に凌いでいた。

 FFの合理性を追求した5代目は、「静かなサニー」を目指していた。エンジン自体に高剛性台形エンジンブロックなど静粛性実現の技術を積極投入するとともに、中空ドライブシャフトの採用によりパワーの伝達経路からのこもり騒音を低減。ダッシュフロアとリアフロアには遮音材を前後で挟み込んだ日産が特許を持つサンドイッチ鋼板を敷き詰めていた。100lm/hクルージングの騒音レベルは68dB(5MT車)とひとクラス上と同等。見た目はシンプルだったがサニーの作りは実は上質だったのだ。ちなみにシートは高弾性・高密度ウレタンを贅沢に使用した大型サイズで、デザインは人気ドイツ車を参考にリファインしていた。

優れた走り、しかし質感に不満が集中

 走りも軽量ボディと軽快に回るエンジン、そして従来車より65〜80mmもワイドなトレッドの相乗効果で安定していた。燃費もよく小型大衆車として完成度は非常に高かった。しかしサニーはややFFの合理性を追求しすぎたきらいがあった。広い室内実現のためか内装のデザインはシンプルで、質感もややチープだったのだ。スタイリングは先進的ではあったが、重厚さや高級感はあまり感じられなかった。

 機能でクルマを選ぶユーザーには5代目のFFサニーは絶大な支持を集める。しかし機能よりも立派さを求める層には不評だった。クルマは国際水準を抜く仕上がりだったが、あまりに合理的な設計が一部のユーザーには評価さえれなかったのである。