ボンゴ 【1999〜2020】

安全性と機能を高めた第4世代

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キャブオーバー型バンの全面改良

 米国フォードの出資比率を引き上げてバブル景気崩壊からの経営再建を図っていた1990年代後半のマツダは、同社の中核的な商用車であるボンゴの全面改良を計画する。
 安全性能や環境性能への社会的要求が高まり、セミキャブオーバー型が増えてくるなか、開発陣は伝統のキャブオーバースタイルにこだわった。衝突安全対応においては不利な車両レイアウト条件だが、ボディを大きくしてしまっては小回りなどの機能性が損なわれる。また、車重の増加によって燃費の悪化も誘発する−−。使い勝手や経済性がキーポイントとなる商用車にとって、セミキャブオーバー化はデメリットが大きいと判断したのだ。また、開発予算が絞られるなかでは、メカニズムすべてを全面刷新するのは難しかった。最終的に開発陣は、既存のプラットフォームを大幅に改良し、安全性を高めたキャブオーバースタイルの新しいボンゴを開発する旨を決定した。

“これからの軽量バンの、新基準”を謳った4代目

 1999年6月になると、約16年ぶりにフルモデルチェンジした第4世代のボンゴが市場デビューを果たす。バンの車種展開は標準ルーフ/ハイルーフの2ボディに、低床(2WD750kg積、4WD900kg積)/ワイドロー(1000kg積)の2種類の荷室、4枚(前ドア2枚+後スライドドア1枚+バックドア1枚)/5枚(後スライドドア2枚)の2タイプのドア、3名/3(6)名/2(5)名/ルートバンの4仕様の乗車定員、1.8Lガソリンと2.2Lディーゼルの2機種のエンジンで構成。グレードはビジネスユースに徹したCD、機能重視のDX、快適志向のGL、RVとしての魅力も備えるGLスーパーを基本にラインアップした。

 基本骨格については、従来型をベースに入念な改良を施したSKプラットフォームを採用する。キーポイントは車両前部の設計変更で、前端には衝突安全性を高める衝撃吸収フレームを組み込んだ。これに合わせて、シャシーおよびボディ剛性も強化。側面衝突を考慮してフロントドアとスライドドアにはサイドインパクトバーを内蔵する。ほかにも、運転席&助手席SRSエアバッグやロードリミッター付ELRシートベルト、4W-ABSなどを採用して安全性能を向上させた。

懸架機構はフロントにダブルウィッシュボーン/トーションバー、リアに半楕円リーフをセットする。また、2WDのフロントにはロアアーム構造に新設計のIアーム+コンプレッションロッドを、2WD・低床のリアにはフリクションを低減するヘルパーラバーを組み込んだ。ブレーキ機構に関しては、制動性能を高めた前ベンチレーテッドディスク/後リーディングトレーリングを装備。後輪にはパーキング時に威力を発揮するデュオサーボを採用し、さらに積載量に応じて後輪の制動力を調整するLSPVも新設定した。

ガソリンとディーゼルの2本立て

 前席下に搭載するエンジンには、電子制御により高効率を追求したF8-E型1789cc直列4気筒OHCガソリン(90ps/13.8kg・m)とR2型2184cc直列4気筒OHC渦流室式ディーゼル(79ps/14.1kg・m)を採用する。F8-Eユニットには新たにEGIをセット。R2ユニットには新開発の電子制御式燃料噴射ポンプを装着した。組み合わせるトランスミッションは、5速MTのほかに新開発の電子制御4速ATを設定。駆動機構は2WD(後輪駆動)とリモートフリーホイールシステム付きのパートタイム4WD(2H/4H/4L)を採用した。

 エクステリアついては、延長したノーズと異形ハロゲンヘッドランプで構成するマスクと機能美あふれるサイドおよびリアセクションによって上品なキャブオーバースタイルを構築する。また、GLスーパーにはカリフォルニアミラーやサイドストライプデカール、リアステップバンパー、ツートンボディカラーなどを採用してRV感を高めた。インテリアは、快適性や機能性を引き上げたことが訴求点。豊富な収納スペースを備えたインパネや視認性に優れたメーター、座り心地を向上させたシート、新発想のコンパクトフォールディングリアシートなどを採用したほか、クラストップレベルの広くてフラットな荷室空間を実現していた。

時代の要請に合わせた改良を行ってロングセラーモデルに昇華

 希少なキャブオーバースタイルの商用車として根強い支持を集めた4代目ボンゴは、デビュー後も時代の要請に合わせた改良を実施する。2003年12月には、ディーゼルエンジンをRF-CDT型1998cc直列4気筒OHCコモンレール式直噴ディーゼルターボ(86ps/18.2kg・m)に換装。また、F8-Eガソリンの出力向上(95ps)やシート&ドアトリム地の変更なども実施した。2005年11月には灯火器規制に対応して、ヘッドライト光軸調整機能の追加や運転席および助手席ドアへのサイドターンランプの設定などを行う。2007年8月には新長期排出ガス規制に対応する目的で、ディーゼルエンジンのDPF容量の拡大および圧縮比の最適化やガソリンエンジンの触媒成分の改善などを敢行。2010年8月には、ガソリンエンジンのL8型1798cc直列4気筒DOHC16V(102ps/15.0kg・m)への刷新や燃費の改善、装備の充実化、ディーゼルエンジン仕様の廃止などを実施した。

 2012年3月になると経済紙などでマツダが商用車の自社開発・生産から撤退するという報道が流れるものの、一方で開発現場では現行ボンゴの改良を着実に進め、同年6月にはヘッドランプの配光変更やスライドドアの強度アップなどを行う。そしてボンゴ発売の50周年となる2016年の2月には、平成17年排出ガス基準75%低減レベルや平成27年度燃費基準の達成、リアタイヤのシングル統一化および最大積載量のアップ、ATの5速化(5EC-AT)、内外装デザインの一部変更などを実施したのである。