名勝負/66富士24時間レース 【1966】

耐久レースの王者2000GT、走るほどに速さが際立った!

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ル・マンを再現した富士24時間レースに挑戦

 トヨタ2000GTは、レースに勝てるパフォーマンスを持つことを目標に開発され、最終的にはル・マン24時間レースでのクラス優勝を目指していたという。結果的にル・マン参戦は実現しなかったが、日本最長レースでの勝利という勲章を獲得する。1967年4月8〜9日に開催された「富士24時間レース」での完全優勝だ。

 富士24時間レースは、ル・マン24時間レースをそっくりそのまま再現することを目的に開催された日本初の24時間レース。8日の午前中に車検とミーティングが開かれ、午後にはセッションタイムと称した練習走行が許された。予選はなく、ル・マン式スタート(コース上に斜めにマシンを並べ、スタートの合図と同時にドライバーがマシンに駆け寄る)のポジションはカーナンバー順というレギュレーションだった。
 24時間レースにトヨタは唯一のワークスチームとして出場。2000GTは細谷/大坪選手組と、津々見/鮒子田選手組の2台が参戦。他に3台のスポーツ800が高橋/蟹江選手組、田村/川合選手組、北原/大谷選手組でエントリーしていた。

圧倒的な速さ。2台の2000GTがレースを主導

 午後4時スタート。長い24時間レースの幕が切って落とされる。2000GTのカーナンバーは1と2。カーナンバー1の細谷/大坪が、津々見/鮒子田を従えて第一コーナーに向かった。出場33台のテールエンドが富士のヘアピンを回っている頃、2000GTは早くもグランドスタンド前に帰ってきていた。
 初めて体験する24時間レースだけに、どのマシンもマイペースを保ち余裕ある走行をしていたが、2台の2000GTの速さは別格。2分20秒から2分24秒のタイムで周回し、パフォーマンスの違いを明確にする。

 日もとっぷりと暮れた頃、レースは一応の落ち着きを見せてきた。グランドスタンド前を除きコース上には全く照明はない。どのマシンもヘッドランプに加えラリー車のようにドライビングライトを点灯、その鋭い光源がコースをなめるように照らし出す。
 午後6時40分現在の順位は、1位が65ラップを周回した細谷/大坪の2000GT、2位は59ラップの津々見/鮒子田の2000GT。3位は川端/渡部選手組のベレットGT、4位には山梨/広瀬選手組のホンダS600が続く。
 午後7時に最初のリタイアが出る。そのマシンはチーム・トヨタの1台。北原/大岩のスポーツ800だった。

深夜、2000GT同士でリーダーが交代

 8日の夜から天候は雨に変わり、富士名物の霧が発生。走行条件は最悪となった。この中でトップを快走していたカーナンバー1の2000GTに燃料系のトラブルが発生。修理に手間取る間にカーナンバー2の2000GTがレースリーダーとなった。
 9日午前0時現在の順位は1位が津々見/鮒子田の2000GT(207ラップ)、2位は細谷/大坪の2000GT(203ラップ)、3位が田村/川合のスポーツ800(181ラップ)。トップ3をチーム・トヨタが独占する。濃霧のためマシンのペースは上がらず、2000GTのラップタイムはレース当初からほぼ10秒増しになった。
 翌朝、9日午前9時現在の順位はトップが津々見/鮒子田の2000GT(397ラップ)、2位は細谷/大坪の2000GT(391ラップ)、3位は田村/川合のスポーツ800。
 9日昼頃、それまで快調に3位を走行していたカーナンバー20のスポーツ800がエンジントラブルでピットイン。約40分を費やしてピストン交換を行ったが、3位の座を明け渡すことはなかった。

編隊走行で感動のフィニッシュ! 24時間で3224km走破

 長かった24時間レースも、あと30分を残すだけとなった頃、チーム・トヨタはコース上で単独走行を続けていた2台の2000GTと2台のスポーツ800をまとめ、4台でフォーメーションを組むパレード走行を始めた。同年のデイトナ24時間レースでフェラーリ・チームが演じた編隊でのゴールを再現しようとしたのである。しかしフィニッシュまで1周を残すところで田村/川合のスポーツ800にトラブルが発生。チーム・トヨタは3台が横1列に並び午後4時にチェッカーフラッグを受けた。
 結局、優勝を飾ったのはカーナンバー1、細谷/大坪の2000GT(539ラップ)。2位はカーナンバー2、津々見/鮒子田の2000GT(531ラップ)。3位には最後の最後で遅れたもののカーナンバー6、田村/川合のスポーツ800(469ラップ)が食い込んだ。
 2000GTは、世界速度記録チャレンジの経験を生かし、抜群の安定感で24時間レースを支配した。2台の間で順位の変動はあったものの、スタートからフィニッシュまで1/2位を独占。優勝マシンの平均時速は134.7km/h、走行距離は3224kmに達した。